『ソフィーの選択』
製作年/1982年 製作・監督/アラン・J・パラク 出演/メリル・ストリープ、ケビン・クライン、ピーター・マクニコル
ソフィーの隠された過去に衝撃を受ける!
1947年、世界大戦の終結から2年後のニューヨーク。小説家を目指して上京した若者スティンゴは、ユダヤ人の生物学者ネイサンと、その恋人でポーランド出身のソフィーと知り合う。ナチスを憎むネイサンは普段は気が良いが、癇癪を起こすこともしばし。そんな彼に寄り添うソフィーには、ナチスの収容所に入れられていた過去が。スティンゴは彼女に心惹かれていくが、ソフィーはネイサンを深く愛しており、一方で決してして癒えない心の傷を抱えていた……。
ウィリアム・スタイロンのピューリッツァー賞に輝く小説を映画化。ネイサンの秘密に加え、ヒロイン、ソフィーの過去がサスペンスフルに解き明かされていく。“何が真実なのか私にもわからない。たくさんの嘘をついてきたから”という彼女の痛ましい“選択”は、観る者の心を動かさずにおかない。ハリウッドを代表する女優メリル・ストリープにとって、ソフィーを演じた本作は初のアカデミー主演女優賞受賞作となった。
『イングリッシュ・ペイシェント』
製作年/1996年 原作/マイケル・オンダーチェ 監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ 出演/レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・スコット・トーマス、ウィレム・デフォー
許されぬ恋が男の運命を変える!
1944年、イタリアの野戦病院に全身大火傷を負ったパイロットが運び込まれる。身元もわからず“英国人の患者”と名づけられた、この男の看護に、戦争で恋人や友人を亡くした女性ハナが当たった。記憶を少しずつ取り戻した“英国人の患者”アルマシーが語る過去。英国地理学協会の依頼で、アフリカのサハラ砂漠の地図作りに当たっていた彼は偶然、出会った人妻と許されぬ恋に落ちる。それが彼の運命を変えるとも知らずに……。
アカデミー賞で作品賞など9部門を制した、ミステリアスなドラマ。こちらも主人公の過去を解き明かすことで物語が進む。砂漠での運命的な出会い、熱愛、不倫関係の発覚、そして悲劇へ。貴族の出であるアルマシーの運命の物語はドラマチックで、なおかつ反戦のメッセージも込められており、胸を打つ。彼の話を聞き、影響を受けていく看護師ハナにふんしたジュリエット・ビノシュは、みごとにアカデミー助演女優賞を受賞。
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命』
製作年/2012年 原案・監督・脚本/デレク・シアンフランス 出演/ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパー、エヴァ・メンデス、ローズ・バーン
親子二代に及ぶ、うねりに満ちた運命!
バイクショーのスタントマン、ルークは昔の恋人が自分の子を産んでいたことを知り、彼らを養うために堅気の仕事に就くがままならず、銀行強盗を画策。しかし逃走に失敗し、若い警官エイブリーに射殺される。十数年後、エイブリーは司法長官選挙に出馬するほどの出世を遂げていたが、子の親であるルークを射殺したことへの後悔の念を抱き続けていた。一方、高校生となった彼らの息子が、たがいの親のことを知らぬまま高校で友人同士となり……。
“親の因果が子に報う”ということわざがあるが、本作はまさにそれを連想させる。警官も強盗も、どちらも息子を愛しているが、彼らが因縁で結ばれ、その息子たちの運命にも影響をあたえる。それは皮肉な結果をもたらしてしまうのか!? ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパーら人気俳優たちの熱演に注目しつつ、親子二代に及ぶ、うねりに満ちた運命の行方を見届けてほしい。
『ガープの世界』
製作年/1982年 原作/ジョン・アービング 製作・監督/ジョージ・ロイ・ヒル 出演/ロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ、グレン・クローズ、ヒューム・クローニン
数奇な人生がユーモアとともに描かれる!
夫はいらないが子どもはほしいという、看護師ジェニーのもとに生まれた男の子ガープ。女手ひとつで育てられた空想好きの彼は、小説の執筆とレスリング、セックスに興味を抱きながら成長。作家としては芽が出ないものの、恋人と結婚して幸福な家庭を築いた。しかし、ガープと妻のそれぞれの浮気がこじれて悲劇が起こる。一方、ジェニーは息子とは裏腹にベストセラー本を出したことで、フェミニストの闘士としてカリスマ視されるようになり……。
ジョン・アーヴィングのベストセラー小説を映画化。瀕死の兵士と無理矢理セックスして子どもを授かった、そんな母の愛を一身に受けて成長する主人公ガープ。性欲とフェミニズムの狭間で、ピンボールのように揺さぶられる彼の数奇な人生がユーモアとともに描かれている。製作から40年を経た映画だが、LGBTに関する議論が活発な今見直すと、新鮮に映るのでは? 当時映画界では芽が出ていなかったロビン・ウィリアムズの出世作でもある。
『ビッグフィッシュ』
製作年/2003年 監督/ティム・バートン 脚本/ジョン・オーガスト 出演/ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム・カーター、マリオン・コティヤール
信じられない話はどこまでホント?
ホラ話を語っては、多くの人々を楽しませ、愛されてきた男エドワード。しかし、息子ウィルだけは嘘ばかりつく父を嫌っていた。そんなある日、エドワードの危篤の報を受けた彼は、妊娠中の妻とともに帰省する。巨人と出会った話、戦地でケタ外れの危険な任務に就いた話、そしてウィルの生まれた日に伝説の魚“ビッグ・フィッシュ”を釣った話。父は相変わらず、つくり物の冒険談を語り、ウィルをウンザリさせるが……。
異才ティム・バートンがダニエル・ウォレスの人気小説を映画化。作り話しばかりで、信じられない……そんな思いを父に抱いていた息子が、父の真意に近づいていく。エドワードの話のどこまでがホラなのか明確にはしていないが、そこには確実に“真実”が含まれている。そういう意味では、父の作り話に翻弄されてきた息子の成長談か。クライマックスからにじみ出る、その感動をじっくりと味わってほしい。
photo by AFLO