“Q4 e-tron”投入でいよいよ本格化。
電気自動車の普及に挑む〈アウディ〉の戦略とは?
今年1月の年頭記者発表会にて、アウディ ジャパンは日本における電動化戦略を発表した。さらに当日には、100%電動のプレミアムコンパクトSUV“Q4 e-tron(イートロン)”の投入も発表。BEV(=バッテリーで走る電気自動車)のさらなる普及に向けて着実に駒を進めているように見える。そんな〈アウディ〉が掲げる今後の電動化戦略とは一体どんなものか? そこには困難な課題に挑戦する並々ならぬ決意があった。
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No.1プレミアムBEVブランドの確立を目指す。
1月の記者発表会では、アウディ ジャパン ブランドディレクターであるマティアス・シェーパース氏が登壇。今後の戦略について説明を行った
販売開始後12時間もたたないうちに、予定販売台数50台が完売。これは、年頭の記者会見同日に発表された、オンライン限定先着販売モデル〈アウディ〉Q4 Sportback e-tron 1st editionのこと。アウディ ジャパンは「これは〈アウディ〉の電気自動車e-tronに対する、お客様の関心の高さを示している」としているが、多くの人が選べる価格、サイズ、先進の性能面でも注目なのは事実。ただ同社によると、かつてない自動車業界の変革期の中にあって、電気自動車普及のために取り組まなくてはならない課題も多いという。
ちなみに2021年の日本における〈アウディ〉登録台数は2万2535台。Q3、A3主体に奮闘するものの、例の世界的な半導体不足の問題がデリバリーに影響。前年比101%と微増にとどまった。しかしながら、電動スポーツカーの可能性を広げたRS e-tron GTにおいては、2022年の割り当て分はすでに完売。電気自動車のジャンルでも強みを発揮している。とはいえ、これまで〈アウディ〉は、100%電動のラグジュアリーSUV“e-tron”を皮切りに、ラグジュアリー電動グランツーリスモ“e-tron GT”および“RS e-tron GT”をすでに市場に投入しているが、それでも2021年の電気自動車販売台数は全体比で1.5%。その数字を大きく伸ばしたいのが現状だ。これに対しアウディ ジャパンは、2024年までに“Q4 e-tron”を含むBEV15モデル以上を導入することを発表。BEV販売比率も2022年中には全体の7%に。2025年にはBEV比率35%、1万台以上を目指す。No.1プレミアムBEVブランドの地位を確立させようとするのが狙いだ。
一方で〈アウディ〉はただ単に販売台数を増やせばいいとは考えてはいない。今回発表された脱炭素社会を見据えたロードマップで掲げたのは、2030年までに持続可能性、社会的責任、技術革新におけるリーダーになること。そのために約5兆円規模の新技術への投資を行うという。つまり、よりよい未来を創造しつつ社会的な責任も果たすということ。CO2を減らすという難題に〈アウディ〉はすでに20年前から取り組んできているが、工場をカーボンニュートラルにする取り組みもそのひとつ。実は自動車のトータルライフサイクルの中で、生産時に排出されるCO2は約2割。まずはその2割をコントロールしようというわけだ。同時に、最後の内燃エンジン搭載モデルを2025年に生産後、2033年には一部の地域を除き、内燃エンジンの生産を停止。2026年以降に新車として発売されるクルマはすべて電気自動車になるという大きなメッセージを発信している。
だが、いくら魅力的な新車を投入しCO2削減を進めても、ユーザーが電気自動車の利便性を感じないと普及は進まない。その中で一番の懸念は、充電の問題ではないだろうか? もちろん今、全国の至るところで充電拠点が増加中だが、マンション住まいなど、家での充電が現実的じゃない人も多いだろう。そこで急速充電器の設置拡大が重要になってくる。これに対してアウディ ジャパンは、現在充電設備を持つディーラーに加えて、2022年3月から急速充電できる全国の拠点を54に増やす。たとえばe-tron GTの場合、150kWの急速充電を使うとわずか30分で走行距離250㎞分以上、約7分程度で走行距離100㎞分の充電が可能となるのだから、ずいぶん不安が解消されることになる。
また、1月1日に発足したフォルクスワーゲン グループ ジャパン(フォルクスワーゲン、アウディ、ランボルギーニ、ベントレー)の力をひとつに合わせて、今後は各ブランドの充電設備を共有化していくことも発表。さらに全国のホテルなどとパートナーシップを結び、メーカーを問わず、すべてのEVユーザーに向けてお出かけ先での充電も可能にすることも進めていくというから心強い。もちろんこの秋以降発売予定のQ4 e-tronもそのような恩恵に浴することで、いっそう電気自動車が身近に感じられるだろう。そこにはきっと豊かな未来が待っている。
カーボンニュートラルな工場が送り出す
〈アウディ〉初の電動プレミアムコンパクトSUV。
今後のe-tron戦略において非常に重要なモデルと位置づけられる、〈アウディ〉の電気自動車第3弾Audi Q4 e-tronとQ4 Sportbacke-tron。エンジン搭載を考えない電気自動車専用プラットフォームMEBを採用し、ショートオーバーハング、ロングホイールベースを実現。上位セグメントに匹敵する快適で広い室内空間を生み出した。普通充電は最大8kWで125kWの急速充電(CHAdeMO規格)に対応。一充電走行距離は516㎞(欧州参考値)と、実用性も高い。センタークラスターが運転席側に向けられたコクピット。10.25インチのバーチャルコクピットと〈アウディ〉最大となる11.6インチのMMIタッチパネルを採用。ヘッドアップディスプレイも装備している
●全長×全幅:4590×1870㎜
●モーター最高出力:150kW
●モーター最大トルク:310Nm
●バッテリー容量:82kWh
●駆動方式:後輪駆動
●車両本体価格: Q4 40 e-tron 599万円~、Q4 Sportback 40 e-tron advanced 688万円~
※写真、車両情報は欧州仕様車
●アウディ コミュニケーションセンター
TEL:0120-598-106
URL:www.audi.co.jp
『Urban Safari』Vol.26 P38掲載