地球規模のパニックは、実際に起こってほしくないけれど、映画にとって最高のテーマにもなる。『インデペンデンス・デイ』、『デイ・アフター・トゥモロー』、『2012』……と、パニック映画のタイトルを挙げると、そこには共通点が! 監督がどれもローランド・エメリッヒなのだ。そのエメリッヒの新作では、またもや地球に滅亡の危機が訪れる。
2021年、突如として月が軌道を変えて、数週間後に地球に激突することが判明。その10年ほど前に、月の近辺で事故に遭ったNASAの宇宙飛行士ブライアンとジョー、そして今回の異変に気づいた、自称・天文学博士のK.C.が、この危機を止めるべく信じがたいミッションに挑む。まさにローランド・エメリッヒしか撮れないような物語が展開していくのが、この『ムーンフォール』だ。今はNASAを離れ、息子が起こすトラブルで苦悩するブライアン。元夫が軍の上層部で、強引な作戦に出ようとするのを、NASAの副長官として押しとどめようとするジョー。そしてK.C.と認知症の母など、主要キャラのファミリードラマを地球滅亡のパニックに絡めるのも、これまたエメリッヒ映画らしい。
地球に近づくにつれ、どんどん大きく見えてくる月。それに伴って、各地で起こる異常現象など、できるだけ大きな画面で迫力を楽しみたい。なぜ月は、軌道を変えたのか? その秘密は冒頭からヒントが示されるが、映画の中盤、そして後半と、目を疑う事実が明らかになっていき、その事実が特大スペクタクル映像とともに迫ってくる印象。月の表面の神秘的なビジュアルも、謎めいた雰囲気を高める。あまりの突飛なアイデアにツッコミを入れたくなる瞬間もあるが、それを力技で跳ね返していくのも、エメリッヒのパニック大作らしいところだ。キャストでは、『ゲーム・オブ・スローンズ』のサムウェル役でおなじみのジョン・ブラッドリーが、K.C.役を愛すべきキャラクターとして名演。彼の目線で作品を観れば、思わぬ興奮を味わえることだろう。
『ムーンフォール』アマゾン プライム・ビデオにて配信中
製作・監督・脚本/ローランド・エメリッヒ 出演/ハル・ベリー、パトリック・ウィルソン、ジョン・ブラッドリー、マイケル・ペーニャ、ドナルド・サザーランド 配信/アマゾン プライム・ビデオ
2022年/アメリカ・イギリス/視聴時間130分
Photo by AFLO