映画というのは観るタイミングも重要。実際に起こったニュースによって、その映画を“観たくなる”人が増えることもある。イギリスのエリザベス女王が亡くなり、すでに公開が決まっていた『プリンセス・ダイアナ』は、そんな一本となりそうだ。
今年はダイアナ元皇太子妃がこの世を去ってから25年。あのパリでの交通事故を、今もありありと覚えている人は多いだろう。同乗者で、当時の恋人とされるエジプト人の富豪アルファイド氏も亡くなった。本作はそんな衝撃的で生々しいニュースからはじまるが、基本はダイアナ元妃の人生をたどるドキュメンタリー。
19歳でチャールズ皇太子と婚約し、ロイヤルウェディングに全世界の注目が集まった、まさにシンデレラストーリーを起点に、36歳で逝った、短くも、濃密な日々が時系列で美しく展開していく。ダイアナ元妃の記憶が脳裏にやきついている人には、思い出のプレイバックになるし、そうでない人にとっては、そのカリスマ的な魅力や怒涛の運命に驚きと感動を味わえるはず。
このドキュメンタリー全体から伝わるのは、いかに多くの人がダイアナ元妃を愛していたか、ということ。特にイギリス国民の結婚への熱狂、事故死の後の悲しみは、こうして映像でまとめられるとその大きさ、深さを実感する。そして髪型やファッション、そのライフスタイルも含め、カルチャーに与えた絶大な影響や、世界的スターたちとの交流、人道支援のボランティア、パパラッチとの関係など、ネタの宝庫で飽きさせない。
幼い息子たちと過ごすホームビデオの映像は貴重だし、エリザベス女王も何度か登場し、いろいろと確執があったとされるその関係に想像力が広がったりも……。いずれにしても英国王室の裏側や、人気の秘密を体感できるタイムリーなドキュメンタリー。今も生きていればダイアナ元妃は61歳。2人の王子、そして孫たちとの関係はどんなだっただろうかと、本作を観て胸が締めつけられる人も多いのでは?
『プリンセス・ダイアナ』9月30日公開
監督/エド・パーキンズ 配給/STAR CHANNEL MOVIES
2022年/イギリス/上映時間109分
©Kent Gavin
© 2022 DFD FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.