Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2022.12.24

あの映画監督の得意ワザ! Vol.4
マーティン・スコセッシの冷徹なリアリズム!

 

 

『アビエイター』(2004年)

アメリカで活躍する映画監督の中でも、マーティン・スコセッシほどフィルムメーカーの間で尊敬されている監督はいないのではないか。妥協を許さぬ姿勢を貫き、半世紀にわたって傑作を放ち続けている鬼才中の鬼才。アカデミー賞ノミネートの常連であることは、ご存知のとおり。 

 
 

 

『タクシー・ドライバー』(1976年)

スコセッシが世界的に名をとどろかせた出世作は、今やクラシックな名作として認識されている、1976年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『タクシー・ドライバー』。アメリカン・ニュー・シネマが盛り上がった時期からは少々遅れたが、社会の現実を厳しい視点で描いた同作は、まぎれもなくその流れを汲んでいた。事象をデフォルメせず、冷徹に描くのは、イタリアのネオレアリズモ作品に多大な影響を受けてきたスコセッシの最大の特徴。主人公であるタクシー運転手の狂気は、リアリズムに裏打ちされて鮮烈な印象を観客にあたえた。この持ち味は、キリストを主人公にした『最後の誘惑』(1988年)や、ダライ・ラマ14世の半生を描く『クンドゥン』(1997年)などの宗教的な作品でも損なわない。神話的なエピソードは排除され、あくまでひとりの人間のリアルな物語として構築されている。 
 

 

『レイジング・ブル』(1980年)

『タクシー・ドライバー』では、主人公の退屈な日常と対を成す熱情が、狂気として描かれているが、これは『アビエイター』(2004年)の激情的な主人公にも通じるものがある。そして“熱情”の後にやってくる退屈、すなわち“日常”は、スコセッシ作品ではしばし重要なモチーフとなる。『レイジング・ブル』(1980年)のボクサーが引退した後のしがない日々、『グッドフェローズ』(1990年)でギャングの世界から逃亡した主人公の諦念、『ディパーテッド』(2006年)で敵地に潜入する男たちの、非潜入時に感じるストレス、『アイリッシュマン』(2019年)における、マフィアや労働組合の下で汚れ仕事を引き受けてきた男の寂しい老後。彼らの“熱情”はときとしてアンチモラル的だが、退屈な“日常”よりマシなのではないか? そんな思考の境界線に立たせるスリルもスコセッシ作品の魅力だ。
 

 

『ラスト・ワルツ』(1978年)

スコセッシを語るうえで、ロックに向けられた愛情も見逃せない要素。ザ・バンドの解散ライブの模様を収めた『ラスト・ワルツ』(1978年)は、今やコンサート・フィルムの古典。論争を呼んだボブ・ディランの1960年代のバンドツアーを検証する『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』(2005年)や、ローリング・ストーンズのコンサート・ドキュメント『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』(2008年)、ジョージ・ハリスンの生涯をたどる『ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』(2011年)など、優れた音楽ドキュメンタリーを出かけてきた。 

 
 

 

『キング・オブ・コメディ』(1983年)

劇映画にしても『キング・オブ・コメディ』(1983年)や『ハスラー2』(1986年)、『グッドフェローズ』(1990年)、『カジノ』(1995年)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)などで、時代背景や場面、キャラクターの心情に適したロックナンバーを起用。それぞれの作品に併せて、トーンの合った曲をセレクトするDJ的なセンスが光る。
 

 

『ディパーテッド』(2006年)

長いキャリアを誇るスコセッシだけに、盟友と呼べるスタッフや俳優は枚挙にいとまがない。もっとも有名なのは、ロバート・デ・ニーロとのタッグだろう。ともに無名だった頃の『ミーン・ストリート』(1973年)を皮切りに、スコセッシは9作品で彼を俳優として起用し、いずれもが高評価を得ている。21世紀以降はレオナルド・ディカプリオとのコンビで傑作を連打。アカデミー賞受賞作『ディパーテッド』をはじめ、5作品を放った。ほか、撮影監督のミヒャエル・バルハウスや美術のダンテ・フェレッティら常連スタッフも多い。

スコセッシは2023年に新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン』を放つ。人種差別や利権が絡んだ1920年代の殺人ミステリーを描く本作は、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)でアカデミー賞にノミネートされたジェシー・プレモンスが主演を務め、デ・ニーロやディカプリオといった盟友も出演、カンヌ国際映画祭への出品も視野に入れているという。80歳となってなお、新たな境地に切りこんでいく鬼才から、ますます目が離せない。 

 
 

 

Martin Scorsese[マーティン・スコセッシ]
1942年生まれ、ニューヨーク出身。『ドアをノックするのは誰?』(1969年)で長編映画デビュー。
 

 

 
文=相馬学 text:Manabu Souma
photo by AFLO
Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタントエレガントな時間を、手元に宿す。
SPONSORED
2025.11.28

Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタント
エレガントな時間を、手元に宿す。

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!
SPONSORED
2025.12.01

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!
大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!

1950年にはじまった〈ゴールドウイン〉のヒストリー。その新作スキーウエアコレクションの名前は、創業地にちなんだ“オヤベ”だ。歴史の深みを感じさせ、エイジレスなスタンダードデザインでありながら、機能は最新鋭。素材はもちろん、ひとつひとつの…

TAGS:   Fashion
初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!
SPONSORED
2025.11.25

初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!
カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!

一流は一流を引き寄せるとは、よくいわれること。ロックアーティストHYDEがまとったのは“キング・オブ・ダイヤモンド”として名高い、世界最高峰のジュエリー&ウォッチブランド〈ハリー・ウィンストン〉。常に最高を求め続ける両者が出会うと、どんな…

TAGS:   Fashion Watches
〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!さりげに違い出しできる大人の冬アウター
SPONSORED
2025.11.25

〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!
さりげに違い出しできる大人の冬アウター

冬カジュアルの主役であるアウターは、さりげなく違いが出せる1着を選びたい。そこで注目すべきなのが、大人のための上質な冬アウターに定評のある〈タトラス〉。定番ベースのシンプルなデザインを基本としつつ、街ゆく人をハッとさせるさりげない“違い”…

TAGS:   Fashion
〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!大人の革小物はさりげなロゴ使いで!
SPONSORED
2025.11.25

〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!
大人の革小物はさりげなロゴ使いで!

普段、バッグや靴ほど目立たないが、意外とセンスを問われるのが財布などの革小物。大人ならシンプルながらも品があって、さりげない上質感のあるものが狙いめだ。となれば〈サンローラン〉の革小物を。小ぶりなアイコンロゴがピリッと効いた財布やカードケ…

TAGS:   Fashion
俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!
SPONSORED
2025.11.25

俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!
“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!

航空計器から着想を得た革新的なデザインが人気の〈ベル&ロス〉から、2本の限定モデルが登場した。情熱的な輝きを放つダイヤルの赤と闇夜にクールに浮かび上がる蓄光の緑。異なる魅力を宿す2本のパワーウォッチがファッションシーンでも注目を集める俳優…

TAGS:   Fashion Watches
大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!冬カジュアルに効く品格バッグ!
SPONSORED
2025.11.25

大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!
冬カジュアルに効く品格バッグ!

大人の冬カジュアルに欠かせない名脇役がバッグ。どんな着こなしにも似合う上質なバッグがあれば、気分よく外出できるというもの。そこでおすすめしたいのが、〈フルラ〉の新作として登場した“アーバン バックパック”。コートなら背負って、短丈ブルゾン…

TAGS:   Fashion
機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?
SPONSORED
2025.11.25

機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!
こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?

男のカジュアルウエアは、ワークやミリタリーをモチーフにしたタフで骨太なアイテムが定番。それは服だけでなく、足元も同じだ。とはいえ往年のワークブーツなどでは、履き心地やスペック的に現代の暮らしにフィットしない!? ならば、〈アシックス〉のワ…

TAGS:   Fashion
“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!“上質”を贈りたい 大人のギフト!
SPONSORED
2025.11.25

“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!
“上質”を贈りたい 大人のギフト!

クリスマスに忘年会、そしてニューイヤー……年末年始は、特別なギフトシーズン。頑張った自分へのご褒美に、大切な人に感謝を込めて、“とっておきの上質”を贈りたい。自分の身と心を一新させるようなワザありの逸品から、相手の顔が思わずほころぶ名品ま…

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。
SPONSORED
2025.11.18

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。
ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。

上質なレザーのしなやかな感触と使い勝手の良さで支持を集めている〈アニアリ〉のバッグ。ミニマルで洗練されたデザインは、装いを自然に洗練されたものへと導いてくれる。また、確かな日本の職人技に裏打ちされた使いやすさと安心感が、使うほどに深まる風…

TAGS:   Urban Safari Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ