人種問題を風刺した極上エンタメ作! 『ザ・ファイブ・ブラッズ』
スパイク・リーが、監督として何度めかの絶好調の時期に入っている。前作『ブラック・クランズマン』がアカデミー賞作品賞候補になり、自身も脚色賞を受賞。その勢いをキープしたかのように、今回も“横綱相撲”といっていいような力作を放ってきた。ベトナム戦争を題材にしながら、過去の映画にはない見どころを備えたのが、この『ザ・ファイブ・ブラッズ』だ。
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『ザ・ファイブ・ブラッズ』
胸アツなポイントは?
“黒人たちの波乱な歴史に胸が締めつけられる!”
タイトルの“ブラッズ”はベトナム帰還兵の間で使われた言葉で“仲間”という意味。つまり5人の物語なのだが、リーダー格の兵士が戦死し、生き残った4人がその慰霊と、戦地に残してきた貴重な“お宝”を見つけるため、数十年ぶりにベトナムへ向かう。
5人の仲間は全員、黒人。頑固な性格の初老の4人が奥地へと分け入る展開はちょっとした珍道中なのだが、“お宝”を巡る激しい攻防も描かれる。そこにリーダーを失った1971年のシーンが挿入。なんと2時間35分という長さだが、それでもまったく飽きさせることのない構成が、さすがスパイク・リー!
基本は仲間の絆を中心とした人間ドラマだが、思わず叫んでしまいそうな衝撃アクションが用意されていたりする。マーヴィン・ゲイをフィーチャーした音楽も映像と物語にぴったりハマる。
そしてなにより、強烈に胸に迫ってくるのが、実際の映像で紹介される、ベトナム戦争の実態や、その時代から今に至る黒人たちの切実な運命。現在、アメリカの事件を発端に、世界的に人種差別への抗議が上がっているので、これはあまりにもタイムリーな作品かも。
とはいっても、あくまでもエンタメ的な仕上がりで興奮と感動を届ける作りがベース。そこに解決しない社会の矛盾を訴えるメッセージを盛りこむという“サジ加減”が絶妙すぎる!
『ザ・ファイブ・ブラッズ』
監督・脚本/スパイク・リー 出演/デルロイ・リンドー、ジョナサン・メジャース、チャドウィック・ボーズマン 配信/ネットフリックス
2020年/アメリカ/155分
ネットフリックスで配信中。
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