箱根随一の老舗旅館〈強羅花壇〉にオープンした〈鮨 かだん〉で、一級の江戸前鮨を味わう!
1952年の創業以来、国内外の著名人や政財界人をはじめ、多くのゲストに愛されてきた〈強羅花壇〉。12年連続でミシュランガイド3つ星を獲得した銀座〈鮨 よしたけ〉の吉武正博さんが監修した〈鮨 かだん〉が、2023年11月4日に満を持して〈強羅花壇〉にオープンした。大将を務めるのは高橋誠司さん。“江戸前の仕事をする”光り物が得意であり、国内有名店で研鑽を積み、〈鮨 よしたけ〉でも修業した。
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- アレが食べたいからこの店へ! vol.51〈鮨 かだん〉
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白木のカウンターに、わずか8席という贅沢さ
〈鮨 かだん〉は、箱根の四季の移り変わりを時代とともにつないできた旧閑院宮別邸の2階にあり、とても隠れ家的なロケーション。白木の美しいL字形カウンターでは、握り鮨の世界を発信していきたいという吉武さんの想いが詰まった“おまかせコース”(4万2000円)が体験できる。わずか8席というエクスクルーシブな空間の中で、全部で17品のつまみと握りを堪能できるのだ。
魚は昆布で包まず、昆布水に漬けるので、繊細で上品な佳味。煮切り醤油は、赤身、白身、青魚と別に用意されており、それぞれの魚のポテンシャルを存分に引き出している。握りはスタイリッシュなシェイプで、赤シャリは心が洗われるような、まろやかな味わい。
赤身
そんな高橋さんが、特にこだわっているネタが鮪。あえて産地は指定せず、その時期に一番よい鮪を目利きして選んでいる。赤身は軽く醤油漬けにされており、風味が素晴らしい。しっかりと刃が入れられており、口溶け感もある。中トロは、大トロに近い脂たっぷりの握りだ。赤身の旨味も感じられながら、力強さもあわせもつ。大トロは脂の上味にあふれていて、パンチも十分。シャリの酸味と合わさり、ちょうどいいバランスとなるのは、計算され尽くしているところ。
大トロ
コースの流れは〈鮨 よしたけ〉と同じく、大充実のつまみが提供された後で握りとなる。
最初に提供されたのは、涼しげなジュンサイ。甘いフルーツトマト、赤貝や小柱といった旨味のある貝類に、風味豊かな紫雲丹を合わせた。かけ酢は軽めにして素材の味わいを引き立てている。富山県の蛍烏賊は、定番の酢味噌ではなく、自家製マスタードと合わせているので、心地よい酸味。適度なパンチがあるので、酒が進む。
煮鮑
つまみの定番は、〈鮨 よしたけ〉のスペシャリテであり、〈鮨 かだん〉でも通年提供されている煮鮑。丁寧に火が入れられており、刃が細かく入れられているから、弾力を楽しめながらも、やわらかな食感に仕上がっている。濃厚な至味の肝ソースをたっぷりと付けて食べると、さらに旨味が増す。食べ終えた後は、赤シャリを入れてもらえるので、一品でニ度美味しい。日本酒にもぴったりの酒肴だ。
次は握りを紹介しよう。
墨烏賊
墨烏賊は甘味ととろみが抜群で、軽く柑橘が香る。真鯛は非常にしっとりとしたテクスチャーと、慎ましやかな上味を携えている。
小肌
江戸前の“仕事をする”光り物が得意という高橋さん。小肌は軽やかな締め具合で、滋味がふんだんに感じられる。北海道出身の高橋さんらしく、桜鱒も出色だ。上品な味わいで、生姜を乗せてとてもさわやかな仕上がりとなっている。
平貝は醤油焼きにして、香りが豊かで心地よい歯ざわり。海苔を巻いて、香ばしい磯の香りをまとう。雲丹は握りではなく、小鉢で提供する〈鮨 よしたけ〉スタイル。バフン雲丹をからめたシャリの上に紫雲丹をのせ、存分に雲丹を堪能できる。木さじですくって、たっぷり食すのがいい。
穴子は笹の葉の幽香をまとっていて、とても上品。非常にやわらかく、口の中で慎ましやかにほどける。
シャンパーニュをはじめとしたワインがグラスで提供されており、日本酒の品揃えも豊富だ。ハウスシャンパーニュの“ヴァンサン・ブロシェ BSA プルミエ・クリュ ブリュット”(1900円)は50カ月熟成のコクのある一本。ピノ・ノワール主体で上品な味わいなので、酒肴とエレガントにマリアージュする。“みむろ杉 純米吟醸”(2200円)は低温長期発酵をさせており、山田錦のふくらみある甘味としっかりとした旨味が感じられる日本酒。つまみはもちろんのこと、握りにもしっかりとマッチする。“よしたけボトル 伯楽星 純米大吟醸”(3400円)は〈鮨 よしたけ〉でも提供されている特別ボトル。華やかな吟醸香が広がり、繊細な白身魚の味わいをくっきりと浮かび上がらせてくれる。
箱根は日本でも有数のリゾート。そんなところで、銀座の星つき鮨店のエッセンスが味わえるなんて稀有な機会。〈鮨 かだん〉で一級の鮨を堪能してから、箱根旅行を満喫するなんてプランはどう?
●鮨 かだん
住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
営業時間:ランチ(金〜日曜)12:00〜、ディナー18:00〜
定休日:月・水曜
TEL:0460-82-3332
URL:https://www.gorakadan.com/sushi-kadan/
※サービス料別
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。