【まとめ】これ見逃してない?
今月の新作映画4選!
『Safari Online』で今月紹介した新作映画4本を振り返り。「見逃していた!」という人は、この週末に是非いかが?
『エターナルズ』11月5日公開
監督・脚本/クロエ・ジャオ 出演/リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー、ジェンマ・チャン、サルマ・ハエック、キット・ハリントン、マ・ドンソク 配給/ディズニー
2021年/アメリカ/上映時間156分
『アベンジャーズ/エンドゲーム』で一区切りしたマーベル映画だが、その後もドラマシリーズ、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』といった新たなヒーローの登場で、ファンの気持ちをキープ。そして、さらに新鮮な興奮を期待させるのが、この『エターナルズ』だ。
エターナル=永遠の命をもったヒーローの集団。その設定だけで、“アベンジャーズ”を彷彿とさせる。エターナルズとは、なんと7000年もの長きにわたり、人類を守り続けた者たちなのだ。現在は地球上でバラバラになり、人間社会でひっそりと生活する彼らが、最大の脅威の前に再集結することになる。地球滅亡まで7日間というタイムリミットで、エターナルズに課された試練とは……?
物質の構造を変化させるセルシや、飛行能力をもつ戦術家のイカリスなど、それぞれのパワーを駆使し、彼らは歴史の節目で、恐るべき敵から人類を守ってきた。今回の危機とともに、各時代での戦いも描かれるので、さながら壮大な歴史絵巻スペクタクルのようでもある。そこが、めちゃくちゃ新鮮!
注目なのは、今年、『ノマドランド』でアカデミー賞の作品賞や監督賞を受賞した、クロエ・ジャオがメガホンをとった点。アクションヒーロー映画を撮るイメージではなかった彼女が、マーベルにどんな息吹を届けたのか。絶景を駆使した独特の映像美とバトルの融合も『エターナルズ』の新しさだ。
さらにヒーローたちの“多様性”が半端じゃない。人種だけでなく、あらゆる個性が突出しているので、キャラと関係性のわかりやすさがハイレベル。“アベンジャーズ”などの作品とのつながりも描かれるが、そこはサブ的で、マーベル初心者にもやさしい作りでもある。日本が意外なシーンで登場するし、ヒーローたちの切実なドラマも描かれたりと、要所でサプライズを味わえるので、これまでのマーベル映画と明らかに別種の余韻が残るはず!
『レッド・ノーティス』 ネットフリックス配信中
製作・出演/ドウェイン・ジョンソン 監督/ローソン・マーシャル・サーバー 出演/ガル・ギャドット、ライアン・レイノルズ、リトゥ・アリヤ 配信/ネットフリックス
2021年/アメリカ/視聴時間117分
『デッドプール』のライアン・レイノルズ、『ワイルド・スピード』シリーズなど大ヒット作が続くドウェイン・ジョンソン、そしてワンダーウーマン役でおなじみのガル・ガドット。3大スターが世界を駆け巡るアクション大作で集結。それだけで面白さは保証されたようなもの! レッド・ノーティスとは、インターポール(国際刑事警察機構)から最重要の指名手配犯に出された国際手配書のこと。高級美術品を狙う詐欺師のノーランが、レッド・ノーティスのターゲットだ。ローマでクレオパトラが残した秘宝を狙う彼の前に、FBIのスゴ腕捜査官が立ちふさがるが、インターポール、謎の大泥棒も入り混じり、壮大なスペクタクル犯罪劇へと突入する。
イタリアにはじまり、バリ島、ロシア、イギリス、スペイン、さらに南米にアフリカと、『007』をも超えるワールドワイドな攻防に、秘宝探しのアドベンチャー、犯罪のプロのテクニック合戦、騙し合いに肉体バトルと、アクション映画のありとあらゆる要素を詰めこんだサービス精神が、本作の魅力。しかもハイテンポで進むので、配信作品ながら倍速で流すのは、ほぼ不可能だろう。ツッコミどころもあるものの、一気の勢いにかき消される感じ。そして何より、R・レイノルズの、おちゃめ&おとぼけな活躍、ロック様の豪快さとコミカルな演技、男2人を手玉に取って余裕のガルと、これ以上ないほどのハマリ役を託されたスターたちに、最後の最後まで魅了されるのは間違いない。
『モスル あるSWAT部隊の戦い』 11月19日公開
製作/ジョー・ルッソ、アンソニー・ルッソ 監督/マシュー・マイケル・カーナハン 出演/ヘール・ダッバーシ、アダム・ベッサ、イスハーク・エリヤス、クタイバ・アブデル=ハック
2019年/アメリカ/上映時間102分
ここ数年、リアルな戦争アクション映画といえば、イラクやアフガニスタンなどが背景となることが多い。現実のニュースとも重なって切迫感を高めるためだが、量産されると飽きられてしまうのも事実。しかし本作のように、アクション大作の名手が関われば、新たな次元も見えてくる!
紛争が長引き、荒廃した状態が続いている、イラク第2の都市モスル。ISIS(イスラム過激派組織)が住民たちに脅威を与えるなか、ISISと敵対するSWAT部隊、現地の警官たちが、絶望的な闘いを強いられていた。そんな実話をベースに、21歳の新人警察官がSWAT部隊に引き入れられ、壮絶を極める戦闘を描いていく。
冒頭からいきなり、銃撃戦が展開。モスルの街のカオスが生々しく伝わってくる。誰が味方か、誰が敵か。そもそも正義はどこにあるのか。観ているこちらも混乱するほどだが、この混乱が、新人警察官カーワの気持ちと一体感をもたらすのだ。
本作のプロデューサーを務めたのは、ジョー&アンソニーのルッソ兄弟。アクション映画ファンにはおなじみの名前。『アベンジャーズ/エンドゲーム』などマーベルの中心作品を監督したコンビが、「絶対にこの事実を世界に知らしめたい」と映画化権を取得し、初監督となるマシュー・マイケル・カーナハンやキャストたちをサポートした。
その結果、完成したのが、SWAT部隊の“目”となって再現していく驚異の映像。部隊とともにカメラが自在に動き回り、われわれ観客は、その場、つまり戦闘の最前線に居合わせたような錯覚をおぼえる。突発的な爆撃や銃撃、そして戦闘員たちの衝撃の決断を間近で体感した果てに、待ち受けるのはエモーショナルな結末。スター俳優が出演していないので、誰が犠牲になるかわからないスリルも、本作の持ち味だ。
『アーミー・オブ・シーブズ』 ネットフリックス配信中
原案・製作/ザック・スナイダー 監督・出演/マティアス・シュバイクホファー 出演/ナタリー・エマニュエル、ルビー・O・フィー、スチュアート・マーティン 配信/ネットフリックス
2021年/アメリカ/視聴時間129分
マーベルやDCのヒーロー映画のように、それぞれの作品がクロスオーバーする世界観は、ハリウッドですっかり主流になった。しかしあまりに作品が広がりすぎると、追いつけなくなったりするのも事実。そこでオススメしたいのが、この作品だ。
『300<スリー・ハンドレッド>』や『ジャスティス・リーグ』などでアクション映画ファンに根強い人気を誇る、ザック・スナイダー監督。当たり障りのない痛快アクションというより、かなり過激だったり、マニアックな欲求を刺激したり、アクの強い表現も得意な彼の持ち味が最大限に発揮され、絶賛されたのが『アーミー・オブ・ザ・デッド』。ゾンビが解き放たれたラスベガスで、金庫からの大金強奪を描いたが、そこで天才的な金庫破りのテクニックを披露したキャラが、今回の主人公。ラスベガスの事件から時間を戻し、ヨーロッパを舞台にド派手な強盗アクションが展開していく。世界の強盗たちにとっても“伝説”とされる4つの金庫がターゲットとなるのだ。
『アーミー・オブ・ザ・デッド』でも、ちょっぴり浮いた存在だった、金庫破りの天才マティアスは、今回も超難関な犯罪計画に巻きこまれながら、自慢のテクを使いたい野心と、もともとの軽めの性格が絡み合って、さらに味わい深く、共感しやすいキャラへと進化。金庫に触れながら、複雑な内部に“感応”する鍵開けのシーンは、じつにユニークだ。マティアスを犯罪に誘うスリの名人のほか、計画の仲間たちも強烈に怪しい面々で、そのチームプレーが思わぬ方向へなだれこむあたりもスリリング。アメリカでゾンビが発生する事態や、意外なキーパーソンなど、『アーミー・オブ・ザ・デッド』とのシンクロを見つけられるし、この2作、どっちから先に観ても楽しめる。2022年には『アーミー・オブ・ザ・デッド』のアニメシリーズも完成するので、この“アーミー・オブ”ワールドの動向から、しばらく目が離せなくなりそう!