時計において、クルマに関するコンセプトを取り入れた、いわゆる“カーコラボ”のモデルは常に安定した人気を誇る王道のひとつ。多くのブランドがさまざまな趣向を凝らした意欲作を発表しており、トレンドの移ろいが激しい時計シーンのなかで常に花盛りとなっている。そんな激戦区で、ひときわ精彩を放つ新作が〈ショパール〉のミッレ ミリア クラシック クロノグラフ JX7(JXはジャッキー・イクスのこと)。このモデルの背景は稀代の高級マニュファクチュール、あるいはその舵を取る辣腕経営者と、歴史的偉業を成した天才レーサーの邂逅。ありきたりなダブルネームの類とは、訳が違う。
©Patrick Csajko
〈ショパール〉は1860年にスイス時計産業の中心地であるジュラ渓谷で創業した、由緒ある時計・宝飾ブランド。同社はジュエラーらしい資質を生かしたエレガントなドレス系コレクションを手がける一方、時計の機能性をよりピュアに打ち出したスポーツ系コレクションも充実。なかでも1988年から公式計時を担当する、イタリアの伝統的なクラシックカーレース『ミッレ ミリア』の名を冠したコレクションは歯車やギアといった、スケールこそ違うが時計とクルマに通底するメカニズムの魅力がスタイリッシュに結実し、それぞれの愛好家を惹きつけるフラッグシップとなっている。その最新作、“クラシック クロノグラフ JX7”は、1989年から同社の共同社長、カール-フリードリッヒ・ショイフレとタッグを組んでミッレ・ミリアに参戦し、以来このチームを12回以上も完走に導いたレーサー、ジャッキー・イクスへの親愛とリスペクトを謳った特別なシグネチャーモデル。2003年から継続的にリリースされており、今作で7番目のエディションとなる。
ジャッキー・イクスはフォーミュラ1、ル・マン24時間耐久レース、パリ・ダカールラリーなど数々の世界的なモータースポーツの祭典で輝かしい戦績を残してきたレジェンド。なかでも1960〜‘80年代にかけて参戦したル・マン24時間耐久レースでは6度の優勝を飾り、“ル・マンのキング”の異名をとった。このモデルは彼の意見をフィードバックし、美しくも実用的なクロノグラフに仕上げられている。
外観で真っ先に目を引くのは艶やかなミッドナイトブルーの文字盤。これは1969年に世界で初めてフルフェイスのヘルメットを着用してレースに臨んだイクスが30年以上にわたって愛用したベル社製のヘルメットのカラーを再現したもの。このヘルメットはバイザーに守られたふたつのウィンドウをホワイトのラインで縁取った独特のデザインからOwl(フクロウ)と呼ばれ、やがて彼のアイコンに。サファイアクリスタル製のケースバックにはさらに、そのグラフィックがあしらわれている。
世界限定250本。ケース径40.50㎜、自動巻き、SSケース&ラバーストラップ、50m防水。152万9000円(ショパール ジャパン プレス)
美麗なダイヤルは、“グラスボックス・クリスタル”で保護される。グラスボックス・クリスタルは1930〜‘60年代に広く用いられた立体的な意匠の風防で、文字盤に奥行き感と光の反射による多彩な表情が宿り、視認性を重視したストイックなレイアウトに美観のカギとなるメリハリをもたらす。4時位置と5時位置の間に配されたデイト表示の数字はイクスの功績、ル・マン24時間耐久レースでの6度の優勝にちなみ“6”と“24”がレッドカラーで強調され、ダイヤルの外周にはクロノグラフ機能と併用することで乗り物の時速などを計測できるタキメータースケールを配置。1960年代のダンロップレーシングタイヤのトレッドパターンを再現したラバーストラップや、リサイクル素材を80%以上使用して製造される独自のスティール合金、ルーセントスティール™製のシンプルかつ機能的なラウンドケースと相まってレーシング・クロノグラフならではの凛々しさが生まれ、そこに、ジュエラーらしい優美さも加わる。
搭載される自動巻き式のクロノグラフ・ムーブメントは精度規格の世界的な権威、COSC(スイス公認クロノメーター検定協会)の基準に準拠。圧倒的高精度がこのモデルの唯一無二のエレガンスを支え、その魅力は、36年間にわたる〈ショパール〉とジャッキー・イクスの絆、時計とモータースポーツの世界をより強固に紐づけたプロフェッショナルたちの“情熱”の結晶と言える。
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