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CULTURE カルチャー

2025.01.17


チャン・ドンゴン『“自分なら、どうするか?”と、考えさせられるはずです』【映画『満ち足りた家族』来日インタビュー】



『八月のクリスマス』(1998年)でデビューして以来、『ハピネス』(2007年)、『世宗大王 星を追う者たち』(2019年)などの力作を放ち、世界的に注目される韓国の名匠となったホ・ジノの新作『満ち足りた家族』が、いよいよ日本公開される。欧米でも何度か映画化されているヘルマン・コッホの世界的なベストセラー『冷たい晩餐』を韓国社会に置き換えて映画化。主人公は弁護士の兄と医師の弟で、彼らは定期的にそれぞれ妻を伴い、ディナーをともにしている。実利優先の兄と道徳的な弟では、会話がぎこちなくなることも少なくない。そんなある日、2人は子供たちに関する恐るべき秘密に直面し、兄弟は苦渋の選択を強いられる……。

現代社会の闇を見据えたサスペンスフルなストーリーを、兄役のソル・ギョングと弟を演じたチャン・ドンゴンという2大実力派スターの共演が盛り立てる。とりわけ後者は約5年ぶりの映画出演ということもあり、注目を集めている。チャン・ドンゴンとホ監督が組むのは『危険な関係』(2012年)以来、12年ぶり。そんな彼らが来日し、緊張感にあふれたこの新作について語ってくれた。
 

  

 

ホ・ジノ/1963年8月8日生まれ。大学で哲学を学んだ後、会社員生活を経て、ポン・ジュノらを輩出したKAFA(韓国映画アカデミー)で映画を学ぶ。1998年、ハン・ソッキュ、シム・ウナを主演に起用した『八月のクリスマス』で長編監督デビュー。一躍韓国新世代監督の最注目株に躍り出る。代表作に、『四月の雪』(2005年)、『ハピネス』(2007年)、『危険な関係』(2012年)など。2021年には、初のシリーズドラマ監督作『LOST 人間失格』を手がけた。

――『満ちたりた家族』は衝撃的ともいえる物語ですが、韓国の観客の反応で印象に残ったものはありますか?

ホ・ジノ(以下ホ)「俳優たちの演技が高く評価されたことが印象に残っています。クレージーな面を見せる役者もいましたから。“カラダではなく、セリフを使ったアクション”という評価も覚えています」

チャン・ドンゴン(チャン)「インターネットを見ても、高い評価は実感できました。“自分なら、どうするか?”を考えさせられる、という声が多かったですね。それこそが監督や僕らが観客の方々に問いかけたかったことなので、嬉しく思いました」

――親子の断絶や人間のエゴなどの社会の暗部が浮き彫りにされていますが、その背景にはスマートフォンやPCなどの通信機器の存在も絡んでいますね。家族の食事のシーンでは、家族の会話はなく、子どもはスマホを見ながらご飯を食べています。

ホ「いかにも、あのシーンはあえて入れたものです。私たちが今生きている世界では、コミュニケーションが失われつつあります。その原因を作っているひとつの要素が携帯電話ではないかと思います。スマホ越しのニュースや検索は、コミュニケーションを直接的ではないものにしてしまう。結果、人と人との間には断絶が広がっているような気がします」

チャン「テクノロジーの発達によって便利な世の中にはなりましたが、それによって人間は幸せになっているのか? という疑問はありますね。そのような不確かな時代を、現代人は生きています。携帯電話にしてもコミュニケーションを密にするはずのものなのに、逆に断絶を引き起こしている。それを考えると、技術の発達によって、われわれ人間がなくしてきたものは多いのではないでしょうか。韓国の社会を見ていると、昔のものはよくなくて、新しいものこそ良いと断じる風潮があります。古くても良いものはあるし、そういうものへの価値観は持っていたいですね」
 

  

 

チャン・ドンゴン/1972年3月7日生まれ。『友へ チング』(2001年)、『ブラザーフッド』(2004年)など、韓国映画興行史上に残る記録的ヒット作へ出演。主要出演作に『ロスト・メモリーズ』(2002年)、『コースト・ガード』(2002年)、『PROMISE/無極』(2005年)、『マイウェイ 12,000キロの真実』(2011年)、『危険な関係』(2012年)など。本作で約5年ぶりとなるスクリーン復帰を果たした。

――チャン・ドンゴンさんは5年ぶりの出演作ですね。復帰に本作を選んだ理由は?

チャン「これまで私が演じてきたキャラクターを振り返ると、少々非現実的なものが多かったと思います。その点、本作で演じたキャラクターは身近に存在していて共感できる人物でした。しかも彼は一面的な存在ではなく、裏側にもいろいろなものを抱えている。それを少しずつ表現していくことが、俳優として面白いと感じたのです。しかもホ監督は、そのようなドラマを語ることに長けている。脚本を読んですぐに、これは参加するべき作品だと思いました」

――ホ・ジノ監督にうかがいます。監督の作品は、映像の構図にこだわっていますね。本作も印象的なショットが多かったですが、どんな映画監督に影響を受けたのでしょう?

ホ「私が若い頃に撮った作品は、小津安二郎監督の影響が強かったと思います。小津の作品は日常の平凡な風景の中に人生の深みをとらえていて、とても好きでした。しかし、今回の作品の場合は、どの作品を参考にしたのかと問われると、答えを出すのは難しいですね(苦笑)」

――ホ監督から見たチャン・ドンゴンさんの俳優としての凄み、チャン・ドンゴンさんから見たホ監督の凄みを教えてください。

ホ「チャンさんとは2度目の仕事ですが、まず韓国史上最高の美男子です(笑)。人柄も素晴らしいし、尊敬に値する方です。何より、俳優として誰もが認める実力を持っている。ひとつの役を演じるために入念に準備をして、さまざまなことを考えたうえで現場に現れるので、演じる段階ではキャラクターの内面の深い部分まで完成している。表面的ではなく、内面的な部分をきちっと表現するんですよ。本作で彼の演技は高く評価されましたが、それも納得ですし、次の出演作を早く観たくなりました」

チャン「映画監督は人によって演出の仕方も違うし、現場を統率する方法も異なります。ホ監督の場合は、私たち俳優と一緒になって演技について考えて、一緒に悩む、その点が独特ですね。私たちと密にコミュニケーションをとり、キャラクターの解釈や演技のアイデアを、対話をとおして醸成させてくれる。私が思いつかなかったようなアイデアをあたえてくださることもあるし、意見が異なっても対話によって解決できる。監督は決して、その俳優が持っていないものを要求しないし、“こうして欲しい”という要望も言いません。ただただ、僕らが持っているものを最大限、引き出してくれるんです。この作品以外でもホ監督の映画は俳優が高評価を得ていますが、それはホ監督ならではの、そのような演出法があるからではないでしょうか」



『満ち足りた家族』
監督/ホ・ジノ 出演/ソル・ギョング、チャン・ドンゴン、キム・ヒエ、クローディア・キム 配給/日活/KDDI
2024年/韓国/上映時間109分

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文=相馬学 text:Manabu Souma
motoishiduka 
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