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CULTURE カルチャー

2025.01.13

この作品、見逃してない?
マフィア世界を描く海外ドラマ『THE PENGUIN -ザ・ペンギン-』 その作品力に圧倒される!



ヒーローなのか、ヴィランなのか、はたまたダークヒーローなのか。クズの“ヒーロー”が横暴に振る舞う『ザ・ボーイズ』に、“ヴィラン”のレッテルを貼られながらヒーロー活動に身を投じる『スーサイド・スクワッド』、その一員だったピースメイカーを主人公にした『ピースメイカー』などを例に挙げるまでもなく、その分類はなかなか難しい。別に分類しなくてもいいのかもしれないし、そもそも人間は多面的な生き物だが、アメコミ世界の住人たちもそうあるべきか。そんな問いを、銃弾で蹴散らしてくる男がいる。

それが、映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』に顔を出していた“ペンギン”ことオズワルド・コブルポットだ。ゴッサムシティの裏社会を生き、劇中では中堅マフィアとして駆けずり回っていた彼の物語には続きがあった。同作のマット・リーヴス監督が製作総指揮を務める『THE PENGUIN -ザ・ペンギン-』は、ゴッサムシティが大洪水に見舞われた映画のラストに連なるドラマシリーズ。権力の分布図が変わり、混乱するゴッサムの裏社会でトップを目指そうとするオズワルドの死闘が展開する。
 

  

 


となると、『THE BATMAN -ザ・バットマン-』未履修者にはハードルの高いドラマなのか? そうでもない。ゴッサムシティがハードな街であること、その裏社会に君臨していた人物が映画内で死亡したこと、洪水のせいで今は街も人も傷ついていることさえ知っておけばスタートラインに立って差し支えなし。目の前に広がる芳醇なマフィアドラマの世界に飛び込む準備はできている。

そう、『THE PENGUIN -ザ・ペンギン-』はマフィアドラマなのだ。マフィアのボスの右腕を務めてきたにもかかわらず、でっぷりとした体を揺らしてペンギンのようにペタペタ歩く姿を仲間に嘲笑されもするオズワルドはもちろん、登場するのは気に入らない奴を銃で撃っちゃう危険な者たち。マントをひるがえすバットマンの姿は見当たらず、銃弾、腕っぷし、策略と金銭が武器となる。その様相はさながら『ゴッドファーザー』や『スカーフェイス』で、制作チームを牽引する脚本家のローレン・ルフランも名作マフィア映画からの影響を口にしている。また、本作の米放送局がHBOである以上、同局が生んだ2大名作マフィアドラマ『ザ・ソプラノズ』『ボードウォーク・エンパイア』と比較したくもなる。もっとも、両ドラマの立役者であるテレンス・ウィンターがもともとは『THE BATMAN -ザ・バットマン-』の別のスピンオフを手掛ける予定だった経緯を考えると、少し苦い思いにもなるが。
 

  

 


さておき、そんなマフィア社会を生きるオズワルドの生き様をぜひ見てほしい。『THE BATMAN -ザ・バットマン-』未履修者にハードルが低い反面、履修者、つまり同作における彼の不遇を目にした人は果たして、その後の彼の物語に興味が湧くだろうかという疑問もあるが、もちろん見たほうがいい。まぶたや頬の肉のせいで目の奥の真意や口の端から漏れるべき本心が読み取れず、けれどもグツグツと煮えたぎるものを抱えていることだけは伝わってくるオズワルドに、コリン・ファレルが全身全霊で成り切っている。想像を絶するほどの暗い過去を持ち、母親への愛に生涯囚われる一方、物事を見極める能力を持っていて、名もなき人たちへの理解も示し、街づくりがやたら上手くはあるが決してヒーローではない。近年は『イニシェリン島の精霊』や主演ドラマ『シュガー』も素晴らしいコリン・ファレルだが、“最近のコリン・ファレル作品にハズレなし”をここでも更新している。

また、オズワルドを巡る者たちにも目を向けておきたい。オズワルドのボス(『THE BATMAN -ザ・バットマン-』内で死亡した人物)の娘で、精神科病棟(アーカム・アサイラム!)から舞い戻ってきたソフィアがその筆頭。マフィア社会という男の世界で辛酸をなめてきたソフィアは、トップを目指すオズワルドにとってどんな存在と化すのか。彼女はマフィアドラマを彩るだけの不遇の女性なのか、それとも‥‥? 『ママと恋に落ちるまで』の“ママ”ことクリスティン・ミリオティが、コリン・ファレルに一歩も引けを取らないところを見せている。さらに、ストリートの少年ビクター(レンジー・フェリズ)とオズワルドの“師弟関係”が少々のほっこりをもたらしもするのだが、人がボコボコと死んでいくハードボイルドな世界でほっこりは許されるのか否か。それは見てのお楽しみだ。

シーズン2の制作は不透明だが、オズワルドは『THE BATMAN -ザ・バットマン-』の続編(2027年公開予定)に登場することが決定済み。その予習として見るのもおすすめだが、見たら最後、作品力に圧倒されるはずだ。

『THE PENGUIN -ザ・ペンギン-』U-NEXTにて独占配信中
製作総指揮/マット・リーヴス、ディラン・クラーク、ビル・カラッロ、ダニエル・ピプスキ 製作総指揮、脚本、ショーランナー/ローレン・ルフラン 製作総指揮、監督/クレイグ・ゾベル 製作総指揮・出演/コリン・ファレル 出演/クリスティン・ミリオティ、レンジー・フェリズ、マイケル・ケリー、ショーレ・アグダシュルー 配信/U-NEXT
2024年/アメリカ/全8話

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文=渡邉ひかる text:Hikaru Watanabe
©2024 WarnerMedia Direct Asia Pacific, LLC. MAX and related elements are property of Home Box Office, Inc. THE PENGUIN and all related characters and elements are copyrights and trademarks of DC. All Rights Reserved.
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