『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
製作年/2002年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス
見かけに騙されてはいけません!
詐欺師というのは、それらしく振舞っている。やはり、見かけに騙されてはいけない! と肝に銘じたくなるのが、こちらの作品。
パイロットや医師、弁護士などになりすましたうえに、小切手詐欺で大金を手に入れた天才詐欺師フランク・アバグネイルJr.が主人公。10代のころから度胸一発だったフランクは、語学が堪能だからといって、フランス語の教師になりすましたり、お金に困って小切手に手を加えてみたり……。やがて彼は、16歳から21歳までの間に400万ドルを稼ぐようになる。
フランクの詐欺の手口においてキーワードとなるのが、“社会では見かけがモノを言う”ということ。社会的地位が高そうな人間は、まわりから信用される。そのセオリーに基づき、彼はパイロットや医師、弁護士になりすます。そうすれば、偽造した小切手を使っても、まず疑われることはない。
もちろん、航空会社に忍びこんでパイロットの制服をゲットしたり、弁護士のスキルを身につけたり(なんと実際に弁護士資格を取得!)、“社会的地位が高そうな人間”をキープするための尽力も並大抵ではない。そんな努力の賜物“見かけ”に、人はついつい騙されてしまうものだ。いくらフライトアテンダントを引き連れ、颯爽と歩いているからといって、操縦桿を任せていいとは限らない!? フランク=ディカプリオがそれを教えてくれる。
『オーシャンズ11』
製作年/2001年 監督/スティーヴン・ソダーバーグ 出演/ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン
凄腕の詐欺テクニックを知れば、対処すべきセキュリティ方法がわかる!
どんな警備も突破する凄腕たちを前にすると、その安全神話も崩壊気味だが、シンプルに普段と違う出来事や人がいたら怪しむことが第一と思わせるのが本作。
凄腕の詐欺師ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)が犯罪スペシャリストの仲間たちとともに、ラスベガスのカジノの金庫破りに挑む。金庫破りと一口に言っても、ダニーらが狙うのはセキュリティ万全の巨大金庫。実行当日、ベガス3大カジノの金が集まる金庫には1億6000万ドル以上の金が眠っているらしく、プロジェクトは壮大さを極めていく。
リーダーのダニーをはじめ、カジノのディーラー、事情通の資産家、爆破の専門家、中国雑技団の曲芸師、通信技師、スリなど、揃った面々は全員その道のプロフェッショナル。いわば、総力戦のため彼らの計画を見破るのはプロでもなかなか難しいうえに、そもそもカジノ経営者でもない限り気にする必要はなし?
とはいえ、カジノの防犯カメラをハッキングする際のテクニックや変装のハウツー、時間ごとに変わる暗証番号にどう対応するか、街を停電させたいときはどうすればいいのかなど、その詐欺のやり口は知っておいて損はない。要するに、どんなにセキュリティが万全でも、破られない金庫などないということ。そう考えると、ホテルの部屋の小型金庫を過信するなんてのは大間違いかも……。
『スティング』
製作年/1973年 監督/ジョージ・ロイ・ヒル 出演/ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード
うまい話には改めて気をつけたいと思わせる傑作!
アカデミー賞作品賞受賞作で展開するのは、恩師を殺された詐欺師が、殺害を命じたギャングに復讐しようとする物語。死には死を、ではなく、詐欺師らしく詐欺での仕返しを試みる男の奮闘はスタイリッシュで、爽快な感動すらある。
詐欺師とギャングのコンゲームは決して身近な状況ではないが、注目したいのは映画の冒頭。ギャングの手下が路上強盗の現場を目撃し、通りすがりの若者と協力して強盗を退治する。その際に傷を負った被害者はギャングの手下を信頼し、先程狙われた大金を自分の代わりに届け先へ運んでほしいと懇願。ギャングの手下は快く願いを聞き入れたかと思いきや、被害者の大金をまんまと奪い去ろうとする。
しかし、実は被害者と若者は詐欺師コンビで、そうこうしている間に彼らはギャングの手下の所持金を奪取。このスリこそが後に展開する復讐劇の発端となることもあり、手口のあざやかさを含め気にとめておきたいところだ。自分が騙したつもりが、いつの間にか騙されている。路上強盗を助ける行為は尊いが、被害者の金を盗もうとしてはいけません!
『フォーカス』
製作年/2015年 監督/グレン・フィカーラ 出演/ウィル・スミス、マーゴット・ロビー
美女のハニートラップ回避テクがココにある!
怪しいと思っても、素敵な女性の誘いは断れないのが男っていうもの。けれども、詐欺被害には遭いたくないなら、本作でテクを学ぶべし。
ウィル・スミス演じる一流詐欺師のニッキーは、30人もの仲間たちを束ねる犯罪グループのリーダー。大胆不敵なチームプレーで金を稼いでいくニッキーらの活動場所は、金持ちが集まる空港、カジノ、高級ホテルなど。そんな彼らを主人公にしているだけに、映画の中には詐欺にまつわるABCがふんだんに盛りこまれている。
まず注目したいのは、ニッキーが見知らぬ美女とベッドインしようとするシーン。そこへ美女の夫だという男が乱入し、ニッキーを脅す。いわゆる美人局の手口だが、一流詐欺師ニッキーは「乱入はカモる男がズボンを脱いでからにすべし。男が逃げても財布は残るから」と美人局ペアを逆指南。なるほど。ということは、カモられる側になってしまった場合は、“脱いだズボンは死ぬ気で回収しながら逃げるべき”?
そのほか、ポーカーをする際のトリックや賭け事で相手を意のままに操る方法なども、ニッキーたちから学ぶことができる。そんな彼のモットーは、“フォーカス(視線)を操ることができれば、誰だって騙せる”。たとえ美女が近づいてきても、視線を操られないようにしないと!?
『モネ・ゲーム』
製作年/2012年 監督/マイケル・ホフマン 脚本/ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 出演/コリン・ファース
まずは恨みを買わないことが大事?
たまたま引っかかるのが詐欺、と思うかも知れないが、意外と恨みの線で被害を受けることもあることを本作は教えてくれる。
傲慢な大富豪の下で働く美術鑑定士ハリー(コリン・ファース)が、印象派の画家クロード・モネの作品で大富豪に仕返しをしようと画策。モネの連作『積みわら』の中の行方不明になっている1作を偽造し、大金を巻き上げようする。
映画自体は贋作を巡るドタバタを描いたコメディだが、注目しておきたいのは作戦のためにハリーが重ねる涙ぐましい努力だ。まずは、知人に依頼して精巧な贋作を作成。さらには、絵の所有者だったというアメリカ人兵士の孫娘を計画に引き入れ、説得力のあるバックストーリー作りにも奔走する。ただし、この孫娘がハリーの想像以上にぶっ飛んでいること、大富豪が輪をかけて傲慢なことから計画は混迷していき……。
ハリーの作戦、さらにラストの大どんでん返しは、恨みつらみを持った人間の画策ほど一筋縄ではいかないと教えてくれる。詐欺に遭わないためには、誰かの恨みを買わないようにするのも大事?
photo by AFLO