ダメ男ムービー『レッド・ロケット』は思わぬ感動がある意外性が面白い!
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映画で共感を誘う主人公には、どんなパターンが多いのか? 誰かのために行動したり、夢を追いかけたり、自分も“そうなりたい”キャラクターが挙げられるが、一方でダメさ加減でついつい感情移入してしまうケースもある。この『レッド・ロケット』は後者のパターンとして予想外にハマってしまう人が多そうだ。
主人公のマイキーは元ポルノスター。なんと2000本もの映画に出演し、ポルノ界の男優賞に5回ノミネートされたと豪語するも、じつはこの17年間、仕事なし。すっかり落ちぶれて、LAから故郷のテキサスの町に戻ってくる。行き場もなく、手持ちの金も底をついているので、とりあえず転がり込んだのは、正式には離婚していないが疎遠だった妻の家。妻と義母に迷惑がられながらも、マイキーは再び人生の成功を模索するのだが……。
冷静に考えれば、このマイキーという男、過去の栄光にすがる残念なキャラで、もし実生活で近くにいたら完全にウザい。しかしとにかく口がうまく、お調子者。どこか憎めないので妻や義母、近所の人たちも受け入れていく。ドーナツ屋で働く18歳の少女も、マイキーの強引に口説き落とされたりと、彼が“懐に入ってくる”プロセスがじつにナチュラルなのだ。
マイキーを演じたのは、実際にポルノ映画に出演経験があり、スキャンダルにも巻き込まれたサイモン・レックス。元ポルノスターとしての振る舞いや、細かいネタ(『ワイルド・スピード』に関するセリフが笑える)など、とにかくリアリティがある。
そして映画自体、マイキーの性格を表すようにテンポよく進み、どんどん次のシーンに移っていくので、この手の作品にしてはノリの良さも快感! 舞台となるテキサスの町も、やたらとカラフルな家並みが強調されていたりして、不思議と明るい気分にさせられる。もちろん口八丁手八丁の主人公には、シビアな現実も突きつけられるが、その絡め方も絶妙。典型的ダメ男ムービーから、思わぬ感動をもらえるに違いない。
『レッド・ロケット』4月21日公開
製作・監督・脚本・編集/ショーン・ベイカー 出演/サイモン・レックス、ブリー・エルロッド、スザンナ・サン 配給/トランスフォーマー
2021年/アメリカ/上映時間130分
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