PROFILE
1980年、米・カリフォルニア州生まれ。1991年に映画デビューし、'99年の『遠い空の向こうに』や『ドニー・ダーコ』で注目を集める。2005年には、『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー助演男優賞にノミネート。以降、『ゾディアック』『マイ・ブラザー』『ラブ&ドラッグ』『ミッション:8ミニッツ』『プリズナーズ』『複製された男』『サウスポー』『ライフ』などに出演し、演技派としての地位を確立していく。近年は『スパイダーマン』シリーズの悪役ミステリオとしても人気を獲得した。
最近では、あの愛おしきヒーロー、スパイダーマンを厄介な状況に追いこんだ男として知られているかもしれない。映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』に登場するミステリオことクエンティン・ベックは優秀な技術者でありながら、過激な思考も持ち合わせた危険なヴィラン。その複雑さ、大胆さをジェイク・ギレンホールが巧みに演じたことで、ミステリオはスパイダーマンらが活躍する一連の映画シリーズ、マーベル・シネマティック・ユニバースの要注目キャラクターになった。ギレンホール自身も巨大シリーズへの参加を心から楽しんだようで、熱烈なファンの声援に今も笑顔で応じ続けている。
大作シリーズの一員として活躍する姿がこれ以上ないほどしっくりくるといえばしっくりくるし、ちょっとした驚きにも感じられる。そんな印象があるのは、彼の柔軟なキャリアによるのかもしれない。映画監督の父、脚本家の母、女優の姉のいる芸能一家に生まれ育ったギレンホールのフィルモグラフィは当初から華やか。と同時に、挑戦心あふれるものでもあった。
1991年の映画『シティ・スリッカーズ』で、名優ビリー・クリスタルの息子役を演じて俳優デビュー。10代にして主演を務めた『遠い空の向こうに』は爽やかな感動ドラマで、心に残る名作映画として長く愛されるものになった。一方、その2年後に公開された『ドニー・ダーコ』はかなりの異色作で、ギレンホールは不安定な男子高校生ドニー・ダーコをダークに熱演。難解なストーリーと斬新な映像世界が話題となり、カルト作として今も支持され続けている。
ちなみに、姉のマギー・ギレンホールも、この映画にドニー・ダーコの姉役で出演。姉も弟同様の才人で、本年度の各映画賞を席巻している『ロスト・ドーター』で長編監督デビューを果たしたばかりだ。昨年のヴェネチア映画祭では、『ロスト・ドーター』を初披露するマギーの応援にジェイクが駆けつける一幕も。才能あふれる仲よし姉弟として映画ファンを笑顔にさせている。
『デイ・アフター・トゥモロー』のようなディザスター超大作で主演を張ったかと思えば、翌年の『ブロークバック・マウンテン』では同性愛者のカウボーイという難役に挑戦したり。風変わりで過激な描写が目を引く戦争映画『ジャーヘッド』に嬉々として出演したかと思えば、ディズニー映画『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』の王子と化したり。20代でもやはり振れ幅の広さ、バランスのよさが目立ったが、30代に突入してからはプロデューサーとしても頭角を現すように。
パトロール警官たちの日常をリアルに描いた『エンド・オブ・ウォッチ』を皮切りに、不気味なパパラッチが主人公の『ナイトクローラー』、ボストンマラソンの爆弾テロ事件を題材にした『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』などを製作し、主演も兼任。デンマーク発のユニークなサスペンス映画『THE GUILTY/ギルティ』が話題になった際は、自身の製作会社でいち早くリメイク権を獲得するフットワークの軽さも見せた。完成した作品は昨年ネットフリックスで配信された。
また、振れ幅の広さという点でいえば、ギレンホールはプロデューサー業を本格化させるのに前後し、舞台にも精力的に出演。ストレートプレイのみならずミュージカルにも挑戦し、ブロードウェイ公演の『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』では歌声を披露して話題となった。2019年の『シー・ウォール/ライフ』ではトニー賞演劇主演男優賞の候補に。舞台人としても大きな注目を集めている。
そんな彼の出演最新作は、『トランスフォーマー』シリーズのヒットメイカー、マイケル・ベイと組んだ『アンビュランス』だ。コロナ禍で撮影された本作の舞台は、現代のロサンゼルス。帰還兵の弟を誘って銀行強盗に乗り出すも、不測の事態に悩まされる男ダニーを演じている。
「 ダニーは興味深い人物で、脚本を読み進めるうちにとても好きになった。“感情移入できるだろうか?”とも思ったけどね。観客が誰か登場人物に感情移入する中、少し怖がらせるようなキャラクターを演じるのは面白いものだよ」
ギレンホールの言葉どおり、ダニーは複雑で、一筋縄ではいかない人物のよう。強盗に失敗し、警察に包囲されたダニーと弟は、現場に駆けつけた救急車を奪って逃走せざるを得なくなる。しかも、車内には瀕死の警官と救命士が。マイケル・ベイ映画らしいカーアクションも満載で、アドレナリン全開の展開が待っている。もちろん、ここで見られるジェイク・ギレンホールは“大作映画の顔”のほう。となると、次に来る彼は……? いずれにせよ、これから先もずっと楽しませてくれることは間違いなさそうだ。
退役軍人のウィルは難病の妻の治療費のため、犯罪のプロである兄ダニー(ギレンホール)が企てた銀行強盗計画に加担。しかし、ダニーとウィルは想定外の事態の末警察に包囲され、現場に駆けつけた救急車を奪って逃走せざるを得なくなる。しかも、車内には瀕死の警官と救命士が……。2005年のデンマーク映画『25ミニッツ』を、マイケル・ベイ監督&ジェイク・ギレンホール主演でリメイク。●3月25日より、全国ロードショー
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Through conversations with Michael Bay,
we wanted to create a relationship
that felt like a real brother.
マイケル・ベイ(監督)との会話を通して、
本物の兄弟のような関係性を築きたいと思った。
ジェイク・ギレンホール
『Urban Safari』Vol.26 P8~9掲載
photo by Dan MacMedan / Contour by Getty Images text : Hikaru Watanabe