『マッドマックス2』
製作年/1981年 監督・脚本/ジョージ・ミラー 音楽/ブライアン・メイ 出演/メル・ギブソン、ブルース・スペンス、バーノン・ウェルズ
アウトローしかいない世界!
1979年の『マッドマックス』のヒットにより、2年後に作られたこの続編。製作費もアップしたことで、壮大な世界観が完成され、マシンなどの魅力も倍増された。シリーズの中でこの2作めを偏愛するファンも多い。前作から数年が経ち、石油不足によって荒廃した大地が舞台。ガソリンの争奪が繰り広げられ、暴走族が各地で脅威となるなか、生きる希望も失っていたマックスが、壮絶な戦いに巻き込まれていく。
暴走族が幅を利かせる世界観なので、マックスを含めて登場人物たちすべてがアウトローと言っていい。赤いモヒカン頭のウェズなど、見た目はもちろん、あらゆる行動が過激すぎる悪役たち。中でも暴走族を束ねる首領のヒューマンガスは、鉄仮面に革ベルト、マッチョな肉体が超インパクト。シリーズの最新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のイモータン・ジョーとも比較したくなる。1980年代のアクション映画から、日本の漫画『北斗の拳』まで、本作にインスパイアされた作品も多い。
『ヤングガン』
製作年/1988年 製作・監督/クリストファー・ケイン 脚本/ジョン・フスコ 出演/エミリオ・エステベス、キーファー・サザーランド、ルー・ダイアモンド・フィリップス、チャーリー・シーン
若きアウトローたちに憧れる!
アウトローたちがプライドをかけて戦ったのは、西部開拓時代。アウトローが英雄でもあった時代だ。その代表格が、強盗として知られ、21歳の若さで世を去ったビリー・ザ・キッドで、彼を描いた映画は数多く作られている。その中でも特に人気が高いのが本作。タイトルに“ヤング”とあるように、ビリー・ザ・キッドがその名を得る以前の時代にフォーカスする。19世紀末のニューメキシコ州。牧場で働いていたウィリアムが、主人が殺されたことで復讐を誓い、臨時保安官として活躍する物語。ウィリアムを中心にした6人の若者の青春群像劇でもある。
ビリー・ザ・キッドと名付けられるきっかけとなった撃ち合いなど、ガンアクション場面はド迫力で、いま観ても興奮度満点。保安官のはずのウィリアムが、非情な性格もあって人を殺すことに躊躇しなくなり、無法集団のリーダーへ変わっていくプロセスが劇的だ。危険な香りを漂わせつつ、無邪気な一面もあるウィリアムをエミリオ・エステベスが好演し、実弟のチャーリー・シーンら共演陣もそれぞれ味わい深い。誰もが思わず憧れる若きアウトロー、その理想形のひとつと言えそう!
『キャノンボール』
製作年/1981年 監督/ハル・ニーダム 脚本/ブロック・イエーツ 出演/バート・レイノルズ、ロジャー・ムーア、ジャッキー・チェン
公道をひたすら爆走する痛快さ!
アメリカの東海岸をスタートし、西海岸までの5000kmの公道を走破。しかも制限速度や交通ルールも無関係なので、レース自体がアウトロー。追いかけてくるパトカーを振り払い、ひたすら走りまくる。ストーリーはあってないようなもの。そこに笑えるネタも大量に投下され、何も考えずに楽しめるのが本作の魅力だ。
参戦するキャラクターも、常識外れの面々。飲酒運転の常習犯や、神父に化けた賞金稼ぎ、金持ちの俳優、日本人レーサー、中東の王族、偽装結婚のカップル……などなど。キャストたちも豪快に暴れまわり、本作が本格的ハリウッドデビューとなったジャッキー・チェンはなぜか日本人役でカンフーを披露し、ロジャー・ムーアは当たり役『007』の自虐パロディ、そしてファラ・フォーセットの不必要なセクシーさと、どれもが振り切れた笑いを誘う。3年後に続編、さらに5年後に3作めも製作されたが、この1作めの自由なムードこそ、無法者たちのお祭り状態を満喫できるはず。ランボルギーニ・カウンタックをはじめ。もちろん名車の数々も必見だ。
『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』
製作年/2021年 監督・脚本/ジェームズ・ガン 出演/マーゴット・ロビー、イドリス・エルバ、ジョン・シナ、ジョエル・キナマン、シルヴェスター・スタローン
個性的すぎるアウトローたちに魅了される!
アメコミのヒーローアクション映画が次々と製作されるなか、『ジョーカー』などアンチヒーロー、ヴィラン(悪役)を主人公にした作品もブームとなった。DCコミックの極悪キャラたちを一同に集めたのが『スーサイド・スクワッド』で、ジョーカーの元恋人ハーレイ・クインを中心にした本作は、ヴィランの魅力をたっぷり詰め込みつつ、痛快のアクションエンタメとして楽しませてくれる。南米の国家の異変に気づいたアメリカ政府が、極悪の囚人たちを集め、減刑と引き換えに危険なミッションに挑ませる。
出てくる囚人は総勢14名。それぞれ外見やパワーも超個性的な悪党が2グループに分かれ、危険が待ち受ける国に侵入するオープニングから、いきなりハイテンションな展開。最終的な宿敵となる“スターフィッシュ”のビジュアルは驚愕モノだ。カラフルな花をバックにドレス姿で槍を振り回すハーレイ・クインら“キャラ立ち”がここまでハイレベルな作品も珍しい。声をシルヴェスター・スタローンが声を担当するサメと人間のハイブリッドも面白すぎる。残虐な描写やブラックな笑いがアウトロー映画らしいが、クライマックスでは悪党たちの絆に思いのほか共感してしまうはず!
『ワイルドバンチ』
製作年/1969年 監督・脚本/サム・ペキンパー 出演/ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン
アウトロー映画の傑作!
無法者たち=アウトローの映画として、多くの人がナンバーワンに挙げる名作。舞台は1913年。パイクをリーダー格にした強盗団は、テキサス州で銀行を襲撃するが、パイクの元仲間の賞金稼ぎに待ち伏せされ、強盗を断念。パイクらはメキシコに逃走する。メキシコのマパッチ将軍に、アメリカの軍用列車から武器を奪う計画を持ちかけられたパイクだが、マパッチの裏切り行為で非情な戦いへとなだれ込んでいく。監督のサム・ペキンパーは西部劇の名手だが、本作は従来の西部劇のイメージを一変させた。
人が馬に乗って渡っている鉄橋が爆破されるなど衝撃シーンが何度も出てくるが、クライマックスにおける、パイクら4人の仲間vs.マパッチの政府軍200人の一大銃撃戦は、映画史で語り継がれるほど凄惨を極める。スローモーションも多用され、血の色も赤というよりドス黒いバイオレンス描写は、後のアクション映画に多大な影響を与えた。そして何より、無法者たちのカッコよさに、いま観ても惚れぼれ。歩く姿、自信たっぷりの笑顔が脳裏にやきついて離れない。
photo by AFLO