さまざまなヒーローがひしめき合うマーベル映画(MCU)の中でも、最も人気の高いキャラクターの一人、それがソーだ。その実体は、人間ではなく“神”。マッチョな肉体で豪快に闘う姿は、スーパーヒーローの理想型。ソーの名を冠した作品も4本目だが、“マイティ・ソー”がタイトルだった過去3作と違って、今回“マイティ”が邦題から外された。
直近の作品でソーが登場したのが『アベンジャーズ/エンドゲーム』。多くの犠牲も払い、仲間も失ったソーは、ガーディアンズと宇宙へ旅立つも、戦闘意欲はすっかり失っていた。このあたりの流れをオープニングでテンポよく見せてくれるので、予習も不要。すっかりユルんだ肉体も披露するなど笑えるシーンも盛り込まれ、一気にソーの世界に没入してしまう。ソーといえば“相棒”と呼んでもいいのが、ハンマーの武器、ムジョルニア。今回、そのムジョルニアを手にしたのが、ソーの元恋人ジェーンで、彼女が“マイティ・ソー”として覚醒する。ソー=マイティ・ソーではない複雑な関係が誕生し、ソーとジェーンが全宇宙の神々を滅ぼすという強敵に立ち向かう物語。MCUの他のキャラクターもそれほど絡まず、シンプルな展開が観やすい。
監督は前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』に続いて、タイカ・ワイティティ。MCUの中でも“楽しさ”を追求する彼の特徴が表れ、全体にエンタメ色が濃厚。ソーの故郷である神の国が“新アスガルド”という名でテーマパークになっており、そこでのアトラクションに意外なスターが登場したりと、遊び心は満点だ。ラッセル・クロウが演じる全知全能の神ゼウスも、かなり振り切れている。一方で今回の悪役となるゴアは、外見からしてあまりに不気味。演じるのがクリスチャン・ベールとあって、全身から醸し出す恐ろしさは予想を軽々と超える。1970〜80年代のロックとともに盛り上がるスペクタクルバトル、ソーとジェーンの間で復活する愛のドラマチックな運命と、サービス精神満点の世界を心ゆくまで堪能してほしい。
『ソー:ラブ&サンダー』7月8日公開
原案・監督・脚本/タイカ・ワイティティ 出演/クリス・ヘムズワース、ナタリー・ポートマン、クリスチャン・ベール、テッサ・トンプソン、ラッセル・クロウ 配給/ディズニー
2022年/アメリカ/上映時間119分
(C)Marvel Studios 2022