映画にとって小説は最高の素材のひとつ。人気小説はすぐに映画化のプロジェクトが進むが、その名前だけで多くの映画ファンの関心を誘う原作者もいて、スティーヴン・キングはその一人。ほとんどの著書が映画やドラマになっている。キングといえばホラーのイメージも強いが、それだけが持ち味でないことを本作は証明する。
アメリカ、メイン州の小さな町。この舞台からして、スティーヴン・キングらしい世界が期待できる。主人公のクレイグ少年は、一人暮らしの富豪の老人、ハリガンに気に入られ、彼のために小説を読み聞かせるバイトをはじめた。
やがてクレイグは高校生に成長するも、ハリガン氏との交流は続く。コレイグは、世の中で流行しはじめたスマートフォン(iPhone)の使い方をハリガンに教えるが、ハリガンが急死してしまい……。この基本設定だけで、あとはできるだけ前情報を入れずに観れば、本作の予想不能なストーリーにどっぷり没入できるはず。
もちろんキングらしい恐怖テイストはあるのだが、それ以上に、クレイグが大人になるドラマ、イジメも含めた高校での青春ストーリー、そこに初期のiPhoneの機能などが絶妙に絡み、ジャンルを超えた物語が導かれる。製作を手がけたのが『glee/グリー』のライアン・マーフィー(青春モノが得意)と、『ゲット・アウト』のジェイソン・ブラム(ホラー系が専門)で、監督は『オールド・ルーキー』のジョン・リー・ハンコック(人間ドラマが上手)と、スタッフは本作にうってつけの面々。
ドッキリさせる仕掛けもあり、クレイグ役のジェイデン・マーテルが『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』にも出ていたので、キングらしい空気感が充満するものの、キング作品の映画化としては『スタンド・バイ・ミー』や『ゴールデンボーイ』など“非ホラー”と共通の味わいもあり、不思議な魅力に心がとらわれることだろう。
『ハリガン氏の電話』ネットフリックスで配信中
原作・製作総指揮/スティーブン・キング 製作/ライアン・マーフィ 監督・脚本/ジョン・リー・ハンコック 出演/ドナルド・サザーランド、ジェイデン・マーテル、ジョー・ティペット、カービー・ハウエル=バプティスト
2022年/アメリカ/視聴時間106分
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