1年の最初に何を映画館で観るか? 映画がその年の運勢を左右するわけではないけれど、やはり最初の1本はテンションを高く上げてくれるものがいい。『スパイダーマン』最新作は、そんな期待に100%以上、応えてくれると断言したい。
2017年、トム・ホランドが主人公ピーター・パーカーに抜擢されたシリーズも、一応これで3部作の完結となる。前作のラストで、スパイダーマンの正体がピーターであることが全世界に明かされ、その暴露のきっかけを作った相手、ミステリオをスパイダーマンが殺害したことで、ピーターは世間からバッシングを受ける。そこで現れたのが、アベンジャーズで共に戦ったドクター・ストレンジ。“忘却の魔法”で人々の記憶を消そうと、マルチバース(今の世界とは別の複数の世界)の扉が開いたところ、スパイダーマンのかつての敵=ヴィランが次々と目の前に現れる。これが今回の物語の発端だが、はっきり言おう。この先は一切、情報をシャットアウトして映画館へ行った方がいい。そして観た人は、これから観る人の楽しみを奪わないよう、口を閉ざしたくなるはずだ。本作のサプライズと衝撃、感動は並の作品の比ではない!
さまざまな演出の仕掛けで楽しませる本作だが、一貫しているのは“スパイダーマンらしさ”だ。ピーターはガールフレンドのMJ、親友のネッドとともに大学進学を目指しており、青春ストーリーとしてのテイストをキープ。そもそも素性を知られてパニックになる発端が、ヒーローとして大人になりきれないスパイダーマンらしい。ここから劇的な運命を乗り越えて、究極の戦いに身を投じるまでを、トム・ホランドが過去のシリーズから明らかに進化した演技力で表現していたことに、正直、驚いた。「何を忘れるべきか」。「何を記憶に留めておくことができるのか」。こうしたテーマが、過去の多くの名作も重なりつつ、信じがたい結末を導いていく。ヒーロー映画の新たなポテンシャルを目にして、誰もが万感の思いに浸るのではないか。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 1月7日(金)
製作/ケヴィン・ファイギ 監督:ジョン・ワッツ 脚本:クリス・マッケナ出演/トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ、ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス 配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2021年/アメリカ/上映時間149分
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