
『サウンド・オブ・フリーダム』
製作年/2023年 監督/アレハンドロ・モンテヴェルデ 出演/ジム・カヴィーゼル、ミラ・ソルヴィーノ、ビル・キャンプ
連れ去られた子供をめぐる執念の追跡劇!
国土安全保障捜査局の捜査官を務めるティムは、長らく直面してきた児童人身売買にまつわる過酷な実態に精神をすり減らしていた。そのタイミングで偶然得られた一つの手がかりをもとに、彼は国境を越えて勢力を伸ばすビジネスを摘発すると同時に、行方不明となっている一人の少女の消息をひたすら追いかけるのだが……。
どこのスタジオにも属さないインディペンデント映画でありながら、全米公開時には名だたる超大作を抑えてのサプライズヒットを記録した迫真のサスペンス。絶対に諦めない捜査官の追跡劇と、彼が探し求める少女の視点が入り混じり、双方の自由への希求がハーモニーを生んでいく過程が実に力強い。カヴィーゼルの決して声を荒らげることなく、実直に訴えかけるような演技も見応えあり。ただ、アメリカでは陰謀論との関連によって話題性が高まったとする意見もあり(決してそういった趣旨を盛り込んだストーリーではないのだが)、映画の売り方や受け止め方の面でも、現代の分断された政治・社会状況が色濃く浮き彫りになった一作と言える。

『グロリア』
製作年/1980年 監督/ジョン・カサヴェテス 出演/ジーナ・ローランズ、ジョン・アダムズ、バック・ヘンリー
絶体絶命の状況下でこの子を守り抜けるか!?
「NYインディーズの父」とも称されるジョン・カサヴェテスが放つハードボイルド映画の傑作。始まりは、組織を裏切った会計士とその一家がギャングの襲撃によって皆殺しに遭う緊迫のシーンから。しかしこの時、幼い少年フィルだけは、事前に両親がその身を知人のグロリアへ委ねたことで、難を逃れていた。嫌々ながらも庇護者となった彼女は(この辺りの展開は『レオン』と瓜二つ)、フィルの身柄と彼が隠し持つ切り札の手帳を守りながらギャングの追跡から逃れようとするが……。
本来カサヴェテスといえば、低予算、即興演出によってストーリー性を遥かに超えた有機的な瞬間を生み出す手法で知られる。だが、いわゆる商業映画として制作された本作は、ハッキリした筋書きや銃撃、カーアクション、さらにフィルとグロリアの間で培われる母子のような愛情を内包しながら怒涛の如く突き抜けていく。切れ長の目線とギャング相手に1ミリも動じないローランズもすごいが、彼女と一対一で渡り合った少年役のアダムズも大したもの。ヴェネツィア国際映画祭では『アトランティック・シティ』と並び最高賞にあたる獅子賞を獲得している。

『太陽の帝国』
製作年/1987年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/クリスチャン・ベール、ジョン・マルコヴィッチ、ジョー・パントリアーノ
クリスチャン・ベールのずば抜けた存在感が光る!
第二次大戦中、上海に踏み込んできた日本軍によってイギリス租界は大混乱に飲み込まれ、上流階級の両親とはぐれた少年ジェイミーは、この街で孤独に生き抜くことを運命づけられる。やがて現実は容赦無く襲いかかり、彼は兵士に捕えられて強制収容所へと送還。しかし過酷な環境は少しずつ彼を成長させ、いつしかジェイミーは生きるための知恵と精神ろ技術を身につけていく……。
スピルバーグが40歳という節目で挑んだ本作は、『カラーパープル』に続くシリアスなヒューマンドラマであり、戦争、収容所、自由の抑圧を描いた意味ではのちの『シンドラーのリスト』へ至る方向性の起源とみなすこともできよう。スピルバーグと言えば「子供の心を持つ大人」の映画が多い中、本作は逆に、生きるためにいち早く大人になることを余儀なくされた少年の物語。その極めて難しい役どころを、4000人の候補者から選ばれた子役時代のクリスチャン・ベール(当時13歳)が鋭い目線と体の躍動で、ため息の出るほど見事に演じきっている。

『運動靴と赤い金魚』
製作年/1999年 監督/マジッド・マジディ 出演/ミル=ファロク・ハシュミアン、バハレ・セッデキ、アミル・ナージ
世界中を魅了した健気で優しく愛おしい物語
イランの首都テヘラン。決して裕福とは言えない家庭で育ったアリとザーラは、口喧嘩は絶えないものの、家族を思いやる気持ちを持った優しい兄妹だ。でもある時、アリは修理したての妹の靴を持ち帰る際にうっかり失くしてしまい、このことをなかなか親に打ち明けられない。生活費にも困るこの家で親を困らせまいと、兄妹は一足の靴を共有してなんとかピンチを凌ごうとするが……。
子供をメインに扱ったイラン映画の名作は数多いが、本作ほど世界中の幅広い観客層を虜にした作品も珍しい。妹は朝から靴を履いて登校し、兄は午後から遅れて登校し、行き帰りの交差地点で二人がバトンリレーのごとく靴を交換する様のなんとスリリングなことか。しかも肝心のマラソン大会で3位の景品として掲げられるのが新品の運動靴。アリが疾走中にスピード調整しながらピンポイントで3位入賞を目指す様がおかしくて、チャーミングで、全力で応援せずにいられなくなる。疲れたアリの足に金魚がそっと口づけするさりげない描写も、思わず涙が込み上げてくるほど優しい。

『ペーパー・ムーン』
製作年/1973年 監督/ピーター・ボグダノヴィッチ 出演/ライアン・オニール、テータム・オニール、マデリーン・カーン
デコボコな二人のコンビネーションが絶妙!
舞台は1936年頃のアメリカ。母を亡くした9歳の少女アディは、参列者がたった数人きりの葬儀で、かつて母の恋人だったモーゼスという詐欺師の男と出会う。彼は周囲の大人たちに半ば押し切られる形で、身寄りのないアディを疎遠な伯母の元へ連れていくことに。当初は協調性の欠片もなかった二人。だが、道行く先々でモーゼスが聖書の詐欺販売を働くおり、アディは思いがけない機転と才能を発揮しはじめ……。
名匠ボグダノヴィッチらしい可笑しさと軽妙さ、それにちょっぴりの切なさを織り交ぜた本作は、なんと言っても憮然とした表情のアディとそれに振り回されるモーゼスのやり取りが秀逸。デコボコな二人が少しずつ父子にも似た不思議な絆で結ばれ始める様にも胸打たれる。それもそのはず、主演の二人ライアン&テータムは実の父娘。どおりであらゆる演技のコンビネーションが完璧なわけだ。この映画で当時10歳のテータムは演技未経験ながら史上最年少でアカデミー賞(助演女優賞)に輝き、その記録は今もなお塗り替えられていない。
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photo by AFLO




























































