
ファッションブランドが発信する価値は、もはや服やバッグだけではない。いまラグジュアリーブランドに求められているのは、文化や芸術、そして知的好奇心を媒介にした新たな体験の創造。その象徴ともいえるイベントシリーズ『PRADA MODE』が、この6月、ニューヨークで開催された。
会場となったのは、数多くのアーティストや文化人たちに愛されてきた歴史的ホテル、ホテル チェルシー。今回で14回目を迎える『PRADA MODE』は、映画監督のニコラス・ウィンディング・レフンとゲームクリエイターの小島秀夫という、現代カルチャーを牽引するふたりとのコラボレーションによって実現した。
今回のテーマとなったのは『Satellites II』。2025年に〈プラダ〉青山店で発表された展覧会『Satellites』を発展させたもので、レフンと小島秀夫が長年育んできた友情をベースに、愛や言語、創造性、そして人間同士のつながりを探求する没入型インスタレーションとして構成された。
舞台となったホテル チェルシーの客室やラウンジ、共有スペースには、多言語、多文化、多様な価値観が交差する現代社会を映し出すような空間が広がる。プライベートとパブリック、個人とコミュニティの境界を曖昧にしながら、人間同士のコミュニケーションの本質を問いかける試みだ。
『PRADA MODE』の魅力は、展示イベントに留まらないこと。会期中にはレフンと小島秀夫を中心に、多彩なクリエイターたちによるトークセッションが開催された。
女優でミュージシャンのソフィー・サッチャー、映画監督のアベル・フェラーラ、詩人のアマンダ・ゴーマンらが登壇し、創作における情熱や葛藤、そして“失敗”について議論を展開。世代やジャンルを超えた対話から浮かび上がったのは、創造とは完成形ではなく、試行錯誤の連続であるという普遍的なメッセージだった。
さらに音楽ライブやワークショップ、パフォーマンスなども多数実施され、来場者はアートを「鑑賞する」のではなく、「参加する」体験を楽しむことができた。
今回の『PRADA MODE』でもうひとつ注目されたのが、『PRADA MODE Channel』の存在。専用放送局を思わせるプラットフォームを通じて、会場で行われたトークやパフォーマンスを広く発信。アナログテレビを彷彿とさせる演出のなかで、トーク番組やカルチャープログラムなどが配信され、会場を訪れられない人々にもイベント体験を共有した。
そこには、ブランドが一方的に価値観を提示するのではなく、多様なクリエイターやオーディエンスが交差する“文化的プラットフォーム”として機能しようとする〈プラダ〉の姿勢が見て取れる。
2018年にスタートした『PRADA MODE』は、これまでマイアミ、ロンドン、パリ、ソウル、東京、大阪など世界各都市で開催されてきた。参加アーティストには、ダミアン・ハーストや妹島和世、ジャ・ジャンクー、シアスター・ゲイツなど、現代アートや建築、映画界を代表する才能が名を連ねる。
その背景にあるのは、創造的な才能とともに新しい文化を生み出そうとする〈プラダ〉の長期的なビジョンだろう。
トレンドの発信源でありながら、同時に知性や芸術性を育む場でもある──。『PRADA MODE』は、現代ラグジュアリーが向かうべき未来を示す実験場ともいえる。ニューヨークの歴史的ホテルで行われた今回の開催は、そのことを改めて印象づける機会となった。
⚫︎プラダ クライアントサービス
TEL:0120-45-1913
































































