Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2023.12.18

あの映画監督の得意技! Vol.9
リドリー・スコットのリアリズムと細部にまでこだわる映像美術!


『ナポレオン』(2023年)

新作『ナポレオン』(2023年)が日本でも劇場公開され、好評を博しているリドリー・スコット監督。イギリス出身のこの鬼才は今年86歳となったが、じつに精力的で、この10年に7本の作品を放ってきた。一本の映画に2~3年はかかると言われる、ハリウッドの映画人としては、間違いなく多作の部類に入る。
 

  

 

『最後の決闘裁判』(2021年)

近年のスコット作品を振り返ると目につくのもやはり歴史ドラマだ。18世紀末から19世紀初頭のフランス史を見つめた『ナポレオン』はもちろん、『最後の決闘裁判』(2021年)では中世フランスにスポットを当て、『エクソダス:神と王』(2014年)では古代エジプトの神話を解き明かした。
 

  

 

『ゲティ家の身代金』(2017年)

20世紀の実話に題材を得た『ゲティ家の身代金』(2017年)や『ハウス・オブ・グッチ』(2021年)も、現代に近いものの、史劇に入れてもよいだろう。スコットはかねてから歴史ドラマが好きであると公言しており、デビュー作『デュエリスト 決闘者』(1976年)や、アカデミー賞受賞作『グラディエーター』(2000年)、『キングダム・オブ・ヘブン』(2005年)など力作が並ぶ。

スコットが歴史劇を好む理由は、社会の価値観や倫理観にズレがあり、そこに生きる人間の善悪にもイビツさが宿るから。たとえば、『ナポレオン』では冒頭のマリー・アントワネットの処刑シーンに喝采する大衆の姿を見ることができるが、これにゾッとする観客は少なくないだろう。主人公ナポレオンにしても、戦功を上げてフランス革命後の国を統一した英雄という側面の一方で、支配欲の強い独裁者でもあった。そういう意味では、スコットは善玉や悪玉とは割り切ることのできないキャラクターに人間の本質を見ている、ともいえるだろう。
 

  

 

『ブレードランナー』(1982年)

レプリカントと呼ばれる人造人間を追う捜査官の奔走を描いた代表作『ブレードランナー』(1982年)にしても善悪の境界はあいまいで、主人公デッカードを正義漢と見ていた観客も、悪党であったはずのレプリカントの考えを次第に理解していく、そんなつくりに妙味があった。
 

  

 

『ワールド・オブ・ライズ』(2008年)

『ハンニバル』(2001年)で描かれる天才殺人鬼レクター博士の哲学も同様だ。非情な諜報の世界を描いた『ワールド・オブ・ライズ』(2008年)では、もはや誰が正しくて誰が正しくないのかわからない。
 

  

 

『ハウス・オブ・グッチ』(2021年)

女性キャラクターも例外ではない。『エイリアン』(1979年)や『テルマ&ルイーズ』(1991年)、『G.I.ジェーン』(1997年)などで強い女性を描いてきたスコットだが、それらのヒロインたちにも最初は簡単に感情移入できない人間的な複雑さがあった。『ハウス・オブ・グッチ』(2021年)のヒロイン、パトリツィアは、一般的には財産目当てで夫である〈グッチ〉の社長を殺した悪女と見られているが、映画ではその内面もきちんと描いていた。
 

  

 

『ブラックホーク・ダウン』(2001年)

リアリズムを重視した描写にもこだわりがあるのがスコット作品の特色。『ブラックホーク・ダウン』(2001年)で再現されたソマリアの戦場のリアリティに、圧倒された観客は少なくないだろう。麻薬王と捜査官の攻防を実話に基づいて描いた『アメリカン・ギャングスター』(2007年)の、エピソードの緻密な積み重ねも忘れ難い。また、『エクソダス:神と王』は旧約聖書の出エジプト記をモチーフにしたものだが、災厄の襲来や紅海が割れる奇跡を、科学で説明可能な出来事として描いている。ちなみにスコットは自称、無神論者だ。
 

  

 

『ブラック・レイン』(1989年)

最後に、何よりよく言われる映像派としての側面に触れておこう。スコット作品でしばし指摘されるのは、光と影の鮮烈なコントラスト。『デュエリスト 決闘者』の屋内での決闘シーンでは、暗い石壁の中に差し込む光が印象深い。『ブレードランナー』における、酸性雨に濡れ、極彩色のネオンに照らされた未来都市の風景はあまりに有名。大阪を舞台にした『ブラック・レイン』(1989年)にも、それに寄せた都市描写がある。また、スコットには映像美術に関して細部にいたるまでこだわる。たとえば、『ロビン・フッド』(2010年)では背景となる石壁の光沢にまで指示を出したとのこと。“映画で最も大切なのは、小さなディテール”と彼は言う。この姿勢だけでも、スコットが鬼才と呼ばれる理由がわかるのではないだろうか。

【Profile】リドリー・スコット/1937年11月30日生まれ、イギリス出身。1977年『デュエリスト 決闘者』で監督デビュー。待機作は『グラディエーター2(原題)』(2024年11月22日全米公開)など。
 

  

 

 
文=相馬学 text:Manabu Souma
photo by AFLO
〈FPM ミラノ〉があらゆるシーンに物語を作る。優雅な旅の傍らには美しく堅牢なトロリーを。
SPONSORED
2025.05.30

〈FPM ミラノ〉があらゆるシーンに物語を作る。
優雅な旅の傍らには美しく堅牢なトロリーを。

周囲とはひと味違ったラグジュアリーなトロリーを探している人に朗報。ミラノ発のラゲッジ&トラベルアクセサリーブランド〈FPM ミラノ〉がついに日本に本格上陸し、早くも大ブレイクの兆しだ。クラフトマンシップを感じる美しいデザインは、我々の旅に…

TAGS:   Urban Safari Fashion
〈レクサス〉で過ごすラグジュアリーな日常。走行性と居住性を兼ね備えた「LM」と「RZ」、ふたつのクルマ。
SPONSORED
2025.05.30

〈レクサス〉で過ごすラグジュアリーな日常。
走行性と居住性を兼ね備えた「LM」と「RZ」、ふたつのクルマ。

ファッションをひとつのブランドでコーディネートするのは、いまやごく普通のこと。であれば、複数台所有するクルマをひとつのブランドで統一するというのも、ライフスタイルを豊かにするのに役立ってくれそうだ。忙しい毎日を過ごすビジネスマンであれば、…

都会とターフを〈ヤーマン&ストゥービ〉で自在に往来。フェアウェイに向かう手元に機械式時計という大人の愉悦。
SPONSORED
2025.05.30

都会とターフを〈ヤーマン&ストゥービ〉で自在に往来。
フェアウェイに向かう手元に機械式時計という大人の愉悦。

機械式ゴルフウォッチという新しいカテゴリーを切り開いた、〈ヤーマン&ストゥービ〉。ゴルフにおける勝利の記憶を“記録”として刻み、タウンユースにおいてはクロノグラフにひけをとらない、世界特許を持つ機械式カウンター時計なので、都会とターフの両…

TAGS:   Urban Safari Watches
上品リッチなスニーカー〈デバイス 1〉から新作登場。オールブラックのスニーカーならオン・オフ問わずスタイリッシュに。
SPONSORED
2025.05.30

上品リッチなスニーカー〈デバイス 1〉から新作登場。
オールブラックのスニーカーならオン・オフ問わずスタイリッシュに。

“Affordable Chic -上質を着こなす日常-”をメインコンセプトに掲げる〈アウール〉からスピンアウトし、一昨年デビューしたスニーカーブランド〈デバイス 1〉。軽量かつ上品な佇まいは、ビジネスシーンはもちろんプライベートでも大い…

TAGS:   Urban Safari Fashion
まるでNYの街角に迷い込んだかのような一夜!〈ブローバ〉創業150周年を祝う記念イベントをシネスイッチ銀座で開催!
SPONSORED
2025.05.29

まるでNYの街角に迷い込んだかのような一夜!
〈ブローバ〉創業150周年を祝う記念イベントをシネスイッチ銀座で開催!

TAGS:   Watches
〈オニツカタイガー〉の“アルティ RS”シリーズでコンフォートな日々を!あらゆるシーンをシームレスに繋ぐラグスポシューズ“ティグトレイル”が誕生!
SPONSORED
2025.05.28

〈オニツカタイガー〉の“アルティ RS”シリーズでコンフォートな日々を!
あらゆるシーンをシームレスに繋ぐラグスポシューズ“ティグトレイル”が誕生!

TAGS:   Fashion
俳優・志尊 淳が〈グッチ〉の新作を着こなす!アイコニックなウエアを優雅に!
SPONSORED
2025.05.23

俳優・志尊 淳が〈グッチ〉の新作を着こなす!
アイコニックなウエアを優雅に!

イタリアを代表するラグジュアリーブランド、〈グッチ〉から夏の終わりを彩る新作コレクションが到着。クラシックながら、爽やかなムードが漂うプレフォールコレクションは、個性的にしてお洒落心をくすぐる、見どころ満載のラインナップ。そして今回、そん…

TAGS:   Fashion グッチ
〈サンローラン〉の個性的な1枚をまとう!夏旅で着たいセンシュアルなシャツ!
SPONSORED
2025.05.23

〈サンローラン〉の個性的な1枚をまとう!
夏旅で着たいセンシュアルなシャツ!

夏の大人の着こなしに、洗練された上質なシャツは欠かせない。そんなシャツを得意とするのが、フランスのラグジュアリーメゾン〈サンローラン〉。なかでも今シーズン目立つのが、夏のリゾートで映えるエレガントで個性的なアイテム。こんなシャツを身にまと…

俳優・磯村勇斗と〈ベル&ロス〉の最新作!手元に馴染む小ぶりBR-05!
SPONSORED
2025.05.23

俳優・磯村勇斗と〈ベル&ロス〉の最新作!
手元に馴染む小ぶりBR-05!

〈ベル&ロス〉のアーバンコレクション“BR-05”に、小ぶりな36㎜モデルが仲間入りを果たした。エレガントさと精悍さに加え、軽快さという新たな魅力をまとったラグスポウォッチ。その特筆すべき魅力を、俳優の磯村勇斗がいずれも輝きを放つふたつの…

TAGS:   Watches
大人の休日に似合う〈エルケクス〉のこだわりアイテム!夏のアメカジはカレッジスタイルで!
SPONSORED
2025.05.23

大人の休日に似合う〈エルケクス〉のこだわりアイテム!
夏のアメカジはカレッジスタイルで!

夏のアメカジはプリントTやポロシャツが頼り。昔から定番のアイテムだけど、仕様や素材にこだわってカレッジテイストを体現した〈エルケクス〉なら、どこか懐かしくも新鮮。さらに差をつけたいときは、重ね着テクが有効。これで学生とはひと味違う、“カレ…

TAGS:   Fashion
〈デンハム〉白澤社長が着こなす新作デニム!夏に着たい爽快テックデニムのセットアップ!
SPONSORED
2025.05.23

〈デンハム〉白澤社長が着こなす新作デニム!
夏に着たい爽快テックデニムのセットアップ!

夏にデニムは暑くてちょっと……と、敬遠してしまうひとも多いのでは!? そこで紹介したいのが、〈デンハム〉の“エアーテックデニム”。世界的デニム生地メーカー“カイハラデニム”開発のメッシュデニム生地を使用した、通気性抜群のデニムだ。「どんな…

TAGS:   Fashion Denim
着こなしを引き締める〈トム フォード アイウエア〉の新作!艶のあるサングラスが夏スタイルに効く!
SPONSORED
2025.05.23

着こなしを引き締める〈トム フォード アイウエア〉の新作!
艶のあるサングラスが夏スタイルに効く!

ミニマルな着こなしになりがちな夏こそ、小物は大事。特に顔まわりを演出するサングラスには妥協したくないはず。そこで、押さえたいのが〈トム フォード アイウエア〉の新作だ。計算しつくされた繊細でエレガントなフォルムが目元に色気を宿し、夏のシン…

TAGS:   Fashion
「それ、どこで買ったの?」と驚かれる!?この夏、人と差をつけるなら、〈ロンハーマン〉だけの特別なTシャツ!
SPONSORED
2025.05.19

「それ、どこで買ったの?」と驚かれる!?
この夏、人と差をつけるなら、〈ロンハーマン〉だけの特別なTシャツ!

日差しが強くなってきて、いよいよ待ちに待った夏が少しずつ肌で感じられるようになってきた。ということは、俄然欲しくなってくるのがTシャツだ。夏がやってきたら、恐らく毎日のように着ることになるアイテムといっても過言ではない。であれば、大人だっ…

TAGS:   Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ