『ルーキー』
製作年/1990年 監督・出演/クリント・イーストウッド 脚本/ボアズ・イェーキン、スコット・スピーゲル 出演/チャーリー・シーン、ラウル・ジュリア、ソニア・ブラガ、トム・スケリット
とにかく破天荒な新人教育!
ベテラン&新米の刑事コンビが、互いのピンチを豪快にカバーしながら高級車窃盗団の撲滅に向けて突き進むアクション大作。刑事ニック(イーストウッド)の新人教育はとにかく破天荒そのもので、彼自身が率先して危険へ飛び込んでいくものだから、その背中を追うおぼっちゃま育ちの新米デヴィッド(チャーリー・シーン)には気が休まる暇もない。しかしニックが勢い余って人質にとられるというまさかの事態を迎えるや、今度はデヴィッドが瞳を燃え上がらせてハーレーにまたがり、先輩を凌ぐテンションで邪魔する敵を次々となぎ倒し……。
序盤の高速道路の激走から終盤の空港内での全力疾走チェイスに至るまで、完全にリミッターがぶっ壊れっぱなしのテンションが魅せる。法を守るべき刑事たちのドラマとしてはかなりやりすぎではあるものの、二人のもたらす爆発的な相乗効果あってこそ、壁が突き崩され、あらゆる不可能が可能となっていく。ストレスの溜まった時に見るとすっきり爽快な気分になれること間違いなし!
『カラーズ/天使の消えた街』
製作年/1988年 原作・脚本/マイケル・シファー 監督/デニス・ホッパー 出演/ロバート・デュバル、ショーン・ペン、マリア・コンチータ・アロンゾ、ドン・チードル
新米とベテランの捜査の違いが化学反応を起こす!
幾つも入り乱れたギャングの抗争が絶えないロサンゼルス郊外で、市警の特別対策チームCRASHのベテラン警官と血気盛んな新米がタッグを組み、治安改善のために命を削る。ベテランはギャングを刺激しないよう尊重しながら事を進め、対する新米はあくまで強硬的に、どんな些細な悪もムキになって全力で追い詰めようとする。果たして本当に効果的なのはどちらなのか。二人のアプローチの違いが、ヒップホップ音楽に乗せて興味深い化学反応のドラマを生んでいく。
「この街でそんなカッカしてたらすぐに疲弊してしまうぞ」と父親のように諭すデュバルの口ぶりが冷静で温かく、刺々しかったショーン・ペンに少しずつ成長の兆しが見えはじめる様が胸を打つ。かくも俳優陣が素晴らしい演技を見せる一方、ロケ地の生々しさも格別の臨場感を生んだ。危険エリアゆえにリアルなギャングの協力を得ながら製作を進めたというから、さすが『イージー・ライダー』のデニス・ホッパー監督、肝が座っている。
『ハスラー2』
製作年/1986年 監督/マーティン・スコセッシ 脚本/リチャード・プライス 出演/ポール・ニューマン、トム・クルーズ、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、ヘレン・シェイバー、ジョン・タトゥーロ、フォレスト・ウィテカー
師弟でありながら最高のライバルとなる!
映画史に名を刻んだ前作から25年後。初老の域に達したかつての凄腕ハスラーが、酒場でキラリと光る才能を持った若者を見つけ、残りの人生を賭けて彼を指導しようと決意する……。『レイジング・ブル』に惚れ込んだポール・ニューマンがスコセッシ監督に声をかけたことで始動したこの企画だが、続編としての方向性が定まるまでは試行錯誤の連続だったとか。その中でスコセッシがいちばんの核に据えたのは「名優ニューマンらしい映画であること」。だからこそ主人公は年老いても決して人生に屈しない。それどころか、新人の自由奔放なプレーを見て触発された結果、彼自身が再びハスラーとして返り咲こうと走りはじめるのだ。
かくも師弟でありながら最高のライバルにもなる二人の関係性が震えるほど素晴らしい。念願のアカデミー賞主演男優賞を受賞したニューマンの存在感も出色ながら、躍動感と大胆不敵さを兼ね備えたトム・クルーズの魅力がこのシリーズに新たな生命力を与えている。
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
製作年/2020年 製作総指揮・監督・脚本/フィリップ・ファラルドー 出演/マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブース、サーナ・カーズレイク
部下と上司、どちらの心情にも寄り添った良作!
舞台は90年代のニューヨーク。なんでも夢が叶いそうな、そのために全力で挑戦するのにふさわしいこの街で、作家志望のジョアンナは出版エージェンシーのアシスタントとして働きはじめる。彼女に与えられた役割は専属契約を結んでいる作家サリンジャー(『ライ麦畑でつかまえて』)宛のファンレターの処理や、シガニー・ウィーバー演じるボスにかかってきた電話への応対など。それらは小さな仕事ではあるが、持ち前の直感力と誠実さが実を結び、次第に重要な案件を任されるようになっていく……。
凛とした存在感のあるジョアンナを見ているだけでなんとも清々しい気持ちになる本作。彼女は媚びないし、卑屈にならないし、ボスにも言うべきことはちゃんと言う。そういった長所をボスが見ていないようで実はしっかり見抜いているからこそ、二人の信頼関係の歯車はうまく噛み合っているのだろう。原作はジョアンナ・ラコフの自叙伝。出版業界の日常を垣間見せつつ、部下と上司、どちらの心情にも丁寧に寄り添った、爽やかな良作である。
『アンストッパブル』(2010年)
製作年/2010年 製作・監督/トニー・スコット 脚本/マーク・ボンバック 出演/デンゼル・ワシントン、クリス・パイン、ロザリオ・ドーソン、イーサン・サプリー
出会ったばかりの新人とベテランが列車暴走に挑む!
ある朝、ふとした弾みで危険な化学薬品を積んだ貨物車両が無人のまま走り出し、制御不能の状態に。このままでは暴走した先で大惨事を引き起こしかねない。その悪夢を回避すべく、たまたま近くに居合わせた二人の作業員が駆けつけ、命がけのミッションに着手するーーー。
本作の主人公らは決してスーパーヒーロでもなければ、根っからの善人というわけでもない。一人は妻との間に問題が山積した新人。もう一人は早期退職を迫られる世代のベテラン。出会った時の互いの第一印象は最悪だった。それでも彼らは、問答無用で一つの緊急事態へと呑み込まれ、この試練を乗り越えようとする過程で切っても切れない絆と信頼感で結ばれていく。リアルな人物描写を大切にするトニー・スコットならではの手法で、実際の鉄道員への入念なリサーチから取り入れられたディテールも数多いとか。それらを巧みに血肉化したデンゼル&クリスの迫真の役作りが、暴走列車に負けず劣らず熱くスパークする人間ドラマを創出。観ながら自ずとコブシを強く握りしめてしまう骨太な一作である。
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