ヴィゴ・モーテンセンの出演映画5選!
『Safari Online』で配信してきたヴィゴ・モーテンセンの出演映画をまとめてご紹介!
『デイライト』
製作年/1996年 監督/ロブ・コーエン 出演/シルヴェスター・スタローン、ヴィゴ・モーテンセン
絶望的な状況下、いかに皆を鼓舞するのかが大事だ!
もしも、長~いトンネル内で交通事故に巻きこまれたら? そんな自分にも本当に起こりうる恐怖をまざまざと描いた本作。それだけに、いざという時のための脳内シミュレーションにはうってつけの作品だ。
危険な廃棄物を積んでいる大型運送車に暴走車が激突したことから、海底トンネル内で大爆発が起き、多くの人たちがトンネル内に取り残されてしまう。外部と連絡もとれず、空気もだんだんと薄くなり、誰もが疑心暗鬼状態へと陥るはめに。ヒット作『ワイルド・スピード』で知られるロブ・コーエン監督だけに、パニックシーンはド迫力。
本作で参考にしたいのが、災害下における人間の心理状況。パニックになると、自分の身を守ることしか考えられなくなることもある。それを肝に命じておきたい。そこで理想としておきたいのが、スタローン演じるタクシー運転手ラトゥーラの行動。トンネル内に残された人々に対して「希望はある。諦めちゃダメだ!」とあきらめずに鼓舞するのだ。子の姿を見て、生存者たちは人命救助に尽力するスタローンに協力するようになる。脱出途中では、老人ジョージを連れていくことができない、無念の決断を下すシーンもあるが、それを乗り越えて一致団結し、脱出を目指していく。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
製作年/2005年 監督/デヴィッド・クローネンバーグ 出演/ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス
知的かつ魅力的な語り口で“暴力”の本質に迫る!
そこは小さな田舎町。ダイナーを営むトムは家族思いの優しくて穏やかな男だ。ある日、営業中の店内で二人組が乱暴を働こうとしたところ、彼の体が咄嗟に反応し、瞬く間に撃退してしまう。一躍、街のヒーローとして大注目を集めるトム。しかし後日、彼のことを「ジョーイ」という全くの別名で呼ぶ怪しげな男が店を訪れ、封印されたはずの過去が徐々に明かされはじめる……。
“バイオレンス”と銘打っているからといって、決して暴力三昧というわけではない。いわば知的な探究を秘めたサスペンス。奇才クローネンバーグは、目の前で進行する暴力そのものをスリリングに描きつつ、さらにそれを俯瞰するような形でこの概念やシステムそのものを寓話的に描こうとする。強さとは何か。他者を力で屈させるとはどういうことか。暴力は何を生むのか。はたまた、男は過去のしがらみや連鎖を断ち切ることができるのか。太古の昔から人類が身を浸してきたであろう、生きていくため、生き残るための葛藤が克明に描かれた秀作だ。
『イースタン・プロミス』
製作年/2007年 監督/デビッド・クローネンバーグ 出演/ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル
完璧な覆面捜査官ぶりに脱帽!
潜入捜査もので、一風変わった作品がこちら。ヴィゴ・モーテンセン主演のクライムサスペンス。東欧系の10代の少女たちが薬漬けにされ、人身売買されているという衝撃的な実話をベースにしている。
舞台はロンドン。14歳の少女タチアナがドラッグストアで出産後、死亡。助産師のアンナは赤ん坊の家族を探すため、残された手帳を頼りにあるロシアンレストランを訪ねる。そこはロシアンマフィア“法の泥棒”のアジト。で、そこで運転手をしているのがヴィゴ演じるニコライだ。実はニコライはロシア連邦保安庁の潜入捜査官。死体にメモを貼り付けるなどして、組織の内情を報告していた。
一風変わっているというのは、潜入捜査官だと疑われる場面がないところ。それだけニコライの潜入ぶりがお見事というわけかも? では、ハラハラドキドキしないかといえば、そうではない。サウナでの全裸格闘シーンや、ロシアンマフィアの残虐な仕打ちは目を覆うばかり。特にボスの息子キリルは、どこでキレるのかわからない厄介な男。その男を手なずけるニコライは、やっぱり最強の覆面捜査官かも!?
『グリーンブック』
製作年/2018年 監督・脚本/ピーター・ファレリー 出演/ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリニ
真逆な2人のロードムービー!
実話の映画化と聞くと、すべて正確に再現されているかと思われるが、あくまでも映画は“作り物”。実際の出来事にインスパイアされ、かなり脚色された作品も多数。『グリーンブック』はその代表例だ。1960年代、人種差別の意識が色濃いアメリカ南部を、黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーがツアーで巡る物語。ピアニストのドライバー兼ボディガードとして雇われたのが、イタリア系のトニー。天才アーティストで裕福、知的で育ちの良さも感じさせるシャーリーに対し、トニーは気が短く、相手に遠慮しないタイプ。何もかも真逆な2人のロードムービーは、予想どおり彼らに育まれる絆にフォーカスしていく。
『グリーンブック』は基本、コメディ。とくに前半は、シャーリーとトニーのまったく噛み合わない会話やカルチャーギャップで笑わせていく。監督は『メリーに首ったけ』などのピーター・ファレリーなので、きわどいギャグも楽しさに変えるテクニックは抜群だ。しかしツアー先で、シャーリーが黒人であることから不当な扱いを受け、そこにトニーが不満を感じる中盤あたりから胸が痛む瞬間も相次ぎ、温かさと切なさが入り混じったクライマックスが導かれる。トニー役のヴィゴ・モーテンセン、シャーリー役のマハーシャラ・アリが、終盤にかけてドラマチックな演技の変化をみせ、感動を盛り上げる。トニーの息子が製作を手がけ、2人の生涯にわたった友情の事実が映画に刻まれた。
『13人の命』
製作年/2022年 製作・監督/ロン・ハワード 脚本/ウィリアム・ニコルソン 出演/ヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレル、ジョエル・エドガートン、トム・ベイトマン
奇跡の救出劇に心震える!
2018年6月、タイ北部、ミャンマーの国境に近いタムルアン洞窟に、地元のサッカーチームの少年12人とコーチ1人が遊びに出かけた。しかし急な大雨によって大量の水が侵入。13人は洞窟の奥に取り残されてしまう。そのニュースを聞いて世界中から救援チームが駆けつけ、決死の救出劇が開始された。
発生から17日間を克明に描く本作は、最終的な少年たちの運命を知っている人にとっても、改めて手に汗握る緊迫感と、事件の衝撃度を伝えてくれる。少年たちが身動きできなくなったのは、洞窟の入り口から2500mの地点。そこに到達するまで、プロのダイバーでも6時間以上はかかる。まず少年たちの発見、さらに彼らをどうやって洞窟の外に出すかというミッションは、前人未到の過酷な“賭け”でもあった……。
洞窟の奥は酸素濃度がどんどん低下し、食料のなかった少年たちが衰えていく様子などもリアルに再現。洞窟内には、一人がかろうじて通過できるかどうかという狭い場所もあり、岩も突き出ている。わずかな油断で命が危うくなるスリルと、ダイバーたちの必死の動きで、観ているこちらも息苦しくなる瞬間が何度も!
ダイバー役の俳優も訓練を積んで水中撮影に臨んだ。救出で重要な役割を果たしたのが、洞窟探索専門のイギリス人ダイバーたちで、彼らをヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレルら有名スターが名演。ちなみにファレルは、別の新作(『イニシェリン島の精霊』)で次回のアカデミー賞にも絡みそうで、俳優として久々のブレイクの時期を迎えた印象だ。そして知られざる事実として心に響くのは、洞窟の外で何とか水の侵入を抑えようとする地元の住民たちの姿。彼らの無償の努力も、クライマックスの怒涛の感動を後押しする。