【夏休み特選】時間を無駄にしない! 絶対面白いサスペンス映画10選!
ゆっくりと過ごしたい夏休み。オリンピック観戦の合間に、映画を見てリフレッシュするのはいかが? とはいえ、観終わった後に「時間を無駄にした……」という思いはしたくないはず。そこで絶対に面白いサスペンス映画10本を厳選! これなら費やした時間と同等以上の感動に満たされるはず!
『黙秘』
製作年/1995年 監督:テイラー・ハックフォード 出演:キャシー・ベイツ、ジェニファー・ジェイソン・リー
変幻自在、キャシー・ベイツの存在感に唸る!
米メイン州の屋敷で死亡事件が発生。現場で鈍器のようなものを振り上げる姿を目撃されたメイドが容疑者として浮上する。その中年女性は、かつて夫が死亡した際も容疑をかけられており……。あらゆる状況から見て彼女が怪しいのは明らかだが、演じるのが『ミザリー』で強烈なイメージを残したキャシー・ベイツというのも、先入観を強める一つの大きな要因だ。その結果、我々は物の見事に騙され、ラストではまさかの胸揺さぶる熱い感動すら押し寄せてくるのだから、これは本当に油断も隙もない映画である。
スティーヴン・キングの原作小説を脚色したのは、有名劇作家の息子であり、当時脚本家として駆け出しだったトニー・ギルロイ。今や『ボーン』シリーズの脚本やSWドラマシリーズ『キャシアン・アンドー』のクリエイターとしても知られる彼だが、本作ではフラッシュバックを巧みに使い、過去と現在をスリリングに併走させながら女性たちの人間ドラマをより深みあるレベルへ昇華させている。いま見直しても語り口に無駄がなく、非常に“技あり!”な一本だ。
『ファーゴ』
製作年/1996年 製作/イーサン・コーエン 監督/ジョエル・コーエン 出演/フランシス・マクドーマンド、スティーブ・ブシュミ
寒さは判断力を失わせる?
米ミネアポリスで、多額の借金に悩むカーディーラーが、妻の偽装誘拐を画策。チンピラコンビを雇い、彼女を誘拐させて、富裕な義父から身代金を巻き上げようとする。ところがチンピラコンビが犯行中、目撃者らを殺害したことから計画が狂い始めた。妊娠中の保安官マージは丁寧な捜査で、少しずつ事件の真相に迫っていく。一方、カーディーラーやチンピラコンビは不測の事態によって追いつめられ、図らずも惨劇を広めてしまう。
米映画賞を席巻した、鬼才コーエン兄弟の秀作サスペンス。舞台となるミネアポリスは、真冬には気温が氷点下より上がることが稀で、当然降雪量も少なくない。そんな極寒の中で物語は展開。雪原に死体が転がり、真っ白な大地は鮮血に染まる。犯罪に手を染めた人々が暴走する物語は、緊張感とブラックユーモアに彩られ目が離せない。彼らを狂気に追い込んだのは、それぞれの欲望に加え、判断力を失わせる寒さが影響しているのかもしれない。
『ミスティック・リバー』
製作年/2003年 監督/クリント・イーストウッド 出演/ショーン・ペン、ティム・ロビンス
哀しみの傷跡を抱えた、荘厳なる街の神話
悠然と流れるミスティック川のすぐそばで、幼なじみの3人の男子たちがとある事件をきっかけにわだかまりを抱え、数十年後、一つの謎めいた殺人事件の顛末へと流れ着いていくーーー。心に闇を抱える役柄を演じたティム・ロビンスを静とするなら、酸素吸入を必要とするほどの激しさで悲しみの演技に臨んだショーン・ペンはまさに動。一級の俳優たちが織りなす剥き出しの演技ひとつひとつに心掴まれ、その果てにある運命結末に深く重く打ちのめされる逸品だ。
イーストウッド組の常連スタッフはいつも気心知れあい、俳優陣を変に緊張させることもない。ただし、何度もテイクを重ねることもなくスピーディに段取りが進むので、だからこそ役者陣は入念に準備して一発で結果を出さねばならない。このリラックスしながら周到に醸成される重厚感。そしてあらゆる要素を大河の如くひとつの流れへと集約させていくイーストウッドの手腕。何度見直しても発見の尽きない、まさに映画の教科書のような作品である。
『コラテラル』
製作年/2004年 製作・監督/マイケル・マン 脚本/スチュアート・ビューティ 出演/トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、マーク・ラファロ、ジェイダ・ピンケット=スミス
LAの夜景に魅了される!
街を流すタクシー運転手マックスは、ビンセントという謎めいた客の依頼で、多額の報酬と引き換えに一夜の貸切運転を引き受ける。ところが、ビンセントの正体は殺し屋で、一夜に5人を始末する仕事を遂行しようとしていた。殺人の共犯となりかねない危険な状況下で、マックスは反抗を試みるが、百戦錬磨のビンセントにかなうはずもない。やがて最後の標的の元に向かうことになったマックスは、ある決意を固める……。
新作ドラマ『TOKYO VICE』も話題の鬼才マイケル・マンが、トム・クルーズとジェイミー・フォックスを主演に迎えて生み出したハードボイルド。ほぼ全編が夜のLAを舞台にしており、夜景の鮮烈さが、とにかく映える。マン監督は2004年当時としては珍しい、解像度の高いデジタルビデオを導入して、フィルムではとらえきれない夜の美しさを映像に収めた。ちなみにマン監督は『ヒート』でもLAの街を描いている。
『ゾディアック』
製作年/2007年 原作/ロバート・グレイスミス 監督/デヴィッド・フィンチャー 脚本/ジェームズ・バンダービルト 出演/ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.
“容疑者と地下室で二人きり”という恐怖!
1969年の米サンフランシスコで、残虐な殺人事件が続発。現地の新聞社に送られてきた声明文により、正体不明の犯人は“ゾディアック”と呼ばれ、恐れられるようになる。刑事や記者が事件の調査に当たり、容疑者も浮かび上がるが、解決には至らなかった。一方、新聞社の風刺画家グレイスミスは事件に興味を抱き、独自の調査を熱心に続けた結果、ある怪しい人物に行き当たる。
ゾディアック事件として知られる実際に起こった未解決連続殺人事件の謎に、『ゴーン・ガール』のデヴィッド・ファンチャー監督が肉迫。記者や刑事ら、事件に憑かれていくことで疲労を募らせる人々の心理に焦点を絞る。一方で、グレイスミスが容疑者らしき人物と地下室でふたりきりになる場面など、緊張感にあふれた見せ場も。ジェイク・ギレンホールやロバート・ダウニーJr.、マーク・ラファロら演技派俳優たちの競演も見どころだ。
『ブラック・スワン』
製作年/2010年 原案・脚本/アンドレス・ハインツ 監督/ダーレン・アロノフスキー 出演/ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、ウィノナ・ライダー
ヒロインが闇に落ちる姿に衝撃を受ける!
真相がわからずハラハラさせるサスペンス。そして、背筋も凍るようなシーンが登場するスリラー。両方の要素をハイレベルで合体した作品は少ないが、『ブラック・スワン』はそんな貴重な一本だ。NYの一流バレエ団に所属するニナは、次回公演『白鳥の湖』の主役候補に上がっていた。美しく純粋な白鳥と、官能的に相手を誘惑する黒鳥を一人で演じ分けるという難役だが、演出家はニナの隠れた才能に気づいて抜擢。しかしリハーサルがはじまり、役に没頭しようとするニナは不可解な現象に見舞われるように……。
主役を踊るプレッシャー、代役に選ばれたライバルのダンサーや演出家との悩ましい関係などから、ニナは幻覚や妄想に襲われる。それが一瞬の映像で表現されたり、かなりダークな描写だったりと、さまざまに駆使されるので、多様な恐怖を味わう感覚。なかでもニナの肉体が白鳥と一体化するビジュアルは生々しくて衝撃的! 現実と非現実がひとつになるクライマックスは、本作でアカデミー賞主演女優賞に輝いたナタリー・ポートマンの狂気ともいえる熱演に圧倒されるはず。いま何かと話題のセクハラ、パワハラ問題も取り入れており、その部分もスリリング。
『裏切りのサーカス』
製作年/2011年 監督/トーマス・アルフレッドソン 出演/ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース
凄腕諜報員たちの頭脳戦にシビれる!
英国情報部の幹部メンバーの中に「もぐら(二重スパイ)」がいる。東西冷戦下でその人物は、英国のために身を捧げているように見せかけながら、ソ連側に情報を漏らしているというのだ。ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン……秘密裏にそう名付けられた面々をターゲットに、いま初老スパイ、ジョージ・スマイリー指揮下の炙り出し作戦が幕を開ける。
いやはや、これは数あるスパイ映画の中でも最高級の味わい。銃撃戦や格闘などが全く起こらない中で、一筋縄ではいかない諜報員たちの血の涙もない頭脳戦が繰り広げられ、その向こう側にはいつもうっすら、自分たちを写す鏡のごとく組織化されたKGBの気配が見え隠れする。70年代BBCドラマでは『スター・ウォーズ』オビ=ワン役、アレック・ギネスが名演を見せたが、これとはやや印象を異にする新たなゲイリー・オールドマンの存在感がまた絶品。わずかな仕草、声のトーン、眉や広角の動きにすら気が抜けない。ちなみにクリスマス・パーティ場面で原作者ジョン・ル・カレもちらりと映るので、お見逃しなきよう。
『誰よりも狙われた男』
製作年/2014年 監督/アントン・コービン 出演/フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス
複雑化した諜報戦の内幕を描く!
ジョン・ル・カレ原作による激渋なスパイ映画。かつて9.11テロの実行犯らが拠点にしていたとも言われるハンブルグを舞台に、諜報組織内のライバル同士やCIAらが繰り広げる”新時代の勢力争い”をジリジリと焼け焦げるような筆致で描く。起点となるのは、この地にふらりと流れ着いたイスラム系チェチェン人の若者。どうやら彼は莫大な遺産を相続しているらしく、彼を泳がせて資金の流れを辿れば隠れたテロ計画を炙り出せるかも……そう画策するベテラン諜報員バッハマンだったが、事態は思いもよらない力学によって内側からことごとく崩れ落ちていく。
名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最晩年作品としても名高く、タバコをくゆらせ、相手を出し抜き、焦燥に駆られ、笑顔を浮かべつつ刃のような言葉を突きつける姿が、まさにリアルなスパイとしての凄みを漂わせる。悪者は一人も登場しない。誰もがより良い世界を望んでいる。なのに周囲の誰一人として信用できず孤独は増すばかり。暗闇の中、おぼろげな出口を求めてさまよう、玄人好みの一作である。
『ネオン・デーモン』
製作年/2016年 原案・監督・脚本/ニコラス・ウィンディング・レフン 出演/エル・ファニング、キアヌ・リーヴス、カール・グルスマン
嫉妬と妬みがジワジワとやってくる!
モデルになる夢を追い、ロサンゼルスにやってきた少女ジェシー。モーテル生活をおくりながらモデル事務所との契約にこぎつけ、敏腕カメラマンに見出されてチャンスをつかんだ彼女は。事務所の先輩である売れっ子モデルたちを差し置いて、ファッションショーのトリに抜擢される。華々しい成功はジェシーに自身の美ぼうを自覚させるに至った。だが、一方ではそんな彼女を妬んだ者たちの恐ろしい策略が……。
『ドライヴ』の鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンがファッション業界の狂気に切り込んだ衝撃作。ヒロインが抱く成功への渇望や、見知らぬ地での不安、それらが自信や傲慢へと変わるさまを見据える。一方では、嫉妬という他者の激しい感情があり、それらが絡み合って突入するクライマックスは弱肉強食の冷酷な世界を象徴するかのようで、ただただ壮絶。キアヌ・リーブスが、何を考えているかわからない不気味なキャラで出演している点にも注目。
『トレイン・ミッション』
製作年/2018年 原案・脚本/バイロン・ウィリンガー、フィリップ・デ・ブラシ 監督/ジャウム・コレット=セラ 出演/リーアム・ニーソン、ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、ジョナサン・バンクス
ニューヨークの電車内で起こるタイムリミットサスペンス!
リストラされたばかりの保険セールスマン、マイケル(リーアム・ニーソン)はどん底気分のまま、10年間通勤に利用してきた電車で帰路に。そんな中、見知らぬ女性から「電車が終点に到着するまでに、乗客から“ある人物”を見つけ出せ」との指示を受ける。家族を人質に取られたマイケルは、困難なミッションに挑まざるを得なくなるが……。舞台となる電車はニューヨーク中心部と郊外を結ぶラインで、マイケルが電車に乗りこむグランドセントラル駅から終点のコールドスプリング駅まで約1時間半。ハドソン川を望める景色のいい路線で、ちょっとした観光気分にも。各停車駅のおおよその位置関係を把握しておけば、タイムリミットサスペンスのスリルを一層味わえる。
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Ushizu Atsunobu
photo by AFLO