【アメリカで試乗】荒野の大冒険! 〈ランボルギーニ〉“ウラカン ステラート”
〈ランボルギーニ〉といえばご存知、猛牛のエンブレムで知られるスーパーカーブランド。基本はウラカン、アヴェンタドールといった、いかにもスーパーカールックなスーパースポーツカーだが、昨今ではSUVのウルスも人気。〈ランボルギーニ〉はこれをSSUV(スーパー・スポーツ・ユーティリティ・ビークル)と呼び、〈ランボルギーニ〉の大黒柱となっている。しかし、そんな〈ランボルギーニ〉にも電動化の波が訪れていて、今回ご紹介する“ウラカン ステラート”は、〈ランボルギーニ〉最後のV10モデルとされている。だからこそ、開発陣がこれまでにないチャレンジと楽しさを盛り込み、ウラカン最後のモデルとして世に送り出したのだろう。米国カリフォルニア州パームスプリングスから約100㎞離れた砂漠のど真ん中にあるサーキットで、ウラカン ステラートのオンロード、オフロード試乗が叶った。
日本発表は2023年2月23日。鈴鹿サーキットで開催された〈ランボルギーニ〉の創立60周年を記念する「60thアニバーサリー ランボルギーニ デー」だったのだが、筆者はその日のアンベール前に会場を後にしたため、〈ランボルギーニ〉が国際女性デーの日に行った女性向け試乗会場のランボルギーニ・ラウンジ・TOKYOに展示されていたのを見たのが最初だった。
〈ランボルギーニ〉の車名は闘牛の名前をつけるのが通例だが、ウラカンも1879年にスペインで活躍した牛の名。そしてステラートは、イタリア語でダートとかオフロードという意味がある。車高が低く、見るからにスーパーカールック。オンロード番長のウラカンEVOをベースに、ボディサイズを全長5㎜長く、全幅を23㎜広く、全高を83㎜高くし、ひとまわりサイズアップした。
最低地上高は44㎜上げ、フロントとリアのトレッドも拡大しているが、エクステリアのデザインにも“ステラートらしさ”がちりばめられている。まずはなんといっても、長方形の小型LEDラリーライトが2灯、ボンネット先端に取り付けられていること。さらに、前後のアルミのアンダーボディプロテクションや黒いオーバーフェンダー、そしてルーフスクープがちょこんと乗っているのもこれまでの〈ランボルギーニ〉らしからぬ姿だが、意外と違和感がない。
タイヤは〈ブリヂストン〉と共同開発したランフラットのDUELER AT002。ブロックが大きく、ステラートの足元を力強く引き締める。DUELLERは日本ではあまり馴染みがないが、アメリカではトラックのイメージだそうだ。トレッドのゴムが柔らかく、高いハンドリング性能を発揮する。
基本のパワートレーンはウラカンEVOと同じで、5.2ℓV10エンジンと7速DCTの組み合わせ。電子制御式の4輪駆動システムで、最高出力610PS、最大トルク560Nmといたスペックを掲げる。一方、違いといえば、後輪にハルデックス製の機械式セルフロッキングディファレンシャルが加わったことと、ドライブモードにラリーモードが加わったこと。それに〈ランボルギーニ〉の走りを統合制御する最新のLDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)が搭載され、傾斜角度やコンパスなどが追加設定されている。
最高速度は260㎞/h。停車時から100㎞/hまでの加速は3.4秒で迫力のある加速が味わえるが、実はウラカンEVOは最高速が325km/h。0-100km/hは3.3秒なので、ウラカン ステラートのほうがスピードは控えめなのだが、その代わり違うベクトルの楽しさが盛り込まれている。特筆すべきは、やっぱりドライブモードに“ストラーダ”“スポーツ”のほか、“ラリー”モードが設定されたことだろう。当然のことながら、足回りはサスペンションのストロークが大きくなっていて、電子制御の四輪駆動システムには機械式のリア・セルフロッキングディファレンシャルを組み合わせ、ブレーキはフロントがカーボンセラミックディスクブレーキ、リアはディスクブレーキとなっている。
ボディカラーはランボルギーニ・アドペルソナムを利用すると、エクステリアが350通り、内装も60通りから選ぶことが可能。そういえば、試乗会場チャックワラ・バレーレースウェイにあった試乗車も実にカラフルだった。
さて、サーキットの試乗コースは1周3.75㎞。半分は普通に舗装されたオンロード、途中からコース脇の土のコースを走るという、まさにオンロード&オフロードを両方楽しめるスペシャルなコースが用意された。
サーキット走行なので、ヘルメットオン。助手席にはベテランのインストラクターが控え、コースや走り方をサポートしてくれる。オンロードではスポーツモードだが、これはこれで普通に楽しい。しかしメインイベントは、その途中からのダートコース。さっそくラリーモードに切り替え、いざ!
アクセルを踏んでスピードを上げる、コーナー手前でブレーキを踏む、リアが流れてステアリングでコントロールする、つまりドリフト状態になるのだが、まるでラリードライバーのように上手くクルマをコントロールできるのだ。ラリーモードでは前後の駆動力配分がフロントに多く配分され、さらにLDVI(ランボルギーニ・ダイナミカ・ヴィコロ・インテグラータ)の電子制御が加わっているようだが、それは乗っていてもさりげない。ただ、ドライバーは気持ちよく、楽しいだけ。ラリーモードでは、ダートで簡単で安心して楽しめるドリフトマシンとなった。
そんな楽しいダート走行を味わった後は、公道試乗へ。しかしこの後、トラブル発生! 実は今回は、カーナビに行先を入れて、目的地に到着したら次の目的地を入れるというシステムだが、最初の目的地を広大なジョシュア・ツリー国立公園のいくつかあるゲートの中の違うゲートに設定したらしく(ゲートがいくつかあるかなんてそもそも知らない)、砂漠の中の直線の一本道を50㎞も走り、さらに曲がったと思った先も30㎞直進。と、かなり先まで行ったところでミスコースを伝えるスタッフが追いつき、そこではじめて事態を知ることに。確かに最初の目的地設定したときより、到着時間がだいぶ遅くなっているとは思ったものの、まさか間違いとは。目的地まで先導してもらい、かなりの遠回りと時間のロス。しかし思いがけず、ウラカン ステラートの直進安定性と乗り心地のよさを体感したは不幸中の幸い⁉ もっとも、アメリカの広さを実感することにもなった。
さらに、そんなアクシデントに見舞われる中でも、「イタリアのクルマなのに、なぜわざわざ国際試乗会をアメリカで?」という謎が解けたような気がした。この広大なアメリカ西部映画の舞台のような景色の中で、最新の猛牛を操る……、最高だ! 気分はカウボーイ。馬じゃなくて牛だけど。
ちなみにウラカン ステラートの価格は3116万5367円(税抜)で、世界限定1499台。すでにほぼ完売とのことだが、お近くのディーラーにご相談を。ラッキーな人は購入できるかも⁉ とにかく楽しいクルマだから!
★DATA 〈ランボルギーニ〉ウラカン ステラート
●全長×全幅×全高:4525×1956×1248mm
●車両重量:1470kg
●ホイールベース:2620mm
●エンジン:5.2ℓV型10気筒
●最高出力:449kW(610PS)/8000rpm
●最大トルク:560Nm/6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:四輪駆動
●ランボルギーニ カスタマーサービスセンター
TEL:0120-988-889
text:Yumi Yoshida