『Safari』が会いたかった人物に単独インタビュー!
藤原ヒロシが語る〈MONCLER × FRGMT〉! “クリエイティブ”、“熱狂”、“今”そして“これから”
〈モンクレール〉と藤原ヒロシ率いる〈フラグメント デザイン〉による〈モンクレール × フラグメント(MONCLER × FRGMT)〉の最新コレクションが登場。テーマは“Rise Above the Chaos”。2018年より続く両者の視線は、日本、そして山々へと向かった。今回の注目は、“原点への立ち返り”だ。スカジャンやオンブレチェック柄など、Safari世代に刺さるアイテムが並び、“藤原ヒロシ”に熱狂していたあの頃が蘇る。長年にわたり進化を続けてきた両者のコラボレーション。その新作に込めた思い、そして藤原ヒロシ氏が今思う様々な出来事について語ってもらった。
[モンクレール フラグメント]

藤原ヒロシ氏を待つまでの間は、誰もが気もそぞろで空気もピリつく。1990年代を知る人なら、きっとこの緊張感は理解できるだろう。そんな中スッと登場した藤原氏は、想像していた以上に自然体だった。肩肘張らない“藤原ヒロシ”の姿に、多くの人を魅了してきたカリスマならではのオーラを感じ取った。ストリート全盛の熱狂を巻き起こした仕掛け人は、新しく手掛けた〈モンクレール × フラグメント〉に、なにを思う。
ーー今回のコラボレーションでは、“原点回帰”というキーワードが打ち出されています。2018年から続いてきた〈モンクレール ジーニアス〉の中で、改めて原点に戻ることになったきっかけはなんだったのでしょうか?
藤原ヒロシ(以後藤原) 僕の中では、特に“原点回帰”ということは考えてなかったです。いつも一緒にやっているチームと話しながら、先方からのリクエストに対して、僕なりに作りたいものを落とし込んでいく感じでした。
――今回のアイテムで、特に気に入っているものはありますか?
藤原 スカジャンは好きですね。2018年の最初の頃に作ったものも、今でもずっと着ています。生地がしっかりしているし、サイズ感もいい。今回も作れてよかったなと思います。

リバーシブル〝YUGO /ユーゴ〞50万500円(モンクレール × フラグメント/モンクレール ジャパン)
――Tシャツに描かれた愛らしい犬のイラストや初のキッズラインも珍しくて気になります。
藤原 そうですね。イラストは〈モンクレール〉側も喜んでくれました。キッズもやってみたいということで、上手く落とし込めるんだったらやりましょうという感じでした。
――両者のコラボにおいて、自分が作りたいものが最終的に商品化されないこともありますか?
藤原 ありますよ、よくあります。サンプルまで作ったのに、気がついたらオーダーがついていなくて、ドロップされていたりします。僕が「すごくいいのができた」と思ったものが商品化されないってことはよくあって、でも、逆にそれが面白いなと思っているんです。これはほかのブランドの話ですが、以前、数あるサンプルから自分がいいと思うものを選んで撮影をするという企画があったんです。サンプルの中にすごくいいシャツがあって。それを着て撮影をして、雑誌にもメインで掲載されたのですが、いざとなったらその商品自体がドロップになっていて販売されませんでした(笑)。
――幻の商品になったと。
藤原 そうですね。でも、そういうことがあってもいいと思うんです。人と違うものを選ぶという魅力があるし、全部が思いどおりにいかないほうが面白いこともあります。
――藤原さんにとって、コラボレーションの面白さとはなんでしょう?
藤原 先方の意見をしっかり取り入れることですね。向こうにあるものに、僕が味つけをしていく。それが面白い。
リバーシブル“RYUHA /リュウハ”37万1800円(モンクレール × フラグメント/モンクレール ジャパン)
――ご自身のアイデアは、どこから生まれるのでしょうか?
藤原 今まで自分が経験したり、見たり、聞いたりしたことからじゃないですかね。でも今って“新しいもの”って、あんまりないですよね。世の中にまったく斬新で新しいものって、実はもうなにひとつないんじゃないですかね。
“JITSUYO/ジツヨウ”26万9500円(モンクレール × フラグメント/モンクレール ジャパン)
――ファッションはまさにそうで、ある種の繰り返しともいえますよね。
藤原 そうですね。昔は一度ブームになって、終わったら忘れられていたと思うんですが、今はネットなどに残ってしまうからなにも消えない。全部ずっとどこかに残っている。だから、昔のようにトレンドみたいなものも、あまりない気がします。
“TRAILGRIP WALLABEE GTX/トレイルグリップ ワラビー ジーティーエックス” 13万5300円(モンクレール × フラグメント/モンクレール ジャパン)

――藤原さんは、日本のファッショントレンドを作ってきた存在といわれます。
藤原 いや、どうなんでしょう。僕自身がトレンドじゃない格好をしているので(笑)。(この日は、白Tシャツにネイビーのカーディガンという非常にベーシックかつ品のあるカジュアルだった)
――意識的にトレンドを外している?
藤原 わざとではないですけどね。単に自分が着れるもの、そのときに着たいものを作って着ているというだけです。新しいものを作りだそうとも、特に思っていない。好きなものは、だいたい決まっています。
――今のファッションには、どこに興味を感じますか?
藤原 今は、ひとつのトレンドをみんなで追いかける、という感じではなくなっていますよね。世の中にはいろんなファッションがあって、みんな自由に着ていていいなと思います。
――’90年代の裏原宿のような、みんながひとつのものに熱狂する状況とはまるで違います。
藤原 昔は流行りものが一気に広がった。ただ、今は広がってもその数自体が少ないですよね。でも実は、裏原の時代だって、そんなに大勢いたわけじゃないですよ。ひとつのものを大量に作っていたわけではないですから。だからこそよかった。今はそれを「もっとこうすれば100倍売れるはず」と考えてしまう。それが時代に合ってないんじゃないかって思いますね。
――ブランド側が市場を大きくしようとしすぎている、と?
藤原 僕は「10枚作って10枚売れた。それでいい」という考え方でいいと思う。でも、多くのブランドは「1000枚も1万枚も売れるものを作ろう」と考える。その考えは、僕らとは違う。僕は淡々と、数字を見ないで、作りたいものを作っていきたいです。数字を見るのは別の人がやればいいので。
――’90年代の“熱狂”は、今の時代にも起こり得ると思いますか?
藤原 どうなんでしょう。昔みたいな大きな熱狂は起こりにくいかもしれない。今は個人プレーというか、大きな塊になりにくいような気がします。でも、“熱”は作れると思いますよ。僕らもあの頃は、原宿で朝までみんなで話したり、なにかを作ったり、それをそのまま店に持っていったりしていましたから。それがすごく楽しかった。今でも雑誌の仕事なんかで、夜中までみんなで企画を考え、朝4時まで撮影したりすることがあります。僕はそういうのがすごく好きなんです。なにかを作るために、5〜6人が集まる。少人数かもしれないけど、それだけでも熱は生まれると思う。
――若い世代にそういう熱狂の場を作ってあげたいと思いますか?
藤原 それはまったく思わないですね。みんなそれぞれ自分の好きなことを掘ればいいと思いますし、そういう熱とか、本当に才能がある人たちは、自ずと出てくると思うんですよ。むしろ僕らのほうが、そういう人たちにお伺いを立てるくらいでいい。僕自身も、若い頃に誰かに育ててもらったというより、憧れた人を見て、自分で工夫して仕事をしてきたので。大きな話でいうなら、「僕たちが地球をきれいにしないと、次に生まれてくる子供たちが可哀想」というような考え方もあるじゃないですか。でも、次の世代は、余計なお世話だと思うかもしれない。僕たちよりももっといいことを考えると思うんです。才能のある人や面白い人は、自分たちの力でなんでもやるので。

――AIなどのテクノロジーについてはどうお考えですか?
藤原 単純に「すごいな」と思います。デザインやグラフィックを作るときに使うことはありませんが、原稿を書いたりするときに使うことはあります。ラフを作って、それについてやり取りするとか。自分にとって、上手な付き合い方はしています。
――AIがファッションやデザイン業界に与える影響については?
藤原 時短じゃないですかね。
――ご自身はSNSとの距離が近いほうだと思いますか?
藤原 わりと近いほうだと思います。Instagramなどもまめにアップします。でもコメントは受けつけてないです。一方通行でやっていきたいので。僕は、メディアは一方通行の方がいいと思っています。それこそ雑誌のように。だから僕は雑誌が好きなんです。
――周囲から“藤原ヒロシ”という存在を神格化されたり、アイコンとして見られたりすることについては?
藤原 あまり気にしないですね。僕自身は昔も今もずっとアンダーグラウンドにいると思っているし、そんなに特別扱いされているとも感じない。たまにレストランで僕のことを知っている人がいて、予約が取れたりすることがあるけど(笑)。勝手にいろんなものが混ざってイメージがひとり歩きしがちですが、それはそれで面白いんじゃないですかね。
――藤原さんと働きたい人はたくさんいるんじゃないですか?
藤原 どうなんでしょう。2000年頃に会社を小さくして、社員を多く雇うことをやめました。今は3人くらいで小さくやっています。
――もしもの話ですが、会社員として働くこともできたと思いますか?
藤原 できたと思いますよ。でも、すぐ自分から辞めていたと思います(笑)。
――還暦を超えて、今後についてはどう考えていますか?
藤原 年齢どうこう、というのはあまりないですね。本当にラッキーなことに、常に新しい仕事をやれている。そのときにできることを、できる限りやってきたと思います。
――年齢を意識することは特にないと?
藤原 もちろん体力的にはありますよ。朝起きて「今日は調子いいな」と思うことが、もうここ10年くらいない(笑)。昔はそんなこと考えなかったけど、今はどこか痛いとか、体調が悪いとか、そういうことを朝起きたときに必ず考えますね。
――「いつか引退しよう」なんて考えることはありますか?
藤原 僕には決まった仕事があるわけじゃないから、「いつか仕事をやめる」という感覚はないんですよね。そもそも仕事をしているという感覚自体、あまりない。
――今後のファッション業界については、どう見ていますか?
藤原 今は時代の流れが早くて情報もあふれているから、みんなすぐ飽きるし、こだわりも強くないじゃないですか。僕の場合、「僕だけがこのよさを知っている」と思えるものが好きだけど。でも、「好き」と思えるものを見つけるのって、いまや難しくなっていると思います。だからブランド側も、常に新しいお客さんを獲得するために、飽きられないように、新しいものを作り続けなければならない。作る側として見たら怖い時代でしょうね。
――日本のストリートカルチャーについてはどうでしょう?
藤原 日本は特に、今、若いストリートカルチャーのリーダーがあまりいないように思えます。ラッパーとか、音楽のほうにはいるのかもしれないけど。でも、洋服を作ったり、クリエイティブの側からストリートを引っ張る若い人はいないのかもしれません。僕が知らないだけかもしれませんが。
――今の若い世代から出てこないのはなぜでしょうか?
藤原 そもそも、今の若い人は昔ほど物にお金を出さないですよね。昔はもっと安かったし、買おうと思えば買えた。でも今は、こんなに服が高くなっていて、給料もそんなに上がっていない。というのも理由でしょうね。
――最後に、40〜50代の仕事や人生の岐路に立つSafari世代に向けて、なにか言葉をいただけますか?
藤原 嫌になったり困ったりしたら、一度やめればいいんじゃないかなと思います。なんでも、嫌だったらやめちゃえばいい。もちろん、「そんなことで俺はこの仕事を簡単にやめられない」という人もいると思う。でも、本当に嫌だったら、やめればいいんじゃないですかね。いきなり全部やめるんじゃなくても、ちょっとずつ嫌だなと思うことをやめていく。ネガティブですかね……(笑)。でも、やめたら新しいなにかがはじまると思うので。
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’90年代から今に至るまでずっと、日本の、いや世界のトップクリエイターとして立ち続けてきた藤原ヒロシ氏。今回のインタビューで、熱狂の時代であっても、それが薄れた時代であっても、藤原氏がやること、考えは一貫していることがわかった。作り手として、やりたいことに対しての熱量は変わらず、時代に踊らされることもない。『Safari』がずっと会いたいと思っていた人は、人間力を持ち合わせた、やっぱり神的存在だった。
【藤原ヒロシ(Hiroshi Fujiwara)プロフィール】
1964年、三重県生まれ。日本のストリートファッション界を牽引するマルチクリエイター、音楽プロデューサー。1980年代に日本におけるDJの先駆者としてヒップホップ文化を日本に紹介し、‘90年代には“裏原宿カルチャー”の仕掛け人に。現在も自身のブランド〈フラグメント デザイン〉をつうじ、〈モンクレール〉や〈ルイ・ヴィトン〉といったラグジュアリーブランドとのコラボを多数展開。今もなお最前線で世界に影響を与え続ける。
⚫︎モンクレール ジャパン
TEL:0120-938-795































































