相変わらず勢いが衰えない韓国映画。その勢いを“まんま”凝縮したような新作が、いま話題を集めている。ノンストップの興奮というのはアクション映画でよくある売り文句だが、この『カーター』にこそふさわしい!
自分の名前も含め、記憶を失って目覚めた男が、耳の奥に埋め込まれた装置を通して指示を受け、信じがたいミッションに挑む物語。“カーター”という名で数々の指令を受けるこの男、もともと超人的な身体能力を備えているらしく、襲いかかってくる無数の敵を次々と本能で倒し、瞬発的な判断で危機を乗り越えていく。記憶をなくした最強の男という点で、あのジェイソン・ボーンも連想させるが、カーターの能力は、はっきり言ってボーン以上。全世界を震撼させるウイルスという、まさに今っぽい背景が用意され、その治療薬とされる少女を確保するカーターの任務は、韓国と北朝鮮の関係も深く絡んで二転三転の運命へとなだれ込む。
この『カーター』、最大のポイントは、全編が“ワンショット風”というスタイル。“風(ふう)”と書いたのは、ワンショットのようにうまく映像をつないでいるから。しかも、そのつなぎが超スムーズ。冒頭の浴場での大乱闘から一気にテンションを上げ、その後もカーチェイス、上空でのバトルなど、いったいどうやって撮影したのかわからないアクションが連発。ワンショット風の勢いに乗って、“空前の”とか“常識を超えた”なんていう表現も甘く感じるほどの怒涛感が途切れない。それが2時間ちょっと続くのだ。しかもワンショットが前提なので、劇中で進んでいく時間も同じ。約2時間で、これだけのことが起こっていたことに驚くしかない! 配信作品は一時停止や早送りで観る人もいると思うが、この『カーター』はそんな機能すら忘れさせ、一気に、その時間を体感しながら観てしまうのではないか?
『カーター』ネットフリックスで配信中
監督・脚本/チョン・ピョンギル 出演/チュウォン、イ・ソンジェ、チョン・ソリ
2022年/韓国/視聴時間134分
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