ヴィン・ディーゼル「ありがとう、ポール・ウォーカー」
2001年の映画『ワイルド・スピード』は、LAでストリートレースを取り仕切るチンピラ、ドミニク(ヴィン・ディーゼル)が強盗団を率いて家電などを盗んでいるという話だった。カーチェイスのパワフルさや熱気などは劇中にあったものの、あの時点で世界的大ヒットシリーズに成長すると想像した人は少なかったのではないだろうか? そんな“ワイスピ”のシリーズ第9作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』が、いよいよ8月6日(金)に公開される。
荒唐無稽なカーアクションとして“ワイスピ”が認知されたのは、ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーが揃って復帰した2009年『ワイルド・スピードMAX』からだろう。冒頭、ミシェル・ロドリゲス演じるレティがトレーラーからジャンプし、ドミニクが運転するクルマに飛び移る危険なアクションを披露。のちのシリーズで繰り返されるド派手なアクションからすると、多少地味に感じてしまうものの当時は大いに驚かされたもの。以降、観客の想像をはるかに超えるアクションで、世界を驚かせていく。
「第1作の予算は3000万ドルほどしかなかった。20年前の映像技術としては、当時は何もかもが物理的に(実写で)行われていたんだ」そう振り返るのは、ドミニク役のヴィン・ディーゼル。2003年『ワイルド・スピードX2』を除いて、シリーズ作にすべて出演してきた“ワイスピ”の顔だ。
続いてヴィンは、「時代が経つにつれ、映画製作会社はCGIにどんどん頼るようになっていった。そこで、むしろ実写が重んじられるような動きとなった。プリプロをきちんとやれば、実写にすることで作品に特別な魅力が生まれることは間違いない」と、語る。最新作ではスタジオ以外に、タイやジョージア、ロンドン、スコットランドなどで実際にロケ撮影を行っている。“ありえない”アクションに、現実味を持たせているのは、こうした工夫があるからだ。
最新作では、ドミニクとレティの2人が息子ブライアンと共に自給自足の生活を営み、幸せに暮らしているところからはじまる。だが、危険に満ちた世界へと引き戻され、特にドミニクは因縁のある弟ジェイコブと対峙することになる。
「本作に登場するような悪役に最適な俳優は一体誰だろう」ヴィンは、そう頭を抱えていたそう。「本作の悪役は非常に凶暴ながらも、トレット家を象徴するような人間でもあるからだ」そんなヴィンを喜ばせたのは、撮影がはじまる3カ月前だったという。「撮影のためにロンドンに向かう前に、ジョン・シナがジェイコブ役を熱望している、『出演できるなら夢のような出来事だ』とジョンが話している、という言葉を耳にしたんだ」以前からジョン・シナの大ファンで、仕事の仕方も尊敬していたとヴィンは語る。「偶然にも、その1週間ほど前に、子供たちと(ジョンが声優として参加した)2017年『フェルディナンド』を観ていた。家族ともどもジョン・シナの大ファンなんだ」
そう喜ぶ反面、シリーズのリーダーとして、心構えも伝えたという。「このシリーズの聖なる部分や意義などについて話し、ジョンがこのシリーズに参加したいと思うなら、すべてを懸けるつもりじゃなければダメだ、ということも伝えた。その日、私は誰にも相談せずにインスタグラムにひとつの投稿をしたんだ。ジョンと私が映っている動画とともに、『ありがとうパブロ(故ポール・ウォーカーの愛称)』の文字を投稿した。私の兄弟のパブロが、ジェイコブ役としてジョンを送りこんでくれたように感じたからだ」
そのジョン・シナ演じるジェイコブが、ドミニクと父親との関わり=心の古傷について思い出させるのが、最新作での見どころとなっている。「第1作で自身のクルマ“チャージャー”に対して抱く恐れの気持ちをブライアン・オコナー(故ポール・ウォーカー)に語る場面がある。そこで、詳しく説明はされないものの、ドミニクの過去に何かが潜んでいることを何となく感じることができる。ドミニクを変えることとなった何かが。20年も経って、語られるとは誰も思ってもみなかっただろう。それが、本作で語られるんだ」
そして最後に、本作についてヴィンは、「1年間も孤独に家のソファで映画を観ることになるなんて、想像できなかったね。そして、劇場での映画体験をこれほどまでに欲することになることも予想していなかった。劇場にいる全員がひとつの作品に没頭し、心をひとつにしてキャラクターを応援できるような特別な体験をね。それができるのが、『ワイルド・スピード』。みんなと共有できることがどれだけ特別なことかを知らしめてくれる特別な作品だよ」と期待をこめて語った。
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は8月6日(金)より全国ロードショー。