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韓国の国民的人気シリーズの最新作『犯罪都市 PUNISHMENT』を抑えて、2024年の韓国で最大のヒットを記録したサスペンス・スリラー『破墓/パミョ』が、いよいよ日本に上陸。とある墓の改葬を依頼された巫堂(ムーダン 注:祈祷師)や風水師、葬儀師ら4人が古い墓を掘り起こす。そこから出てきた“何か”とは!?
人間の命を奪いかねない“何か”の正体を解き明かすミステリーや、超常現象の恐怖、韓国特有の宗教的な儀式の迫力などに加え、怪事件の謎を追う4人を演じた実力派俳優たちのアンサンブルも見どころ。その中心にいるのが、ベテランの風水師にふんしたチェ・ミンシクだ。『シュリ』(1999年)や『オールド・ボーイ』(2003年)、『悪魔を見た』(2010年)、『悪いやつら』(2012年)など、多くのヒット作に出演してきた、この韓国を代表する名優が注目の『破墓/パミョ』について語ってくれた。
――風水は日本でも有名ですが、風水師という職業となると馴染みがありません。これは韓国では普通にある職業なのですか?
「目立つほどはありませんが、それを仕事にしていらっしゃる方はいます。風水というと迷信のようなオカルトと思われがちですが、実は私たちの生活の中にしみ込んでいるものでもあります。ルーツをたどれば中国の道教があり、そこでは自然と人間の調和が保たれたり、乱れたりすることにより、吉や凶を判断する。調和を保つことは本来、人間が目指すべきものですが、いつのころから風水は人間の欲望を満たすためのものに変質してしまった。韓国では権力者や金持ちほど風水にこだわります」
―—役作りは風水師の方に会われて行なったのですか?
「それはしていません。両親が仏教徒だったので、子どもの頃からよくお寺に行っていましたが、そこで会う僧侶の中には気の流れや風水を理解している方がいらっしゃいました。その記憶が今回の演技には参考になったと思っています。風水といっても私が理解しているのは大それたものではなくて、生活風水というべきものですね。就寝時は北枕にしてはいけない、というような。棺に入り埋葬されるときは頭を北向きにするのが風水では一般的です。生きているうちにそれをやると陰の気を吸収して健康を害してしまう、といわれています。それを迷信と一蹴することができず、風水で生活を整えていくことは、個人的にはとても人間的であると感じます。それに基づいて役を演じました」
――土を舐めるシーンには真実味がありましたが、これは風水師の習慣なのでしょうか?
「そのようなことをするという話は聞いたことがありますが、この職業では一般的な行為ではありません。風水師によっても流儀は異なりますから。ただ、それを習慣にしている風水師の方の話によると、舐めたときに香ばしさを感じたら良地で、ムカつくような感覚を覚えたら悪地という判断もあるようです」
――見どころのひとつである、緊張感にあふれたお祓いのシーンの舞台裏について教えてください。
「あの場面はキム・ゴウンが演じたムーダンにスポットが当たります。彼女の周りで祈祷をしているのは、この作品を作るためにアドバイスしてくれた本物のムーダンの方々です。私たちはキム・ゴウンのことが心配でした。この鬼気迫る演技で、本当にムーダンになるんじゃないかと(笑)。幸い、そうはなりませんでしたが、彼女の演技は白目をむくほどほど真に迫っていて、撮り終えたあとは拍手喝采でした。長い時間の撮影だったので、終了後の彼女は体力が尽きていました」
――主要キャスト4人の中では最年長でキャリアも豊富ですが、どのような感覚で現場に臨まれましたか?
「決して自画自賛ではなく、私たち4人の演技の息はピッタリと合っていました。年上だから自分が引っ張っていくというような考え方は必要なかったし、それは何かを創作する現場には合いません。4人とも俳優としてのプロ意識をもって臨み、各自キャラクターを深くとらえていました。あくまでも私たちは、この作品のために集まった俳優ですから、それぞれの演技がどのような化学反応を起こすのか、それだけに集中して、結果それはうまくいったと思います」
――チャン・ジェヒョン監督は注目の才能ですが、役者としてどう見ていらっしゃいますか?
「カーペットを編んでいくような、細やかな演出ができる方です。その点が気に入りました。丁寧な演出家であることは、前作の『サバハ』(2019年)や『プリースト 悪魔を葬る者』(2015年)を観ても明らかです。出演作を選ぶ際にひとつの基準となるのは、監督の才能であり、その作品です。彼の映画を観たことは、この『破墓/パミョ』という新作に出たいという動機にもなりました」
――いつもまったく違うキャラクターを演じていらっしゃっていて、ロバート・デ・ニーロの歩みも連想しますが、お手本にしている俳優はいますか?
「俳優になりたいと思った頃に影響を受けた俳優という意味ではロバート・デ・ニーロは間違いなくそうです。アル・パチーノにも憧れました。『タクシー・ドライバー』(1976年)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)を学生の頃に観て、作品も演技も素晴らしいと思いました。そういう俳優の方と比べられるのは身に余ることです。私は彼らの足の裏についている垢みたいなものですから(笑)」
――それは謙遜のし過ぎでは(笑)。では、ご自身のキャリアについてお聞かせください。『シュリ』(1999年)でブレイクしてから25年が経ちましたが、ここまでのキャリアをどう受け止めていますか?
「気恥ずかしさはありますね。年齢を重ねて出演作の数はどんどん増えていますが、つねに心がけているのはマンネリに陥らないことです。陥るとそれを治す薬はないし、自分がマンネリに陥っているという自覚さえ持てなくなることもありますから。一方で、よい演技をしたいし、良い作品に出たいという欲もあります。とにかく、今の状況に安住してはいけないと思いますが、それは難しいことです。自分と向き合って、“これは正しいことなのか?”と自問自答しますが、そういう時間はない方がいいし、私自身もしたくない。でも、マンネリに陥らないためには必要なことだと思います」
――マンネリは避けたいとのことですが、もしも『破墓/パミョ』の続編の話がきたらどうしますか?
「受けるとは思いますが、土を掘るような肉体労働的な場面はやりません。私の指示で若者にやらせるような設定にしたいですね(笑)」
『破墓 パミョ』公開中
監督・脚本/チャン・ジェヒョン 出演/チェ・ミンシク、キム・ゴウン、ユ・へジン、イ・ドヒョン 配給/KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
2024年/韓国/134分
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