Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2023.12.04

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』監督インタビュー
「ティモシー・シャラメの演技を観て、並外れた才能を感じました」


写真右/ポール・キング 1978年生まれ、イギリス出身。主な代表作に、『パディントン』(2014年)、『パディントン2』(2017年)、『スペース・フォース』(2020年)がある


あの不思議なキャラクターには、どんな過去があったのか……。2005年に公開され、日本でも大ヒットを記録した『チャーリーとチョコレート工場』は、ジョニー・デップが演じたこともあって、謎の工場長、ウィリー・ウォンカが大きな注目を集めた。孤独で、怪しげな秘密も抱えていそうなウォンカの過去は、おそらく映画向きだろう。そんなアイデアから生まれたのが、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』だ。若き日のウィリー・ウォンカを演じたのが、いま若手スターでトップの人気を誇るティモシー・シャラメということで、クリスマスシーズンで最も話題の本作。その監督を任されたのは『パディントン」シリーズで知られるポール・キング。間近で感じたティモシーの才能や、本作に込めた思いなどを彼に聞いた。
 

 
ーー本作のプロデューサーは『ハリー・ポッター」シリーズも手がけたデイビッド・ヘイマンです。あなたは『パディントン」シリーズで彼と組みましたが、その縁で今回も誘われたのですか?

そうです。じつは『パディントン2』の撮影最終日にデイビッドから「ウォンカの若い時代で映画を作る」と聞かされました。私はウォンカの原作(ロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密」)が大好きだったことを思い出し、何年かぶりに読み返したところ、チャーリー少年や子供たち、さらに家族の運命に大粒の涙をこぼれしてしまいました。クレイジーな楽しさと、ダークな部分、深い感動のブレンドは、まさに私が『パディントン」でやろうとしたこと。同じ志向だと感じて、監督を引き受けることにしました。

ーー原作が好きということは、もちろん過去のウォンカの映画も観ていますよね?

まず1971年の『夢のチョコレート工場』を観て、主演のジーン・ワイルダーが私にとってのウォンカのイメージとして定着しました。彼の姿を頭に描いて原作も読んだわけです。子供心にウォンカのチャーリー少年への仕打ちとその後の行動に複雑な感情を抱いたのも事実。そして2005年のティム・バートン版では、1971年では不可能だった映像もたくさん盛り込まれ、ジョニー・デップが多面性を備えたウォンカを演じて、こちらも素晴らしかった。今回、これらの作品のリメイクだったら、私は躊躇したでしょう。でも“若き日のウォンカを描く物語ということで、1971年の映画の精神を想像し、そこに“ロアルド・ダールがいたらどんな物語を作っただろう”というアプローチを試みました。
 
  

 


ーー今回の映画でウォンカが開くチョコレート店は、ティム・バートン版の工場の内部も連想させるカラフルさでした。

そうですか? ウォンカのルーツをたどった結果ですかね。ウォンカにとってチョコレートは母親との思い出の味。その味を完璧に再現することで、彼は母親との子供時代を取り戻そうとします。母親と見た桜の木や、母親が漕ぐボートなど、ウォンカは自分の過去を店内で表現しました。これらを実用的なセットとして作ることができたと思っています

ーーウォンカ役はティモシー・シャラメです。やはり彼は特別な才能があると思いますか?

数年前、『君の名前で僕を呼んで』でティモシーの演技を観て、並外れた才能を感じました。ただその時は、たまたま役にぴったりだっただけの奇跡と捉えていました。それかわわずか半年後、『レディ・バード』では、別人のようなファニーで皮肉っぽいキャラクターとして輝いていて、それ以来、すべての役に一体化するティモシーに驚き続けています。

ーー今回は演技だけでなく歌とダンスを披露しています。

主役としての演技はパーフェクトですが、歌とダンスのシーンは立ち位置を守ったり、多くの制限があります。そんな状況で感情を表現しながら、ティモシーは音楽に合わせて正確な動きをしてくれました。彼はカメラに対して自分がどう機能するかを理解しているのです。私は各テイクごとに役の感情を説明すると、ティモシーは「もう少し視線を上げればいいですね」などと的確に対応します。残念ながら最終的にカットしたのですが、彼が歌いながら無意識に涙を流すシーンがありました。しかも音楽のビートに合わせて涙が落ちたんです。それを目にした時はびっくりしましたね。
 

  

 


ーーティモシーのウォンカと、ヒュー・グラントが演じる“小さな紳士”ウンパルンパのシーンの撮影について聞かせてください。ウンパルンパはヒューの動きを取り込むパフォーマンス・キャプチャーが使われているんですよね?

そうです。ヒューは別室で撮影しました。ただしティモシーと同じ空間のセットにいたので、おたがいの声を聞いたり、その姿を見たりしながら演技をしたのです。俳優はクローズアップを撮る際、目の前に相手がいないこともありますから、彼らは難なくやってのけました。ヒューのような俳優はアドリブをどんどん入れてくるので、共演者はその場で反応した方がいいのです。結果的にティモシーとヒューは親友のような絆を育みました。『パディントン」のクマの主人公は完全に合成なので、そこが大きな違いですね。

ーーこの作品は若きウォンカが夢を掴もうとする情熱や、仲間との絆、母への愛など、観る人によって多くのテーマを発見することができます。監督のあなたが純粋に心に響くのは、どんなメッセージですか?

なぜウォンカはチョコレート作りに興味があったのか? 私はそこに注目しました。チョコレートを食べるのが好きな人は、いくらでもいます。でもチョコレート作りを仕事にする人は限られている。ウォンカにとって子供時代に母親とボートに乗ってチョコレートバーを食べた思い出が鮮烈で、後の人生形成に大きな影響を与えました。そこから7〜8年をかけて、彼はその記憶を取り戻そうとしながら、ちょっと特殊な方法で夢を実現しようとします。

ーーでも、その夢の達成はすんなり行きません。

「すべて順調で、めでたし、めでたし」は避けつつ、登場人物の喜びをチョコレートの美味しさと関連づけるようにしました。誰かとチョコレートバーを分かち合う喜びです。もちろん幸せは永遠に続くものではありません。しかし一瞬の幸せこそ価値があるはず。その考え方を私は本作で伝えようとしました。
 

 
ーーこのところ大作映画は2時間半、3時間など長めの上映時間が目立ちます。本作は1時間56分で映画としては最適な長さですね。

たしかに私が好きなのは2時間未満の映画。100分だと聞けば喜ぶので、本作はもっと短くてもいいですよね(笑)。それはともかく映画館で座っている時間が長くても、短くても、あらゆる瞬間に心がときめくことができればいいのです。無駄が瞬間を作ってはいけません。そのために私たちは彫刻を作るように、映像のカット、さらにカットを繰り返し、最高の仕上がりを目指します。時間もかかりますが、近道はできない作業です。たまに90分の映画を観て、あまりに退屈で1週間くらいの長さに感じますが(笑)、マーティン・スコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(3時間26分)は最初から最後まで夢中になりました。やはり映画はテンポとクオリティなんです。

ーー『パディントン」も続編が生まれたように、この若き日のウォンカの物語にも、まだ続きがありそうですか?

『パディントン」も1作目の時は続編のことは考えていませんでした。今回も間違いなく、新たな物語を考える余地は残してあるので、誰かが「もう1作」と望めば可能性があるでしょう。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』12月8日公開
監督・脚本/ポール・キング  出演/ティモシー・シャラメ、ヒュー・グラント、オリビア・コールマン、ローワン・アトキンソン、キャラー・レイン 配給/ワーナー・ブラザース映画
 
  

 


 

 

 
取材・文/斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
〈ディースクエアード〉の新作コレクションに注目!とびきりお洒落して週末は山へ!?
SPONSORED
2024.07.25 NEW

〈ディースクエアード〉の新作コレクションに注目!
とびきりお洒落して週末は山へ!?

夏は海でたっぷり遊んで、秋の週末は山へ。山といっても川遊びや高原なら、しっかりお洒落もできるでしょ? というわけで秋のそんなムードにぴったりなのが〈ディースクエアード〉の新作。ポジティブで遊び心の効いたアイテムで、大自然に映えるお洒落を楽…

TAGS:   Fashion Denim
〈ロエベ〉なら遊びと洒落感がちゃんとある!大人のカジュアルはどこかが違う!?
SPONSORED
2024.07.25

〈ロエベ〉なら遊びと洒落感がちゃんとある!
大人のカジュアルはどこかが違う!?

大人カジュアルに必要なのは、やっぱり遊び心と洒落感。ひと味違う“なにか”があるかどうかで、印象が大きく変わってくる。そこで注目すべきなのが〈ロエベ〉の新作コレクション。モードな洒脱さがあり、クラフト感やヴィンテージ感のある独特な世界観が魅…

TAGS:   Fashion
元サッカー日本代表・松井大輔が〈ベルルッティ〉を選ぶワケ!こだわる男を虜にするハイエンドなスニーカー
SPONSORED
2024.07.25

元サッカー日本代表・松井大輔が〈ベルルッティ〉を選ぶワケ!
こだわる男を虜にするハイエンドなスニーカー

今年2月、セカンドライフの第一歩を踏み出した元サッカー日本代表の松井大輔さん。ファッションへの情熱も高く、特にレザーグッズは若い頃にフランスで出会った〈ベルルッティ〉を愛用しているという。そんな彼が現役引退後、初のファッションシューティン…

TAGS:   Fashion
“IQOS Together X”で夢を叶えよう!一生に一度は行ってみたい楽園モルディブで “究極の体験”!
SPONSORED
2024.07.17

“IQOS Together X”で夢を叶えよう!
一生に一度は行ってみたい楽園モルディブで “究極の体験”!

心を奪われる絶景が広がる南国の楽園で、自然と触れ合い、なにもしない贅沢を楽しみ、優雅な時間を過ごす。これこそまさに、誰しもが一生に一度は体験してみたいと願う“究極の体験”のひとつではないだろうか。そんな願いを叶えるチャンスがあるのを是非紹…

TAGS:   Lifestyle
【Safari】TOSHIO MATSUMOTO Meets BLACK WOLF間が空いてもいい。とにかく続けることで、前向きになれる。
SPONSORED
2024.06.30

【Safari】TOSHIO MATSUMOTO Meets BLACK WOLF
間が空いてもいい。とにかく続けることで、前向きになれる。

パフォーマーから退いてはや9年が経つにもかかわらず、いまだ現役さながらの肉体を保ち、キレのいい動きで第一線で活躍する松本利夫さん。歳を重ねたことで円熟味が出てきたものの、まだまだ若々しく精悍で、エネルギーに満ちあふれた印象。彼のスタイルは…

TAGS:   Health&Beauty
【Safari me time】RYOHEI OHTANI Meets BLACK WOLFなりたい自分自身をイメージして、努力することが楽しい。
SPONSORED
2024.06.30

【Safari me time】RYOHEI OHTANI Meets BLACK WOLF
なりたい自分自身をイメージして、努力することが楽しい。

寡黙で優しく、それでいて芯が強い。最近出演する映画やドラマでは、そんな役どころを演じることが多い俳優の大谷亮平さん。実際にお会いすると、若々しくフレッシュな印象だ。きっと、いまだ鍛えているという身体と艶やかな黒髪が、そう感じさせるのだろう…

仕事も週末も両立する新ブランド〈MCFC〉。ビジネスマンのための時代を創造するバッグ。
SPONSORED
2024.06.30

仕事も週末も両立する新ブランド〈MCFC〉。
ビジネスマンのための時代を創造するバッグ。

クリエイティブディレクターを戸賀敬城、デザイン監修を橋本 淳が務める〈アウール〉から新しくバッグブランド〈MCFC〉がデビュー。ウエアと同じく、“ビジネスをより快適に”をテーマに使い勝手がよく、かつスタイリッシュなデザインが最先端で働くビ…

TAGS:   Urban Safari Fashion
ラグジュアリーを身近に感じさせてくれる〈フレデリック・コンスタント〉の新作。ビジネスシーンに映えるシンプルで優美な腕時計。
SPONSORED
2024.06.30

ラグジュアリーを身近に感じさせてくれる〈フレデリック・コンスタント〉の新作。
ビジネスシーンに映えるシンプルで優美な腕時計。

余裕を忘れがちな仕事中、手元にさりげなくラグジュアリーな腕時計があれば、忙しさの中にも優美さを保てる。1988年の創業から16年で自社製ムーブメントを製造する“マニュファクチュール”となった〈フレデリック・コンスタント〉。その真摯なウォッ…

TAGS:   Urban Safari Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ