【試乗】〈GR〉雪上ドライブでわかった、“GR-FOUR”の楽しさ!
滑りやすい路面だからこそ、クルマの性能やキャラクターが浮き彫りになる。「う~ん、やっぱりそうなんだなぁ」と思ったのが、以前苗場で行われた雪上試乗会でのこと。乗り込んだクルマは進化型GRヤリス2台(6速MTと新開発8速ATのGAZOO Racing Direct Automatic Transmission、以下GR-DAT)とGRカローラの計3台。すべて〈GR〉のスポーツ4WDシステム“GR-FOUR”を搭載しているうえに、運転がとっても楽しいと評判の精鋭ばかり。思わぬ演出もあった会場で繰り広げられた、スリリングな試乗会をレポート!
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■“GR-FOUR”の前に“GT-FOUR”
さっそく試乗レポートへと行きたいところだが、まずはこちらを見てほしい。
「おお~!」と唸った人はきっと1980年代のバブル&スキーブームを経験した50代以上。そう、往年の名車〈トヨタ〉セリカGT-FOURが鎮座しているではないか。雪道に強いこの4WD車が大活躍した映画『私をスキーに連れてって』(‘87公開)は今さら説明不要。こちらも懐かしい思い出が蘇り、一瞬心が和んだわけだが、実は写真右の1台にはさらなる仕掛けが……。
ルーフキャリアに収まっていたスキー板をチラッと見て腰が抜けた。なんとそれは、劇中に登場した架空のブランド“SALLOT(サロット)”だったのだ。「いったいどこから?」と感心しながら車体を見ると、ステッカーも劇中車仕様に。さらにルームミラーに目をやると、ストップウォッチもちゃ~んとぶら下がっている。試乗会当日は「凍ってるね」といえない陽気だったが、あまりの凝りように「わかってるね」と大笑い。もちろん会場には、映画で使われたユーミンの曲が流れていたことは言うまでもない。
さて、そんな歓待(?)を受けての試乗会だが、今回は雪上で4WDシステム“GR-FOUR”を体験するのが目的。さらに試乗車に、以前走りのよさに舌を巻いたGRヤリスRZ“High performance”の進化型が用意されているとあれば、否が応でも気持ちがたかぶってくる。
■ラリードライバーになった気分!
さて、待ちに待った雪上試乗だが、その前にスタッフの方が4WDシステム“GR-FOUR”について説明をしてくれた。簡単にいうと、自分の好みや状況に合わせて駆動力配分の変更ができるのだが、それが“ノーマル”“グラベル”“トラック”といった3つの4WDモード。具体的には以下のとおり。
【ノーマルモード】 前輪60:後輪:40
クルマが静止状態にある荷重配分に合わせた、前輪寄りの前後駆動力配分。これにより、通常走行領域における旋回性能と安定性を高いバランスで両立。安心感のある走りが体感できる。
【グラベルモード】 前輪53:後輪47
加速時の荷重移動を考慮した前後駆動力配分。トラクション性能を最大限に発揮することが狙いで、タイヤ摩擦円の限界領域でも4輪のトラクションを読みやすい。※GRカローラの場合はスポーツモード。前輪30:後輪70となる。
【トラックモード】 前輪60~30:後輪40~70
ドライバーの操作と車両状況に応じ、駆動力をフロント寄りからリヤ寄りまで連続的に可変させるモード。操舵に応答するフロントタイヤと、アクセル操作に応答するリヤタイヤのトラクションによるコントロール性を重視している。※トラックモードの可変制御はGRヤリス2024年モデルに搭載。現行GRカローラのトラックモードは前輪50:後輪50の駆動配分(固定)となる。
なるほど、前後の駆動力配分が変わると走りの特性も違ってくるのは当然のこと。で、それが雪道で、どんなふうに走りに現れるのか? さっそくGRヤリスのMTモデルに乗り込んで、まずはノーマルモードでコースインし、アクセルを踏み込んでみた。踏むとすごいパワーが沸き上がるのはさすがGRヤリスRZ“High performance”(304PS/400N・m)。とにかく前へと突き進む中での第一印象は「安定感がバツグンにいい」。鼻先をコーナーに向けるとそのまま前輪が引っ張ってくれるから、安全に雪山を走行したいとき、この安定感は頼りになる。とはいえラリードライバー気分でMTシフトの虜になったこともあり、ノーマルモードのままあっという間に規定の3周が終了。「しまった~、ほかのモードを試せなかった」と落胆しつつも、次に控えていたGRヤリスのGR-DATモデルでグラベルとトラックモードを試してみた。
GR-DATとは、簡単にいうと“ドライバーの意思を汲み取るギア選択”ができる、頭のいいスポーツ走行用オートマティックミッションのこと。進化型GRヤリスに新投入されていて、変速スピードも世界トップスクラスというから恐れ入る。とはいえ、基本ATってことで一般ドライバーでも恐れるに足りず。当然シフトチェンジを気にする必要もないから、ステリング操作と四輪の動きに“自分センサー”を集中させることができる。
さっそくグラベルモードで走ってみると、ノーマルとは走りが明らかに違うことに気づく。後輪のトルクが増えたぶん雪上運転がぐっとスリリングに。ラリー気分がガゼン盛り上がってくる。こうなると、願わくは鼻先をコーナー内側に向けて華麗にテールスライドといきたいところだが、自分の腕前が足りないために見た目は普通に曲がっているだけに⁉ とはいえ楽しさはMAX。ちょっとのテールスライドにも感動が押し寄せる。
お次はトラックモードにチェンジ。こちらはドライバーの動きや状況に応じてクルマが賢く駆動力を配分してくれるおかげで、「運転が上手になった!」と勘違いするほどきれいに曲がってくれる。もちろんもっと攻めたいときに頼れるのがトラックモード。出たいときに即座にグッと、しかもバランスよく押してくれるといった芸当もお手のものだ。
最後はGRカローラRZに試乗。こちらはGRヤリスに比べると運転しやすさが光った。GRヤリスと比べるとホイールベースが80mm長く、幅広。車重も170~190kg重いため、GRヤリスほどの軽快さはない(というかGRヤリスが軽快すぎ?)。とはいえ、GRカローラのポテンシャルの高さは相当なものと実感。ヤリスとGRヤリスの違い同様、カローラとは全く違う次元の走りに驚いたからだ。それもそのはず、GRヤリスと同じエンジンが絞り出すパワーは304PS/370N・m。これをトラックモード(前輪50:後輪50)で味わうと、GRヤリスとはまた違った特性でパワフルかつ楽しい走りが味わえる。スリリングだけど大人というか、ある程度の安心感を持って踏める、といった感じ。雪上ではどんなクルマも不安定になりがちだが、そんなときGRカローラが持つ安定感はドライブを気持ちいい時間にしてくれる気がした。
■楽しい運転が誰にでも楽しめる!
雪道ドライブでは、とにかく“滑らないように”と誰でも思うもの。カーブでアウトに膨らまないか、テールが流れて制御不能にならないかなど、一般ドライバーとなればいろいろと心配ごとがあるはず。今回の雪上試乗会はクローズされたコースで行われたわけだが、安全な状況でアクセルを踏み込む体験をすると、雪上ドライブがかなり楽しいものだってことがわかった。もちろんGR-FOURという先進の4WDシステムが不安を解消してくれたことも大きいだろう。一方、雪道を積極的に楽しみたいとなると、WRC譲りのパフォーマンスを提供してくれるGR-FOURほど頼もしいシステムはない。今回それを搭載したGRヤリスとGRカローラに乗ってみたが、楽しさと同時に「もっと運転が上手くなりたい」と思う気持ちまであふれてきた。誰もが安全に楽しめるとなれば、きっと多くのクルマ好きが雪上ドライブ体験をしたくなるはず。できることなら、こんな楽しい時間をもっと多くの人が体験できれば、冬の楽しみがもっと増えること間違いなし!?
■気になるスペックは?
〈トヨタ〉GRヤリスRZ“High performance”
●全長×全幅×全高:3995×1805×1455㎜
●車両重量:1280㎏(GR-DATモデルは1300㎏)
●ホイールベース:2560㎜
●エンジン:1.6ℓ直列3気筒インタークーラーターボ(G16E-GTS)
●最高出力:224kW(304PS)/6500rpm
●最大トルク:400N・m(40.8㎏f・m)/3250~4600rpm
●トランスミッション:iMT(6速MT)、GR-DAT(8速AT)
●駆動方式:スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”電子制御多板クラッチ式4WD
●税込み価格:498万円(6速MT)、533万円(8速AT)
〈トヨタ〉GRカローラRZ
★DATA●全長×全幅×全高:4410×1850×1480㎜
●車両重量:1470㎏
●ホイールベース:2640㎜
●エンジン:1.6ℓ直列3気筒インタークーラーターボ(G16E-GTS)
●最高出力:224kW(304PS)/6500rpm
●最大トルク:370N・m(37.7㎏f・m)/3000~5550rpm
●トランスミッション:iMT(6速MT)
●駆動方式:スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”電子制御多板クラッチ式4WD
●税込み価格:525万円
※2023年9月の時点で抽選申し込みが終了しており、現在はお買い求めできませんが、「今後も継続的なモータースポーツ参戦を通して、GRカローラを進化させる」とのことなので、進化した次期型に期待!
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