『三国志』で有名な天才軍師・諸葛孔明がなぜか現代に転生。アマチュアシンガーの英子をトップスターにするため、軍師としてさまざまな計略で音楽界を席巻していく――。奇想天外な設定で人気を博した原作コミックをドラマ化した『パリピ孔明』が満を持して映画化。日本最大の音楽バトルフェスに参戦することになった英子と孔明の前に、三国時代の宿敵・司馬懿の末裔である司馬潤&shin兄妹が立ちはだかり、知略を巡らせた天才VS天才の壮絶な戦いが始める。ドラマ版に引き続き、冷静沈着かつチャーミングに孔明を演じた向井理に、ドラマでの評判から映画製作の裏話まで話を聞いた。
――テレビドラマ放送時から大きな話題になりましたが、印象的な反応はありましたか?
「音楽業界の人が観てくださっていることが多かったです。クランクインする前に別の作品でアーティスト活動している方と共演していたんですけど、その方も「ドラマに出たい」って言っていたり。実際にオンエアが始まると、共演者の方々や知人からたくさん連絡をいただきました。タイトルとビジュアルがキャッチーだから、自分が観る側だったら、とりあえず1話は観てみようって思う作品でしたし、すごく反響をいただいたのはありがたかったですね」
――孔明役が発表になったとき、意外性もありながらぴったりだと思いましたが、そのことについての反響は?
「自分としてはぴったりかどうかはちょっとわからないですけど(笑)、ハマっているねといろいろな方から言ってもらいました」
――今回の映画化のお話は、いつ聞かれたのでしょうか?
「連ドラはオンエアの前に全て撮り終わっていたので、オンエアが始まった頃にはもう違う仕事をしていて、懐かしい気持ちで観ていました。でも、オンエア時期に、(上白石)萌歌さんがEIKOとしてアルバムのリリースイベントをやりまして、そこで萌歌さんと一緒にプロデューサーに急に知らされました。ちょっと懐かしい作品になりかけていたところに、来年(映画を)撮りますと言われたので、ちょっとキョトンとして(笑)。でも、音楽愛に溢れたすごくいいチームだったし、共演者にも本当に恵まれて。萌歌さんはもちろん、森山(未來)くんのことはすごく尊敬している俳優さんのひとりだったので、また映画で一緒にお芝居できることが嬉しいと思いました」
――今回も奇抜な衣装を素敵に着こなしていらっしゃいましたね。
「普通の衣装ではないので、衣装とメイク合わせて1時間弱ぐらい準備にかかります。着るのだけでも時間がかかりますから」
――その衣装で自転車で爆走するシーンは笑ってしまいました。
「すごく大変でした(笑)。監督からは僕の全力疾走に、カメラのスピードを合わせますと言われていて、何テイクか撮りましたね。舞台期間中だったので、翌日は(舞台)本番だったんですが、筋肉痛になってしまって、階段を登ったり降りたりするのがちょっときつかったです」
――ドラマから映画の期間は少し開いていましたが、衣装を着ることで、孔明の感覚はすぐ戻ってきましたか?
「1年ちょっとぶりくらいでしたが、連ドラでだいぶ着ていたのもあって、すぐに戻ってきました。感覚として役が染みついているものがやっぱりありましたね。連ドラのときも衣装を4回くらいフィッティングして、その都度メイクも試行錯誤して、ああじゃない、こうじゃない、ちょっと濃すぎる、いやもうちょっと濃くしようとか、いろんなスタッフが意見を交わす中で、最終的にバランスを取れたのが連ドラでのビジュアルになったので、似合うと言っていただきますけど、それはもう似合うように作っていただいたので(笑)、僕というより、衣装さんとメイクさんが素晴らしかったですね。ビジュアルの強さが重要なキャラクターだったので、作り込んでもらえたからこそ、違和感なく演じられたと思います」
――豪華アーティストの方々が本人役として出演したライブシーンが圧巻でした。
「『のだめカンタービレ』や『BECK』など、音楽ものはわりとやってきた方ではあるのかなと思うんですけど、これだけいろんなジャンルのアーティストが揃う作品は観たことも、出演したこともなかったので、どういう感じになるのか、正直、台本を読んだ段階では全くわからなかったです。英子と孔明のストーリーの主軸はもちろん台本でわかるのですが、「次はこのアーティストです!」みたいなセリフがあっても、誰が来るか台本には書かれていないので、どんなパフォーマンスをされる方なのかもわかりませんでした。フェスのシーンは、去年『パリピ孔明』のイベントをやりますと告知して、当選した皆さんを観客としてお呼びしただんです。僕が冒頭、お客さんに『実は映画化するので、今日は映画のシーンの撮影です。僕の計略にハマって皆さんは集められました』っていう言い方をして撮影をはじめました(笑)。フェスのシーンは1日で撮影しましたね」
――撮影自体、大掛かりでしたよね。
「物語の核は孔明と英子ですが、一番派手なのはやっぱりフェスのシーンになりますよね。他のシーンはチーフのカメラマン1人が1台で撮っているんですけど、フェスのシーンはWOWOWのライブチームを呼んで、まだ誰もやったことがないやり方で撮影しました。スケジュールも1日しか取れなかったこともあり、とにかく本当のライブみたいな感覚で全部を撮っていこうということで、そういう画になっていたと思います。ある意味、ドキュメンタリーの撮り方に近かったと思います。&TEAMさんや岩田(剛典)くんなど、本人役で出演してくださって、お祭りみたいな1日でしたね」
――楽しそうでありつつも、段取りなどは大変だったのでは。
「このボリュームを1日で撮り切るって、今までの経験上、正直ちょっと無理かもしれないと思ったんです。お芝居パートもやりつつライブシーンも撮らないといけなかったので。僕は、裏でSNSを撮ったり他にやることもあったりと、本番当日はあまりステージを観られないことがわかっていたので、前日のリハーサルを観に行きました。6000人のお客さんは時間の決まりがあったので、お芝居パートは皆さんが帰った後に撮ったりしましたが、最終的にはちょっと巻いて終わったので、やはり優秀なチームでしたね。裏では僕も含めてみんなリアルに走り回っていて、久しぶりに部活みたいな撮影をしましたけど(笑)、プロデューサーもすごいテンションが上がっていましたし、いい思い出になりました」
――上白石萌歌さんは、このフェスの現場で客席からカメラを撮ったり、皆さんへ気配りをする向井さんの立ち振る舞いを見て、向井さんこそ本物の軍師だと思われたそうです。
「フェスの現場では僕は出演する側の人間ではなかったので、演者を支えるという意味では孔明と役どころがリンクしていたんですよね。ステージに立つ人たちが気持ちよくパフォーマンスすることが、この映画のクオリティに繋がってくると思っていたので、舞台のソデやバックヤードにいるときはなるべく皆さんに話しかけるようにしていました。今回、映画から初めましての人たちはやっぱり緊張すると思いましたし、アーティストの方々も自分のコンサートではない、いわゆるホームではない場に来てくださっているので、とにかく撮影を楽しんでいただきたいという気持ちでした」
――ちなみに向井さんもああいうフェスみたいな大きな会場で歌ってみたいと思われますか?
「いや、やめた方がいいかもしれません。仕事が減ります(笑)。ミュージカルが多い劇団☆新感線の舞台に何度か出演させていただいて、今年も出演させていただきますけど、僕、歌っていないですから。『髑髏城の七人~Season 風』(2017年秋公演)はストレートプレイでしたし、『狐晴明九尾狩』(2021年秋公演)でも、歌うキャストはいましたが、僕は歌っていないので難しいですよね」
――そうだったんですね。歌の力で救われる人たちが描かれますが、向井さんご自身は歌の力を感じたことはありますか?
「はい。音楽は日常的に聴いていて、食事中は激しいロックを聴かないとか、シチュエーションによって聴く曲を変えることで気分が変わりますよね。テンションを上げたいときに聴く曲もあるので、音楽の力は常に感じています」
――孔明は戦略を練って計画的に物事を進めていくタイプですが、向井さんはいかがですか?
「わからないことは絶対に調べますし、事前準備はかなりするタイプです。今は何でも調べられる時代なので、前よりは準備がしやすくなっていて助かります、ただ、芝居に関しては、1つの手法に頼ると、ステレオタイプになって面白くなくなるので、そこを壊そうとはします。いろんな角度から見ないと人間ってわからないので、この人はこういう人って決めつけず、柔軟に演じていこうと思っています」
――向井さんにとって軍師的な存在はいらっしゃいますか?
「やっぱりマネージャーですね。どうするか、どうしたいかの相談は都度していますが、基本的に仕事を決めているのはマネージャーなので、英子にとっての孔明みたいな感じなのかなと思います。今月から所属先がなくなって、今は2人でやっていますし、10年くらいついてくれているので、信頼関係も大きいです。自分の好きな作品や役柄など、やりたいことだけだと仕事的にも偏るので、そういう意味で、自分にとっては意外な作品でも、いつも前向きに捉えて、やった方がいいんだなと思いますし、出演した結果、やって良かったと思うことがすごく多いです。孔明役も意外と言えば意外な役でした(笑)」
『パリピ孔明THE MOVIE』4月25日公開
『パリピ孔明』原作・四葉夕ト 漫画・小川亮 (講談社「ヤングマガジン」連載) 監督/渋江修平 脚本/根本ノンジ 出演/向井理、上白石萌歌、森山未來、ディーン・フジオカ、神尾楓珠、詩羽 配給/松竹
2025年/日本/上映時間118分
©四葉夕ト・小川亮 / 講談社 ©2025 「パリピ孔明 THE MOVIE」製作委員会