
“キング・オブ・ポップ”こと、マイケル・ジャクソンが亡くなって17年。待望の伝記映画が完成し、すでに公開された各国では大ヒットを記録している。この映画『Michael/マイケル』は、1988年、「BAD」ツアーのロンドン公演までが描かれる。この時、マイケルは30歳。つまりマイケルがスーパースターになるまでの栄光の記録だ。成功の最大の理由は、マイケル役を実の甥(兄ジャーメインの息子)、ジャファー・ジャクソンが演じたこと。世界を熱狂させたダンスはもちろん、マイケルの私生活の顔も、ジャファーは映画初出演ながら見事に表現した。そして幼少期のマイケルを任されたジュリアーノ・ヴァルディも、その愛くるしさ、天才の原石を名演。公開を前に揃って来日にした2人に直撃インタビューした。
──マイケル・ジャクソンという誰もが知るスーパースターを演じるにあたり、本人も“超えよう”などと強い覚悟だったのでしょうか。
ジャファー「さすがにマイケルを超えるのは恐れ多い(笑)」
ジュリアーノ「マイケルは史上最高の存在だから、超えることは不可能だよね」
ジャファー「どこかの瞬間で映画を観る人にマイケルを感じてもらいたい。そのレベルに近づこうと努力したんだ。毎日リハーサルをおこたらず、何時間も音楽を聴いて、何も考えなくても役になりきれる境地に達すること。無意識に動いているのに、“あぁ、これはマイケルだ”と思ってもらえれば成功だからね。そのためにはマイケルの人間性と本質も確実に捉えたかった」
ジュリアーノ「僕もジャファーのアプローチと似ていたかも。映画の中で、子供時代のマイケルを観てる感覚になってほしかった。そうしたら多くの人が僕の演技に満足してくれたみたいで、とても誇りに思ってるよ」

主演を務めるのは、マイケルの実の甥であるジャファー・ジャクソン。2年に及ぶ世界規模のオーディションを経て大抜擢された
──マイケルに近づくために、お父さんのジャーメインをはじめ、肉親からのアドバイスも有効だったのでは?
ジャファー「父からは、ステージに上がる前のマイケルの心境を教えてもらった。あとは動画や資料で見つけられない情報について質問をぶつけたよ。僕の父、および(父の)兄弟たちはマイケルと過ごした時間が長かったわけだからね」
──あなたにダンスを教えたリッチ&トーン(・タラウエガ兄弟)は、マイケルに振り付けをしたコンビですよね。彼らから学んだことは?
ジャファー「リッチ&トーンとのリハーサルでは、まず彼らの才能にひたすら圧倒された。その後、マイケルと一緒にツアーやリハーサルを行った経験から、当時の彼がどんな様子だったのか、細かいところまで話を聞いたんだ。リハーサル中のマイケルの心境を知ることで、僕も同じような気持ちで自分のために練習することができた」
──ジュリアーノは、マイケルの家族から何か声をかけてもらったりは?
ジュリアーノ「ジャッキー(マイケルの兄で長男)やマーロン(同四男)との会話が忘れられない。“僕らの弟になりきってくれた”と褒めてくれたんだよ! マイケル自身に褒めてもらうことはできないけど、その兄弟が認めてくれたんだから、それって最高だよね」
──ジャファーは、自分の家族の過去に向き合ったわけですが、事実を知って役立つ一方、戸惑ったこともあったのではないですか。
ジャファー「役立つことと戸惑い、その両方が混ざり合った感じかな。肉親という立場ではあるけれど、マイケルについては知らないことも多く、一からすべてを学んだんだ。ジャクソン5の時代からジャクソンズを経てソロのアーティストになるまで、すべてのアルバムを聴き、自伝や関連本を読み、ツアーのドキュメンタリー映像なんかを観まくった。その過程でマイケルの芸術性を深く理解したけど、同時に人間性や、彼の慈善活動への思いに感銘を受けた。慈善活動がキャリアの原動力だとわかり、演じるうえで助けになったね。そして最後は、僕はマイケルの家族なんだから、迷った時は直感に頼ればいいとも思った。自分を信じて努力すれば、それが必ずスクリーンに残るんだ、ってね」

ジャクソン5時代をはじめとするマイケルの幼少期を演じたジュリアーノ・ヴァルディ。若き天才の輝きをフレッシュに表現している
──マイケルのダンスをほぼ完璧に再現していますが、最も難しかった動きを教えてください。
ジャファー「ほとんど全部が難しかった(笑)。最も難しかったのはスピン(回転)かな。マイケルはとにかく速く回るし、しっかりコントロールして、どんな瞬間、どんな方向でもぴったり止まる。そこまで自在に身体を操るのは大変だった。あとはもちろんムーンウォークも苦労したよ」
──ムーンウォークの練習はどのくらい時間をかけたのですか?
ジャファー「じつは子供の頃もマネしてた。映画のために改めて練習したのは、3年半くらいかな」
ジュリアーノ「えっ、子供時代にムーンウォークやってたの?」
ジャファー「そんなにうまくできなかったけど、当時は自慢だった(笑)。まあまあだったんじゃない?」
──ジュリアーノはムーンウォークできるの?
ジュリアーノ「もちろん!」
ジャファー「簡単にやってのけるよ」
ジュリアーノ「練習しないと、腕が鈍っちゃうけどね(笑)。ちなみに僕は、歌いながら背中を反ったり、開脚したり、ジェームズ・ブラウンのような動きをするのが難しかった。撮影中にケガをしたくなかったから、毎朝必ず、リッチ&トーンの指導でストレッチを欠かさなかったよ」
──マイケル・ジャクソンの衣装も当時のままに再現されました。あの衣装を着て演じると、特別な気持ちになったのでは?
ジャファー「もともと僕はマイケルのステージ衣装が大好き。ディテールまでこだわって、マイケルのダンスがどう見えるか、ジャケットやローファーの重さも計算されて作られてるからね。だから僕もリハーサル時から本番用の衣装を身に着けるようにした。重さや着心地を把握し、慣れておきたかったからさ。『ビリー・ジーン』の練習で、足を蹴る瞬間にパンツが破れたことがあった。生地の伸縮性が足りなかったんだ。そこで別の生地で新調し、踊りやすくしてもらったりしたよ」
──映画の中の衣装は、現在のあなたの普段着とは違いますよね?
ジャファー「たしかに、役になじむためにローファーを普段から履くようにしたし、フランネルのシャツを〈リーバイス〉のヴィンテージデニムに“イン”で着るのは、僕にとっても初のチャレンジ(笑)。ベルトもヴィンデージものを使った。マイケルが〈リーバイス〉のヴィンテージデニムを愛用してたからなんだけど、今では僕自身も〈リーバイス〉が好きになって家でも履くようになったよ」
──こうやって話していると、ジャファーも声のトーンは、映画のマイケル役とまったく違いますね。
ジャファー「ふだんの僕の声のトーンは、マイケルよりかなり低い。マイケルの話し声の録音を聴きながらマネをすると、かなり変な感じになって、最初のうちは笑っちゃうほどだった。“これはマズい”と思い、何ヶ月もかけて声の練習を続け、撮影開始の1年くらい前に、ようやく声の出し方に自信がついたんだ。マイケルも若い時代は声のピッチが速く、年齢を重ねるとトーンが低くなっていたし、話し方のエネルギーも変動していた。だから僕も時代に合わせて対応し、些細なニュアンスにも注意を払って再現したんだ」

──映画の中で、それぞれのお気に入りのシーンを選んでもらえますか?
ジュリアーノ「カントリーフェアのステージで、観客の車椅子の女の子に向かって歌うシーンかな。歌詞も“I’ll Be There(僕がそこにいるよ)”だし、マイケルの人々への優しさがうまく出ていたと思うから。僕自身、その子を守りたい気分になったんだ」
ジャファー「僕は、マイケルとバブルス(チンパンジー)のシーン。単なるペットではなく、マイケルは友達として動物に接していた。なぜなら、愛されること以外、何も求めてこない動物たちに共感したからで、そこは彼の重要な側面だよね。あとはマイケルが兄弟たちをツイスター(ゲーム)に誘うけど、断られた後のシーン。本の中のネバーランドの世界に逃避するわけだけど、あそこはマイケルの脆さを露わにしつつ、純粋さも伝えていた。彼が世界に対し、疑念を抱いたり、苛立ちを感じるきっかけを表現する、感動的な瞬間だよ」
──では最後に、ジュリアーノに質問です。ふだんのあなたの日常を教えてください。
ジュリアーノ「自由な時間はゲームかな。特にビデオゲーム。バスケットボールも大好きだよ。ペットの2羽のニワトリと過ごすのも楽しいね。マイケルの子供時代と違って、僕はそこまで忙しくない。大人と一緒に仕事をしながらも、ノーマルな生活を送っていられるのは嬉しいよ」
『Michael/マイケル』
6月12日(金)より全国公開
配給:キノフィルムズ
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