新羅慎二(a.k.a.若旦那)、酒井昭征(デザイナー)、編集部による特別座談会
それぞれの「これから」を考える〈パーリーゲイツ〉の新作コレクション!
“エッセンシャル(本質的な、必須の)”をテーマに掲げた新作が話題のゴルフブランド〈パーリーゲイツ〉。これまでにないベージュ一色のアイテム構成もさることながら、湘南乃風の若旦那として活躍する新羅慎二さんをディレクターに迎え、美しく力強いメッセージ映像を制作。新型コロナウイルスによって社会が変化していく今、ブランドとして伝えたかった思いとは何なのか。未来への希望を表現したメッセージ映像とともに、キーパーソンお2人の特別な座談会をお送りします!
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今回のコレクションに向けて〈パーリーゲイツ〉が制作した映像は、年齢も職業もさまざまな人物が、みずからの「これから」を本音で語るというもの。コロナ禍にあって気分が沈みがちな時代において、“また日は昇る”ことを信じる気持ちを切り取った内容といえる。その映像に込められた思い、そして新作コレクションの魅力について、大いに語っていただいた。
――“エッセンシャル”というのは、人それぞれ捉え方の違う難しいテーマだと思うのですが、映像制作はスムーズに進みましたか?
酒井:新羅さんと最初にお会いしたとき、実は話があまり噛み合わなかったんです。自分自身の気持ちはめちゃくちゃ落ちこんでいて、でも新羅さんはすごく元気だし、その差がすごくて(笑)。ただ話していくうちに、コロナという共通の経験をした人間として繋がる部分があり、そこから互いに理解できていったと思います。新羅さんという人を知れば知るほど、自分にないものを持っている方だと思いました。すごく言葉を大切にされていて、人への思いがとても強い。自分が思っていた“優しさ”以上のことを考えているんです。人に対してもそうだし、世の中に対してもすごく先のことを考えていて、一つひとつの言葉に説得力があるんですよね。
――新羅さんが「ミュージシャンには2つの役割がある」ということをお話しされていたのが印象的で、ファンの方々に向けた音楽と、もうひとつは世の中に貢献する音楽もあると。それってみんなに言えることだなと、目から鱗が落ちました。私たちも雑誌を作っていますが、どこかで社会に貢献できる内容を入れていくとか、考えないといけないのかもしれません。
新羅:僕はいま44歳ですが、少なくとも男性のファッションとの接し方でいえば、ただ単にその服がかっこいいか悪いかだけではなく、そのブランドがもっているバックボーン、成り立ち、思いといったものに惚れこんでいくという部分があると思うんです。たとえばスウェットでも、どこのブランドでも同じようなものがズラッと並ぶわけじゃないですか。そのときにポンと入るロゴに対して、ブランドが背負った姿勢とか思いとか、そういうものに惚れこんで買うわけです。デザインだけではなく、ブランドが何を考えているか、社会に対してどんな役割をもっているのか、そういうものをアピールするのも大事なんじゃないかと思うんです。
――コロナは決して肯定できませんが、すごく教訓的な出来事でもあると思うんですよね。震災などもそうですが、誰もがこんなことははじめてで、私たちに何か教訓を与えるような意味合いもあるのではないかと。
新羅:僕は震災復興にも積極的に関わってきましたが、阪神淡路、新潟、東日本、熊本など、何度も繰り返し大きな災害が起きるわけです。豪雨被害なども考えると、立て続けに毎年何かが起きているんですよね。そしてついにウイルスが来た。このコロナ禍を乗り越えたら日常が戻るかというと、震災の経験上、また違うものがくる可能性は高いわけです。いい加減に気づかなければいけないですよね。これは運が悪いとかって話ではなく、ある意味で人災なんですよね。
――そういうつもりで備えなければいけない、ということですね。
酒井:今回の映像はまさに“起こったことを記憶する”という意味がひとつあるんです。人間やっぱり忘れてしまうと同じことを繰り返しますから。私たちはいちゴルフブランドですが、これを残すことで、いま見ている人が覚えていて、また何年か後に見たときに「あのときの気持ちはこうだったな」と思い出してもらえれば、前進していけるのではないかと。
――撮影ではどんなことに苦労しましたか?
新羅:苦労話といったら、岐阜の花火師さんの撮影ですね。今回は様々な世代、職種の5人の方に出演していただきました。ほぼすべてロケにもかかわらず、日が限られている中で特にこの日はめちゃくちゃ風が強くて、しかもものすごく寒かった。岐阜の大垣というところで、田んぼに囲まれたところにポツンとコンクリート打ちっぱなしの火薬庫があるんです。もしものときに被害が出ないように。そして、実は大垣は酒井さんの地元でもあるんですよね。
酒井:そうなんです、まったくの偶然だったんですが。その花火師の方は全国で活躍されていて、古典的なものはもちろん、コンピュータを駆使した最新の花火も手掛けています。86歳の親方が現役でいらっしゃって、風が異常に強い中で実際に花火を打ち上げていただきました。インタビューしているときも、強い気持ちがすごく純粋に伝わってきましたね。
――インタビューの際は、お相手にコンセプトをお伝えするんですか?
酒井:大まかな話は事前にしていますが、「これから」というテーマに対してどう思われるか、率直に伺っていますね。
新羅:全員の方がそうなんですが、撮影当日に来ていただいて、ガチンコでインタビューをして、そこから言葉を紡いでいくということをしています。花火師の高木利幸さんのほかに、ミュージシャンの坂本美雨さん、モデル・俳優のゆうたろうさん、横笛奏者の藤舎貴生さん、そしてプロゴルファーの原英莉花さんにご登場いただきました。
――ここで少し実際の商品についても伺いたいのですが、今回のコレクションはベージュがキーカラーになっていますね。今までの〈パーリーゲイツ〉にはない色使いだと思いますが、この色を選んだ理由は何だったのですか?
酒井:自分のマインドとしてベージュが着たいなというのもあったんですが、“エッセンシャル”というコレクションテーマ、つまり本質、基本、必要不可欠という意味を考えると、奇をてらった色よりも、優しく肌に馴染む色がいいなということがありました。うちの企画メンバーは様々な世代がいるのですが、全員の肌の色に合うベージュを選んでいます。日本人の肌に合うベージュはどんなトーンなのだろうということを考えながら、トレンドカラーでもあり、そしてゴルフウェアとしては珍しいベージュを〈パーリーゲイツ〉が提案することで、今までにない世界観を表現できると思ってこの色にしました。
――ムービーの撮影がはじまる前に、新羅さんはコレクションをご覧になっていたんですか?
新羅:いえ、まだカタログもなかったので、全く見ていないです。ベージュがキーカラーになるのは聞いていましたが、とはいえ、それをムービーに反映させているかといえば、特にそういうこともないんです。酒井さんの意を汲んだ映像を作れば、自然とすべてが繋がってくると思ったんですね。やはりすべての中心にいるのが酒井さんですから。
――なるほど。新羅さんというフィルターを通して、酒井さんの想いや感じていることを表現しているわけですね。新羅さんは今回のコレクションを実際にご覧になって、いかがですか?
新羅:僕もベージュという色は好きで、特にベージュを着ている女性が好きですね(笑)。ベージュには気持ちや意思というか、「ここからはじめるんだ」という強さを感じます。ちゃんと意思をもって服を着ている人が好きなんですよ。白でも黒でもなく、やっぱりベージュ。肌の色にも近いし、洋服の原点だと思うんです。僕は縄文時代とかも結構好きなんですが、その頃の人たちが着ていた服はこういう色ですよね。
――なるほど、いわゆる生成りですね。
新羅:そうそう。白や黒ではなく、やっぱりベージュなんです。
酒井:ベージュは単色なので、マテリアル(素材感)が幅広く見えるようにしたいと考えました。たとえばこのカットソーは、柔らかく膨らみのある素材が持つ表情が特徴です。さらにそれぞれの素材が持つ吸水速乾やUVカットなどの機能も兼ね備えているので、着ていて気持ちがいい。ゴルフだけでなく日常でも着ていただけるので、とても汎用性の高いアイテムになっていると思います。
――2本ラインのステッチなど、すごくディテールに凝っていますよね。だからさりげない高級感が漂っています。
酒井:こちらのポケッタブルのジャケットは、“パーテックス®”という機能性ナイロンを使っています。〈パーリーゲイツ〉ではお馴染みの素材ですが、非常に薄くて軽量で、運動機能を妨げない快適さと耐久性にも優れているので、まさに〈パーリーゲイツ〉が追求する理想的な素材として長年採用しています。じつは、ダブルネームのタグを使えるのはうちだけなんですよ。通気孔を設けるなど、蒸れないように設計されていて、こちらも細かいディテールがすごく凝っています。
――“パーテックス®”はイギリス生まれの超軽量ナイロンですよね。確かにダブルネームのタグは見たことないですね。
酒井:そうですね。そしてこのニットは、超極細のポリエステル繊維を編んだものです。ポリエステルはゴワゴワしているイメージがあるかもしれませんが、細い糸にすることでしなやかさと膨らみ、柔らかさを出すことができます。また“エクセラ”という高級なファスナーを使うことで、素材感に合った上品な雰囲気を出しています。実はこのポリエステル糸も〈パーリーゲイツ〉のために特別に作ってもらったものなんです。
――ベージュは確かにシンプルな色ですが、素材やディテールに徹底してこだわることで、とても表情豊かに見えてきます。だからこそ、親しみやすく、どんな人にも馴染むのだと思います。今回のコレクションからは「これから」や「ここからはじめるんだ」といった、とても前向きな気持ちを感じます。そして、このコレクションと調和した、新羅さんによるコレクションムービーでは、年齢も職業も異なる5名が次への一歩を踏み出す決意を語っています。この美しい映像を見た方は、きっと勇気をもらえることでしょう。今回の〈パーリーゲイツ〉のコレクションを通して、多くの方に新たな一歩を進むキッカケを与えられるのではないかと思います。本日はありがとうございました。
新羅・酒井:ありがとうございました。
●パーリーゲイツ
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