過去のどんな映画でも目にしたことのない異様な世界に目を疑うはず!『MEN 同じ顔の男たち』
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映画はタイトルから想像をふくらませて期待を高めるもの。実際に観てみたら、タイトルのイメージと違ってがっくりくることもたまにあるが、タイトルどおりの内容なのに、さらに予想を超えてくる作品もある。これは、まさにそんな“成功”の一本だ。
大都会ロンドンで暮らす主人公のハーパーは、ある日、夫を目の前で亡くし、何も手につかない状態になる。ショックから立ち直るために彼女が選んだのは、田舎町の一軒家を借りて、しばらく一人で生活すること。
近所の住人は少なく、美しい自然に囲まれた日常は、これまでの人生と何もかもが違い、ハーパーの心は癒されていきそうだった。ところが……。散策中の森のトンネルでこだまする声。トンネルの出口に見える影。そして家の近くをうろつく服を着ていない怪しい男。些細な異変が重なっていき、やがて事態は急展開をみせていく。
タイトルにあるとおり、“同じ顔の男”が重要ポイントになる本作。ハーパーが最初に出会う管理人がちょっぴり謎の言動でインパクトを残すが、その後に出会う牧師や警察官、パブの客など男たちが妙に似ている。年齢も職業も違うので、微妙に“そっくりに見える”ところが逆に恐ろしい。演じているのが同じ俳優というのも徐々にわかってくる。そこにハーパーの夫の死の瞬間がフラッシュバックしたりして、戦慄が加速していく感覚だ。
いったい何が起こっているのか、ハーパーの恐怖を一緒に味わいながら、迷宮に入っていき、やがて到達するのは衝撃極まりないビジュアルで展開する結末。はっきり言って、過去のどんな映画でも目にしたことのない異様な世界に目を疑うはず。
そして本作は単なるスリラーではなく、さりげなくジェンダーの問題を盛り込んでいるところが今っぽい。また本筋とは別に、イギリス田舎町のカントリーハウスのおしゃれなインテリアも見どころになっていたりして、あらゆる角度から観客を満足させるセンセーショナルな一作と言えそうだ。
『MEN 同じ顔の男たち』12月9日公開
監督・脚本/アレックス・ガーランド 出演/ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン、サラ・トゥーミィ 配給/ハピネットファントム・スタジオ
2022年/イギリス/上映時間100分
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