センセーショナルな一作として注目される映画がある。作品自体が、激しいまでの興奮を誘う作りで観る人の心を掴みつつ、さまざまな反響も広がっているこの『アテナ』は、まさにそんなケースと言えそうだ。
フランスの郊外にある“アテナ”という団地で、若者たちを中心とした大暴動が起こる。その団地に暮らす一人の少年が殺され、加害者が警察官だと思われたからだ。若者たちと、それを鎮圧しようとする警察隊との激しい攻防が展開。被害者は四兄弟の末っ子で、三男のカリムは暴動のリーダー役として仲間を指揮。
次男のアブデルはアテナでも尊敬される軍人、そして長男で異母兄弟のモクタールは、麻薬の密売人……と、3人それぞれの闘いはショッキングな運命になだれ込んでいく。ストーリーはこのように、兄弟の確執が軸となってギリシャ悲劇も思わせるが、基本は怒涛のスペクタクルアクション映画だ。
冒頭からタイトルが画面に出るまでの11分間。暴動と警官隊との闘いが驚異のノーカットで展開。その11分間に、火炎瓶による大爆発、カーチェイスやバイクの曲乗りなどが盛り込まれ、ノンストップ感で圧倒する。あとは一気の展開にのみこまれる印象だ。ヴェネチア国際映画祭ではコンペティションで上映され、強烈なインパクトを残した。
アメリカのBLM(ブラック・ライブズ・マター)にも重なったりする一方で、舞台となったフランス本国では団地での若者たちの実情が極端すぎると波紋を呼んだりもしている。キャストもそれぞれ鬼気迫る熱演。次男役は、どこかで見覚えがあると思ったら、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で左目が義眼の傭兵、プリモを演じていたダリ・ベンサーラで、今後の活躍が期待される。
『アテナ』 ネットフリックスで配信中
製作・監督・脚本/ロマン・ガブラス 出演/ダリ・ベンサーラ、サミ・スリマン、アントニー・バジョン、オウアシニ・エンバレク
2022年/フランス/視聴時間99分
Netflix映画「アテナ」9月23日(金)より独占配信