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CULTURE カルチャー

2018.08.14


『タリーと私の秘密の時間』『オーケストラ・クラス』

シャーリーズ・セロン主演のミステリアスなヒューマンドラマ『タリーと私の秘密の時間』と、音楽が子供たちの心と未来を変える『オーケストラ・クラス』をピックアップ。

物語で選ぶ編①
ムネアツなポイントは?“18kg増量で挑んだC・セロンの女優魂!”
『タリーと私の秘密の時間』

監督、脚本、主演女優という、名コンビならぬ“名トリオ”があるとしたら、この作品の3人だろう。2011年の『ヤング≒アダルト』のジェイソン・ライトマン監督、ディアブロ・コディ脚本、シャーリーズ・セロン主演という顔合わせが再び実現したのが今作。全体に、作り手と演じ手の信頼感がみなぎっており、チャレンジングな展開や演出で楽しませる。


 

 
シャーリーズが演じるのは、間もなく3人めの子供を出産するマーロ。自分のことだけで大変なのに、夫は家事も手伝わず、息子は学校で問題を起こしたりして、気が休まるヒマはない。ようやく女の子を出産するも状況は変わらず、マーロは仕方なく夜間のベビーシッターを頼むことに。やって来たタリーという若い女性は、とてもベビーシッターとは思えない“ちゃらい”風貌だったが……という物語。


 

 
この映画、とにかく驚くのはシャーリーズ・セロンの外見である。もちろん顔は相変わらず美しいのだが、たとえば出産後、マーロがジョギングするシーンや、ブラジャー姿で料理を出すシーンなどで、ブヨブヨのお腹を惜しげもなく披露。なんと18kgの体重増加に挑んだというからアッパレ! やはり信頼できる作り手との仕事だから、ここまでさらけ出せたのだろう。アカデミー賞主演女優賞を受賞した『モンスター』でも13kg増量した経験があるし、『マッドマックス/怒りのデス・ロード』などでの豪快な演技を思い出すと、シャーリーズの女優魂、半端ではない。


 

 
そんなシャーリーズに負けないほど、この映画で魅力を放っているのは、タリー役のマッケンジー・デイヴィスだ。ベビーシッターとしての仕事をあざやかにこなし、マーロの良き相談相手にもなるのだが、やることなすことすべてがキュート。マーロの夫の妄想をかなえるべく、ウェイトレス姿にコスプレして誘惑する姿では小悪魔的セクシーさが全開。『ブレードランナー2049』でのセックス用レプリカント役で注目を浴び、今後、『ターミネーター』のリブート版など話題作への出演が続くので、しばらく彼女から目が離せない。


 

 
そして『タリーと私の秘密の時間』で最大の見どころとなるのは、後半の思わぬ展開。人生でなにかに迷ったり、困難に出会ったときの、ちょっとした解決策を提示してくれる部分もあるのだ。“育児あるある”などヒロイン映画の側面も濃厚だが、ラストは性別に関係なく自分の人生と重ね合わせたくなるはずだ。



『タリーと私の秘密の時間』
製作・監督/ジェイソン・ライトマン 製作・脚本/ディアブロ・コディ 製作・出演/シャーリーズ・セロン 出演/マッケンジー・デイヴィス 配給/キノフィルムズ/木下グループ
2018年/アメリカ/上映時間95分

8月17日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
©2017 TULLY PRODUCTIONS,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
 


物語で選ぶ編②
ムネアツなポイントは!?“出演者も4カ月でバイオリンをマスター!”
『オーケストラ・クラス』

 
 

 
『北京バイオリン』や『奇跡のシンフォニー』など、子供たちが音楽の才能を開花させていく作品はハズレがない。そんな鉄板ジャンルに新たな感動作が登場した! 舞台はパリ郊外の小学校。移民の子供たちが通う学校に、音楽教育プログラムの一環で中年バイオリニストが指導にやってくる……。ドキュメンタリータッチで描かれるため臨場感もあり、クライマックスでは涙を流さずにはいられないほど心が動かされるはずだ!


 

 
主人公のダウドはプロの演奏家。しかし、職にあぶれ、仕方なく子供たちにバイオリンの指導をするハメに。気乗りではないうえに、クラスの子供たちはやんちゃ者ばかり。基礎を教えようにも話さえも聞かない状況だ。けれども、年度末にはホールで課題曲を演奏する目標が課せられている。暗澹たる思いになる中、ダウドはアフリカ系の少年アーノルドの才能を見出す。


 

 
実はこの舞台裏は劇中以上にドラマチックで、キャストの中には演奏できるものは誰1人いなかったそう! 子供たちはおろか、プロ演奏家ダウド役のカド・メラッドさえもバイオリンははじめてだったとか。わずか4カ月で、マスターしなければならず、相当なレッスン量を積んだとのこと。特にカドは3週間もの集中練習を敢行。練習後に監督へ食ってかかるほど、その内容はハードだったそうだ。


 

 
本作は過度な演出を避けていて、まるでドキュメンタリーを観ているかのよう。淡々と物語は進んでいくのだが、それが絶妙なリアル感を演出してくれるわけだ。様々な人種が混在するフランスの諸問題も垣間見え、観る者へ訴えかける社会性も備えている。ただ、作品自体は重たくなく、子供たちの純粋さに泣き笑いを誘われるヒューマン作品に仕上がっている。

『オーケストラ・クラス』
監督・脚本/ラシド・ハミ 脚本/ギィ・ローラン 出演/カド・メラッド 配給/ブロードメディア・スタジオ
2017年/フランス/上映時間102分

8月18日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードジョー
© 2017 / MIZAR FILMS / UGC IMAGES / FRANCE 2 CINÉMA / LA CITÉ DE LA MUSIQUE - PHILHARMONIE DE PARIS

 
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