【まとめ】アル・パチーノ出演映画10選
Safari Onlineで配信してきた記事の中から、アル・パチーノ出演映画をまとめてご紹介!
『セルピコ』
製作年/1973年 原作/ピーター・マーズ 監督/シドニー・ルメット 脚本/ウォルド・ソルト、ノーマン・ウェクスラー 共演/ジョン・ランドルフ、ジャック・キーホー、ビフ・マクガイア
孤高の警官を熱演!
主人公セルピコは、犯罪を取り締まり、市民を守る夢を抱いてNYの警官になったイタリア系移民の息子。配属された警察署は汚職が横行していた。賄賂を受け取ることを拒否し、同僚たちから堅物と疎まれ、セルピコは転属を願い出るが、新たな勤務地も収賄に染まり切っており、次の転属先も状況は変わらない。いらだつ彼は、警視総監や市長にまで訴えようとするが、上からの動きは鈍かった。そんな彼に、やがて危険が迫る……。
『ゴッドファーザー』のスターとなったパチーノが、再び自身のルーツであるイタリア系の米国市民にふんした社会派劇。ここで演じるのは善良な警察官で、彼は法を遵守しようと奮闘するも、腐ったシステムの犠牲となっていく。顔つきがどんどんギラギラしてくるパチーノの姿は、不条理への怒りを如実に伝える。監督のシドニー・ルメットとは後に『狼たちの午後』でも組み、パチーノはここでもギラついた存在感を発揮。
『狼たちの午後』
製作年/1975年 監督/シドニー・ルメット 出演/アル・パチーノ
人質になったら、まず犯人の人柄を見抜くべし!
思わぬところで人質になってしまったら?そんなときはパニックにならず、犯人がどんな人間なのかを冷静に観察すべし。そこが生き残るための糸口であると思わせてくれるのが『狼たちの午後』だ。アル・パチーノがほとんど行き当たりバッタリの銀行強盗を熱演したという、シドニー・ルメット監督の名作。強盗が早々に上手くいかなくなったので、犯人たちは人質を取って銀行に立てこもる。可笑しいのは、最初は怯えていた人質たちと犯人の間に、不思議な仲間意識すら芽生えてくること。
加害者と被害者に交流や共感が生まれるのは“ストックホルム症候群”と呼ばれる有名な現象だ。この映画では犯人が調子に乗って警官をヤジっているうちに、野次馬として集まってきた群集からも好かれはじめる。人質を取って立てこもった時点で凶悪犯認定されても文句は言えないが、犯人が根っからの悪人ではないこともある。いざ人質にされてしまったら、犯人の人柄を見極めることも、サバイブするための必須スキルかも!
『スカーフェイス』
製作年/1983年 監督/ブライアン・デ・パルマ 脚本/オリバーストーン 共演/ミシェル・ファイファー、F・マーレイ・エイブラハム、スティーブン・バウアー
狂犬のような姿に衝撃!
1980年、政治犯としてキューバを追われ、アメリカへやってきた青年トニー。米国市民として認められず、難民として生きることになった彼は、マイアミの裏社会に身を置き、持ち前の度胸のよさでのし上がっていく。ボリビアの麻薬王との取引をまとめ、マイアミに戻ってボスを抹殺。トニーはマイアミの暗黒街の頂点を極める。しかし、コカインに溺れていく彼に、破滅はヒタヒタと迫っていた……。
1980年代のパチーノの代表作を挙げるならば、文句なしにコレ。1932年の犯罪映画の古典『暗黒街の顔役』をベースにして、異国アメリカで成り上がったギャングの成功と破滅を描く。パチーノが演じた主人公トニーは、とにかくエネルギッシュで、よく喋るし、よく暴れる。敵とみなした相手への攻撃にためらいがない、やりたいことをやりまくる狂犬のような姿は強烈。監督のブライアン・デ・パルマとは、この後、ギャング映画『カリートの道』でも組んでいる。
『摩天楼を夢みて』
製作年/1992年 監督/ジェームズ・フォーリー 出演/アル・パチーノ、ジャック・レモン
あの手この手で繰り広げられる営業戦線、異常あり!?
ピューリッツァー賞受賞の戯曲を映画化した傑作ドラマ。土砂降りの中、不動産会社のセールスマンたちが「売り上げ1位の者にはクルマ、2位にはナイフセット、3位以下はクビ!」という過酷な要求を突きつけられ、夜通しの営業戦線に打って出るーーー。喋りの達人ゆえに彼らはいったんスイッチが入るともう止まらない。相手のセリフの語尾を待たずして次の会話を覆いかぶせる機関銃のようなトークの応酬は、人間ドラマとは思えないスリリングさに満ち、ただただ呆気にとられるばかり。
とりわけアル・パチーノ演じるトップセラーの、バーで全く違う話題の一人語りを重ねながら徐々に客をぬかるみに引き込んでいく魔術トークにはカリスマ性が光る。かと思えば、映画史に残る名優ジャック・レモンの醸し出す初老のセールスマンの悲哀と、転んでもただでは起きない執念も最高。いわゆる資本主義の闇を描いた作品ではあるが、そのいい面も悪い面も全部含めて、今なお営業マンの教科書的な作品として目されることもある一本だ。
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』
製作年/1992年 製作・監督/マーティン・ブレスト 脚本/ボー・ゴールドマン 共演/クリス・オドネル、ジェームズ・レブホーン、ガブリエル・アンフォー、フィリップ・シーモア・ホフマン
盲目の役で、ついにオスカーを獲得!
全寮制の名門ハイスクールに入学した苦学生チャーリーは、帰省の旅費を稼ぐために、盲目の退役軍人の世話を引き受ける。ところが、この軍人フランクは、とんでもないヒネクレ者で、無遠慮に悪態を突き、周囲から疎まれていた。金のために辛抱強く彼につきあうチャーリーは、しだいにフランクの孤独を知り、理解を深めて信頼関係を築いていく。やがてチャーリーが放校の瀬戸際に追い込まれたとき、フランクが行動を起こし……。
7度めのアカデミー賞ノミネートにして、ついに受賞を果たしたパチーノの代表作のひとつ。彼が演じるフランクは身体的なハンデを負った頑固者で、周囲の誰にも心を開こうとしないが、赤の他人である欲のない高校生のひたむきさにふれ、一度は諦めた人生を再び歩もうとする。パチーノは盲目を表現するうえで、瞳をまったく動かさない難行に挑戦。それとともに華麗なダンスを披露しているが、これは本作を象徴するロマンチックなシーンとなった。
『ヒート』
製作年/1995年 製作・監督・脚本/マイケル・マン 出演/アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ
大人なら、何事にも“プロ意識”を持って挑め!
ロバート・デ・ニーロ演じるギャングのボス、ニール。そしてアル・パチーノ演じるLA市警刑事のヴィンセント。ともに自分の仕事に過剰なまでのプライドを持った、プロ中のプロだ。そのうえ、名優同士がハイレベルの熱演を披露。絶対に譲れない男のプライドを表現したこの『ヒート』は、ハードな男の世界を体感させてくれる。
そんな男のプライドの中でも我らが参考にすべきは、 “プロ意識”の高さだ。強盗集団を率いるニールの場合、たとえば白昼、銀行へ押し入るシーンでは、その大胆かつ冷静な動きに犯罪者ながら“仕事人”としての完璧さが光る。それを象徴するのが、家具が一切置かれていない彼の自宅だ。この理由は、「30秒フラットで高飛びできるよう面倒な関わりを持つな」という言葉にある。要は、危険が押し迫ったときに身一つで逃げられるように。そして、大切な人がいたらその人まで巻き込まないように……っていう彼の哲学なわけ。犯罪者だということを除けば、その生業にストイックに向き合う姿勢やプロとしてのあり方は、男として学ぶべきところがある。
そしてヴィンセントもまた“仕事に憑かれた男”だ。仕事に没頭するとほかの事を忘れて行動してしまう性格。その代償として、家庭を失うという男の悲哀も突きつけられるのだ。この主人公2人を中心に『ヒート』に出てくる男たちに共通するのは、損得に関係なく、カラダの中から湧き出してくる“本能”が原動力になっているという点。実際には、まわりに迷惑をかけるので真似できないが、その本能のままに行動できる男らしい心意気だけは持っておきたい。
『フェイク』
製作年/1997年 監督/マイク・ニューウェル 出演/アル・パチーノ、ジョニー・デップ
疑われまくりで気を緩めることができない!
ジョニー・デップがFBIのオトリ捜査官ジョー・ピストーネを熱演した実録ドラマ。イタリア系マフィアの男レフティをアル・パチーノが演じており、演技派俳優同士のがっぷり四つに組んだ共演が楽しめる。
ジョーは宝石鑑定士ドニー・ブラスコに扮して、マフィア組織の末端にいる男レフティと接触することに。やがて、ふたりは家族同然の親密な関係となっていく。レフティに信頼されていくドニーは、しだいに本来の自分であるジョーの生活を見失っていく。そして、妻や子どもたちの待つ自宅にほとんど帰らなくなってしまう……。
バレるかも? と思わせる場面は、潜入捜査中に知人にばったり遭遇する場面。このピンチを、ジョーは「このホモ野郎、俺に触るな!」と殴り飛ばすことで乗り切る。また、マイアミのボスを客船に招くものの、警察の手入れが入る場面ではレフティはドニーが潜入捜査官ではないか? と詰め寄る。最大のピンチが訪れるが、そこも上手く切り抜けることに成功する。ヒヤヒヤする場面の連続で、潜入捜査ものの醍醐味が味わえる1本だ。
『エニイ・ギブン・サンデー』
製作年/1999年 原案/ジョン・ローガン、ダニエル・パイン 監督・脚本/オリバーストーン 共演/キャメロン・ディアス、デニス・クエイド、ジェームズ・ウッズ、ジェイミー・フォックス
激アツな説教シーンに感動!
マイアミを本拠にするプロ・アメフトチーム、シャークス。シーズンの不振が続き、ヘッドコーチのトニーも悩みが尽きない。そんなチームの救世主となったのが、怪我で欠場したベテラン選手に代わりクォーターバックを務めた無名の若手選手ウィリー。その活躍により、チームは息を吹き返したかに見えたが、ウィリーが天狗になってしまったことで、チームの輪が乱れだす。プレーオフ進出を懸けた大事な試合の前に、トニーは何を訴えるのか!?
パチーノの出演作は多くに大演説シーンがあるが、本作のクライマックス前のシーンほどアツい説教があるだろうか? とにかく、このスポ根ドラマではヒロイン、キャメロン・ディアスを含めて誰もが声を張り上げ、自分の主張をアピールする。そのさまは肉食獣の咆哮のよう。パチーノふんするトニーは、年下の彼らを説き伏せるだけの人生経験を積んできた。彼の3分の長いセリフだけで、見る価値あり。監督のオリバー・ストーンは、『スカーフェイス』の脚本家でもある。
人生を棒にふってでも会社の不正を暴く、それが大人だ!
『インサイダー』
製作年/1999年 監督/マイケル・マン 出演/ラッセル・クロウ、アル・パチーノ
会社の中にいると、自分の信条を曲げても、仕事に身を捧げなくてはならない局面がいくつもある。サラリーマンはつらい。けれども会社が健康被害の情報を隠蔽しているせいで、多くの人が命を落としているとしたら? そんなジレンマに立たされたタバコ会社の社員が、決死の想いで内部告発者=インサイダーに。そして彼の告発をテレビの電波に乗せようと戦ったテレビプロデューサーがいた!
ラッセル・クロウとアル・パチーノ、名優2人がガッツリと共演した『インサイダー』は、ただ大企業の悪辣なやり口を告発するだけでなく、報道をもみ消そうとする強大な圧力との闘いを描いている。経済界、政界を巻きこんで、ありとあらゆる方向から迫りくる妨害に、個人は太刀打ちできるのか?
ラッセル・クロウもパチーノも、男くささが魅力のスターだが、本作でのラッセルはどことなく挙動不審で弱々しい。それもそのはず。内部告発なんかしたら、下手したら自分の人生を潰されかねないとわかっているから。ビビリながらも、やるべきだと信じたことをやり通す。そんな庶民の本気に心を打たれる逸品だ。
『アイリッシュマン』
製作年/2019年 原作/チャールズ・ブラント 製作・監督/マーティン・スコセッシ 脚本/スティーブン・ザイリアン 共演/ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、レイ・ロマノ
オトコの悲哀を見事に演じた!
1950年代、しがないトラック運転手フランクはマフィアの仕事を引き受けたことで手柄を立て、全米トラック運転手協会の委員長ジミー・ホッファを紹介される。ホッファはマフィアと通じてはいたが、信じた相手を家族のように扱い、同業者の間で熱烈な支持を受けていた。フランクもそんな彼のカリスマ性に心を動かされるが、ホッファが逮捕されたことで状況が変わっていく。出所したホッファと、マフィアの狭間に立たされ、フランクがとった行動は!?
鬼才マーティン・スコセッシによる実録ドラマ。パチーノは実在したホッファを演じ、『ゴッドファーザーPART2』『ヒート』に続いて、盟友ロバート・デ・ニーロと共演。彼扮するフランクとの葛藤は、本作の大きな見どころ。実在したホッファの死の真相は明らかになっていないが、本作で描かれるパチーノの熱演を見ると、これが正しいのでは……と思えてくる。この後、パチーノは同じく実録モノの新作『ハウス・オブ・グッチ』にも出演するが、ここでもファミリーをまとめきれなかった男の悲哀を体現。
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