すでに一本の映画として完成され、長年愛されてきたものを、監督自身が作り直して再公開する。“ディレクターズ・カット”と呼ばれるこのスタイル。シルヴェスター・スタローンの分身ともいえる、超人気シリーズの中でもキーポイントとなるあの作品が、長い時を経て再生された。
1976年の第1作がアカデミー賞作品賞などセンセーショナルな話題を呼んだ『ロッキー』。その後、シリーズは6本製作され、ロッキーがサポート役に回り、主人公が若きボクサーに変わった『クリード』2作も加えると、シルヴェスター・スタローンは42年間もロッキー役を演じたことになる。その『クリード』に至るシリーズの中で、改めてキーポイントとなるのが、1985年の4作目『ロッキー4/炎の友情』ではないか。ロッキー、アポロ、ドラゴという、『クリード』までの壮大なドラマの中心となる3人が闘うからだ。同作で監督も務めたスタローンは当時の仕上がりに満足していなかったようで、自ら未公開シーンを42分も追加して、復活させた。
42分追加で、上映時間は91分→94分と3分増えただけ。ちょっと時代遅れに見えるシーンの大幅カットなどもあるが、基本の流れはオリジナルどおり。スタローンは微妙な修正で、全体のムードを現代の映画っぽくアレンジして、登場人物たちの感情にも没入しやすくした。“ソ連の殺人マシーン”として圧倒的な悪役だったドラゴの内なる葛藤も伝わってくるし、あるシークエンスはモノクロ変換によって映画的効果をアップさせる。こうした細かい調整のおかげで、アポロVSドラゴ、ロッキーVSドラゴという2つの見せ場では、ボクシング映画の醍醐味がマックスの域へと導かれた。デジタルリマスターによる映像は、ボクサーの汗の粒まで生々しく再現するし、サラウンドで体感させる音響も含め、スタローンの渾身の執念を、ぜひ劇場のスクリーンで受け止めてほしい!
『ロッキーvsドラゴ:ROCKT Ⅳ』8月19日公開
監督・脚本・出演/シルヴェスター・スタローン 出演/ドルフ・ラングレン、タリア・シャイア、カール・ウェザース、ブリジット・ニールセン、バート・ヤング
配給/カルチャヴィル、ガイエ
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