『ジョン・ウィック コンセクエンス』(2023年)
最新作『ジョン・ウィック コンセクエンス』も好評のキアヌ・リーヴスの魅力に迫るコラムの第2回。前回は彼のキャリアをたどりながら、ターニングポイントとなったアクションをメインに紹介した。『スピード』や『マトリックス』『ジョン・ウィック』と、キアヌの代表作はアクションがまず挙げられる。しかし、キアヌは役者であり、演じる道を選んだ者は、つねに新たな役を求めるもの。そんな彼の主演による、隠れた名作を掘り起こしていこう。
『マイ・プライベート・アイダホ』(1991年)
まずはキャリア初期の名作『マイ・プライベート・アイダホ』(1991年)。後にアカデミー賞ノミネート作品『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)やカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作『エレファント』(2003年)で名を上げたガス・ヴァン・サント監督と組み、故リバー・フェニックスと共演して生み出した本作は、男娼をして暮らす若者たちの日常を切り取った衝撃的だが切ない青春ドラマだ。キアヌは裕福な家を出て、ストリートで体を売る男娼を演じ、心の痛みや迷いを体現。シェイクスピア劇を下地にしたドラマではあるが、今を生きる若者の等身大の感情が投影され、見応えのあるドラマとなった。本作をキアヌのフェイバリット作品に挙げるファンは少なくない。
『リプレイスメント』(2000年)
『マトリックス』のヒットに続いて出演したスポーツ・ドラマ『リプレイスメント』(2000年)は、プロアメフト選手のスト騒動により、急きょメンバーとしてかき集められた落ちこぼれ選手たちの奮闘を描いたもの。寄せ集めチームのリーダーとなった男を演じるキアヌは、ここ一番に弱いメンタルの克服を体現し、熱いものを確かに感じさせた。スポ根コメディの隠れた逸品だ。
『コンスタンティン』(2005年)
『マトリックス』三部作の熱狂を経て、キアヌが次なるビッグプロジェクトとして選んだのが『コンスタンティン』(2005年)。DCコミックの原作に彼自身が熱烈に惚れ込み、映画化にこぎつけた。悪魔祓いを専門とする私立探偵が、魔界の巨大な陰謀に立ち向かっていくオカルト風ファンタジー。タバコの喫い過ぎで末期ガンに冒され、生前の悪行から地獄行きが確定している主人公の探偵を、キアヌはハードボイルド風に演じ、これまでにない枯れたキャラを表現した。ここでの彼は、ある意味、ダークヒーローだ。
ラヴストーリーも入れておきたい。『イルマーレ』(2006年)は同名韓国映画のハリウッドリメイクで、2004年の世界を生きる男性と2006年の女性の時を超えた手紙の交流を、ファンタジー風に描いている。キアヌは『スピード』以来12年ぶりにサンドラ・ブロックと再共演を果たし、息の合ったところを見せた。映像や音楽も美しく、人気スター競演を盛り立てる。
『ネオン・デーモン』(2016年)
近年は脇役としても光っているキアヌだが、なかでも『ネオン・デーモン』(2016年)はインパクトが強かった。『ドライヴ』(2011年)で知られるデンマークの鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンが手がけた本作はファッション業界の闇に飲み込まれていく新進モデルの狂気を、オカルト風に描いた問題作。キアヌはヒロインが滞在中しているモーテルの管理人という役どころだが、感じが悪く、ストーカーのようにも見える。出番はわずかで、物語を大きく動かすようなキャラではないが、ヒロインでなくても悪夢に見てしまいそうな、そんな男を怪演してみせた。
ほかにも、『ビルとテッドの大冒険』シリーズではバカキャラで大いに笑わせてくれるし、SF『地球が静止する日』(2008年)の知的な異星人役も印象深い。評価は微妙だったが、日本の時代劇の翻案『47 RONIN』(2013年)でサムライを演じたこともある。キアヌの多彩な“顔”に、ぜひふれて欲しい。(後編に続く)
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Photo by AFLO