『君の名前で僕を呼んで』
製作年/2017年 原作/アンドレ・アシマン 監督/ルカ・グァダニーノ 脚本/ジェームズ・アイボリー 出演/ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ
ブレイクを果たした作品!
イタリアの別荘で両親と過ごしている17歳の少年エリオ。ある日、考古学者である父の助手オリヴァーがアメリカから訪ねてきた。自信と知性を持つ彼に、エリオは惹かれ、それは恋心へと発展。オリヴァーもそれを受け入れて、ふたりは強い絆を育んでいく。やがてオリヴァーが別荘を去る日が訪れ、エリオは悲しみに暮れる。しかし、それはより過酷な現実を知るための第一歩に過ぎなかった。
『モーリス』の名匠ジェームズ・アイボリーによる脚本を、『ボーンズ アンド オール』でもシャラメと組むルカ・グァダニーノ監督が映画化。主人公エリオを演じたシャラメはアカデミー主演男優賞にノミネートされるとともに、大ブレイクを果たした。ティーンのピュアな恋心を確かな説得力とともに表現した演技は、まさに絶品。オリヴァーを演じたアーミー・ハマーとの息の合ったかけあいも光る。
『ビューティフル・ボーイ』
製作年/2018年 原作/デヴィッド・シェフ、ニック・シェフ 監督・脚本/フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン 脚本/ルーク・デイビス 出演/スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ、モーラ・ティアニー、エイミー・ライアン
ドラッグ中毒の青年役を熱演!
6つの大学に合格するほど成績優秀で、水球のチームで主力を務めるなどスポーツも万能。そんな青年ニックの前途は、ドラッグにハマッてしまったことで崩れ去る。音楽ライターの仕事をしている父デヴィッドは、息子を泥沼から救い出そうとする。1年以上、更生施設で過ごしたことで、ニックはクリーンなカラダになった。ところが、麻薬中毒である大学時代の友人と再会したことから、ニックは悪癖を甦らせてしまい……。
息子との葛藤の実体験に基づく、米国のジャーナリスト、デヴィッド・シェフのノンフィクションを映像化。シャラメはニック役に惚れ込み、まさに全身全霊を傾け、ドラッグ中毒による不安定な精神や、感情の激しい起伏、苦しみを演じ切る。父デヴィッドに対する複雑な思いの好演にも注目。タイトルとなったジョン・レノンの名曲は、その生前最後のインタビューをしたシェフの、息子への思いを仮託してもいる。
『キング』
製作年/2019年 製作・監督・脚本/デヴィッド・ミショッド 製作・脚本・出演/ジョエル・エドガートン 出演/ティモシー・シャラメ、ショーン・ハリス、リリー=ローズ・デップ、ロバート・パティンソン
成長するヘンリー5世を好演!
15世紀初頭、イングランド王の長男ハルは独裁的な父への反発から城を出て、気ままな放蕩生活をおくっていた。しかし王が病に倒れたことで城に戻り、父の没後はヘンリー5世としてイングランド王の座を継承する。時折しも、フランスとの百年戦争の真っただ中。ハルは最初こそ戦争には消極的だったが、フランス皇太子からの度重なる挑発を受け、決戦へと挑む……。
シェイクスピアの戯曲にも名高い中世イギリスの王ヘンリー5世の物語。このキングを、シャラメが演じるには線が細いのでは? と思われるかもしれないが、心配ご無用。若くして即位し、味方にも裏切られてしまうほどの脇の甘さを暴露。権力の頂点で孤独を募らせつつ、それでも一国の王として成長していく姿を鮮やかに演じてみせる。現代劇ではあまり見ることのない独特の短髪姿もレアで、ファンは必見!?
『DUNE/デューン 砂の惑星』
製作年/2021年 原作/フランク・ハーバート 監督・脚本/ドゥニ・ヴィルヌーブ 出演/ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン
知性と格闘術に優れた主人公を演じる!
舞台は宇宙帝国の統治下にある、砂漠の惑星デューン。皇帝の命により、希少スパイスの採掘を統率することになったアトレイデス公は、家族や家臣らとともにこの地にやってくる。しかし、これは罠であり、公は宿敵の男爵の攻撃を受けて命を落とした。公の息子ポールは復讐を誓い、母とともに砂漠へと逃走。砂漠の原住民フレメンとの出会いは、やがて彼の運命を大きく変えていく。
デヴィッド・リンチ監督の映画化でも知られるフランク・ハーバートのSF小説を、『ブレードランナー2049』(2017年)のドゥニ・ヴィルヌーヴが壮大なスケールで映像化。主人公ポールは若気がいたってしまう部分もあるが、剣術や格闘術の訓練を受けており、知性もある。そんな彼の砂漠での成長を、シャラメは背筋の張った存在感とともに熱演。父の仇との宿命の対決へと発展する続編『デューン 砂の惑星PART2』は2024年3月15日に日本公開予定。
『ボーンズ アンド オール』
製作年/2022年 原作/カミーユ・デアンジェリス 製作・監督/ルカ・グァダニーノ 脚本/デヴィッド・カイガニック 出演/ティモシー・シャラメ、テイラー・ラッセル、マイケル・スタールバーグ、アンドレ・ホランド
人食い青年の繊細な感情を表現!
人肉食の欲求に目覚め、それにとまどいつつも自身のルーツを探るため、生き別れた母の実家へと旅をする18歳の少女マレン。旅の途中で、彼女は何人かの“人食い”の同族と出会う。なかでも、意気投合したのがリーという青年。どこか陰のある彼とともに、マレンは普通の暮らしをしたいと願うようになる。リーもそれに応え、ふたりはカップルとして暮らしはじめるが……。
『君の名前で僕を呼んで』に続いて、ルカ・グァダニーノ監督と組んだホラーテイストの青春ラヴストーリー。人肉食というタブーに切り込みつつ、そんな嗜好ゆえに孤独や疎外を感じている若い男女のふれあいを描く。血まみれになれながら人肉を食らう“人食い”たちの描写は衝撃的だが、そんなキャラクターに繊細な感情を宿らせることができるのがシャラメの強み。同族の少女との恋を表現しながら、異形の者の悲哀を鮮烈に浮かび上がらせる。
Photo by AFLO