“引き際の美学”はクルマにだってある!?
ダラダラと続けるよりも、スパッと思い切ってやめる。ときには、そんな“引き際”のよさが価値を上げることもある。今回は惜しまれつつ生産終了となるこの1台に注目した。
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[アルファ ロメオ 4C]
ALFA ROMEO 4C
物事にははじまりがあって終わりがある。スポーツ選手の引退会見を目にすると、そんなことを考えさせられてしまう。と同時に“引き際”って大切なんだと実感する。それ次第でそれまでの印象が変わってしまうからだ。「朝青龍はもったいなかったなぁ」「イチローは最後までかっこよかった」なんて感じだろう。そんな“引き際”話だが、実は自動車でも当てはまる。ご存知のように大概のモデルは知らないうちに生産を終了している。新車発表やモデルチェンジのときはニュースリリースが出されるが、終わりに関しては大々的にアナウンスされることはない。どんなにヒットした過去があっても寂しい結末だ。たまに、“ファイナルエディション”としてディーラーで売られるが、それは在庫処分的要素大。オプションをつけて「はい、この低価格!」というパターンだ。もちろん、そのタイミングでクルマを買おうとしている人にとってはおいしい話ではあるが。
なぜ、そんな話をするかというと、〈アルファ ロメオ〉4C/4Cスパイダーが今年で生産を終了する。で、その“引き際”がかっこいい。オフィシャルサイトのタイトルは「さらば、4C」の文字が躍る。しかも、販売は4月30日に終わっているのだが、年末に“ファイナルエディション(仮称)”が発売されると記載してある。半年先の予告だ。クーペと屋根開きのスパイダー合わせて50台限定だからすでに唾がつけられているかもしれないが、この予告になぜかワクワクする。ミッドシップの2シータースポーツカーというマニアックなモデルなのでマーケットは狭められるが、話題性は十分だ。
〈アルファ ロメオ〉4Cは2014年5月に日本で発表された。だが、それ以前から本格的なミッドシップスポーツカーの誕生として海外のモーターショーで注目を集めていた。イタリアのスーパーカーをそのままコンパクトにしたようなスタイリングが、世界中のカーガイのハートをワシ掴みにする。しかもその中身は、フルカーボンのシェルからなる。金型を作り、カーボンを窯で焼き、アルミのサブフレームを組んでと、かなりコストと手間のかかる作業を重ねて一台一台を造る。なので、自前のファクトリーではなく、モデナの〈マセラティ〉用生産ラインを使っての組み立てだ。同じグループとはいえ、ブランドを超えた作法である。つまり、4Cはなにもかもが特別。そう考えると、“引き際”の演出も凝っていて当然なのかもしれない。
見た目インパクト大なクルマだけにそこに話がいってしまうが、4Cの走りは想像以上にいい。クルマが好きであればあるほど、走らせるのが楽しく感じられるように仕上がっている。
その要素を司るのがミッドシップというパッケージング。このクルマはエンジンを運転席のすぐ後ろに積んでいる。なので、リアトランクリッドを開くと、奥にエンジン、手前に深いトランクルームがある。つまり、前輪と後輪の間に乗員とエンジン&ギアボックスという重くかさばるモノを集中して配置しているのだ。ちなみに、通常エンジンが備わるフロントにはなにもない。ボンネットさえはめ殺しになっていて、開けることができないのだから徹底している。で、それがどういう効果を発揮するかというと、まるでゴーカートのように走る。本格的なゴーカートに乗ったことのある方なら想像できるだろうが、自分を中心にクルマがクルクル向きを変えるのだ。もちろん、前にエンジンを積んだフツーのクルマとは挙動が異なるから、それなりに慣れは必要。普段どおりにハンドルを切ると、思った以上にクルマが向きを変えるので気をつけよう。勢い余ってスピン、なんてことになりかねないかも……。
ただ、この強いクセを乗りこなす楽しさはなにものにも代えがたい。やっぱコレ!って感じ。クルマは乗りこなしてナンボ。存分に楽しめることを約束する。
01 エンジン
すでに実績ある信頼性の高いユニット
エンジンは伝統の排気量1750 ccの直4ターボで、それを運転席後部に横置きする。これはジュリエッタと同じユニットだけに信頼性は高い。組み合わされるギアボックスもそう。ジュリエッタと同じ6速乾式デュアルクラッチを搭載する。
02 軽量素材
この価格帯でフルカーボンシェル
キャビンを司るのはバスタブのような形に成形されたフルカーボン製シェル。コストも手間もかかるが軽量ボディには大いに役立つのは言わずもがな。2000万円オーバー級スーパーカーの構造を800万円台で提供するのだから本当にスゴい!
03 D.N.A.システム
“キャラ変”を自由自在に楽しめます!
“D.N.A.”と名づけられたドライブモード。“N”がノーマルで、“D”にするとキャラがグッと濃くなり、エキゾーストサウンドはレーシングカーレベル。“A”は悪天候仕様のオールウェザー。さらに“D”を長押しするとレースモードになる。
SPECIFICATIONS
アルファ ロメオ 4C
●全長×全幅×全高:3990×1870×1185㎜
●ホイールベース:2380㎜
●エンジン:1750cc直4 DOHCターボ
●最高出力:240ps/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2100-4000rpm
●トランスミッション:6速TCT(乾式デュアルクラッチ)
●駆動方式:RWD ●定員:2名
●税込み価格:865万円(*販売終了。2020年末、全国限定50台ファイナルエディション(仮称)発売予定)
●問い合わせ先:アルファコンタクト TEL:0120-779-159
雑誌『Safari』8月号 P172~173掲載
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