『アトミック・ブロンド』
製作年/2017年 製作・出演/シャーリーズ・セロン 原作/アントニー・ジョンソン、サム・ハート 出演/ジェームズ・マカボイ、ビル・スカルスガルド
シャーリーズの美しさと強さが際立つ!
いま最も輝いている、アクション女優は誰か? その質問に多くの映画ファンが答えるだろう。“シャーリーズ・セロン”と。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、ネットフリックスの『オールド・ガード』など、ワイルドでダイナミックな彼女の活躍は、アクション映画の主人公にジェンダーは関係ないと全身で証明するかのよう。シャーリーズの場合、そこに無敵の美しさが加わるわけだから、向かうところ敵ナシの状態である。そんな彼女の魅力が最大限に発揮されているのが、『アトミック・ブロンド』だ。
1989年のベルリンを舞台に、英国秘密情報部“MI6”のエージェント、ローレンが、極秘リストを取り戻すためのミッションに挑む。彼女に襲いかかるのは、敵か味方も判明不可能なスゴ腕の殺し屋たち。しかし男たちを上回るローレンの戦闘スキルが、次々と難局をクリアしていく。古ぼけたビルの内部で、あちこちで待ち構える敵を倒し続け、ビルの外に出てカーチェイスへとなだれこむ、ノーカットのシークエンスが圧巻(実際には高等テクの編集でつないでいる)。スタントマン出身で、キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』では共同監督を務めたデヴィッド・リーチ監督が、シャーリーズの才能をハイレベルで引き出した。
『ハンナ』
製作年/2011年 監督/ジョー・ライト 出演/シアーシャ・ローナン、エリック・バナ、トム・ホランダー
“美少女アクション”の最高峰!
『ニキータ』など女性アサシン(暗殺者)映画は、何年かに一度、強烈なインパクトの作品が誕生しているが、この『ハンナ』もそんな一作。主人公が16歳の少女という設定なのも、他のアサシンムービーと大きく印象が違う。元CIA工作員の父親にフィンランドの山奥で育てられたハンナは、父の訓練によって類い稀な戦闘能力を身につけていた。やがて父の元を離れた彼女は、ヨーロッパ各地を転々としながら、自分と父の命を狙うCIA捜査官によって、過酷な戦いを強いられていく。
ハンナの殺人マシンとしての活躍に、ひたすら息をのむ。泣きながら抱きついていった相手を、次の瞬間に絶命させるなど、本能的に肉体が反応し、これ以上ない攻撃を加える姿は、女性版『ジェイソン・ボーン』と言ってよさそう。ハンナは見るからに“少女”の雰囲気だし、演じるシアーシャ・ローナンも繊細で純真、気品のあるイメージの俳優。無敵の暗殺者とのギャップにも萌えまくる。あらゆる点でアクション映画のルールを超えながら、“美少女アクション”としての最高峰を極め、異様なカタルシスももたらす、隠れた名作だ。
『チャーリーズ・エンジェル』
製作年/2000年 製作・出演/ドリュー・バリモア 監督/マックG 出演/キャメロン・ディアス、ルーシー・リュー、ビル・マーレイ
3人の個性的なアクションが映える!
今やアクションヒーロー映画も女性が主人公なのは一般的。しかし時代をさかのぼれば、その数はレアだった。女性アクションの先駆けのひとつとなったのが、この『チャーリーズ・エンジェル』だ。1970年代後半からTVドラマとして日本でも大旋風を巻き起こし、つい最近の2019年も新キャストで映画版が作られたばかり。それぞれのバージョンに魅力があるが、ここでは2000年の初の映画化版を取り上げたい。キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューという3人のエンジェルの個性が際立ち、美女アクションの楽しさにあふれているから!
チャーリー・タウンゼント探偵社に雇われている、ナタリー、ディラン、アレックスの3人の“エンジェル”に新たな仕事が舞いこむ。テクノロジー会社の創設者が誘拐された事件だ。彼が開発した音声認識ソフトが悪用されたら、世界が危機に陥る……というわけでエンジェルたちの豪快な活躍が展開していく。3人を演じたキャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューは華麗なスタントをほぼすべて自分でこなし、決めのポーズも3人揃うことで爽快そのもの。女性であることを武器にしたセクシーな作戦や、軽い笑いが満載なのも、チャーリーズ・エンジェルならでは。ノリ重視で突き進む!
『レッド・スパロー』
製作年/2017年 原作/ジェイソン・マシューズ 監督/フランシス・ローレンス 出演/ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン
リアリティ満点のアクションに魅了される!
バレリーナとして鍛え上げられた肉体を、エージェントとしての暗躍に利用する。挑発的な設定の『レッド・スパロー』だが、アクション自体はそれほど多くない。基本的にヒロインの武器となるのは“ハニートラップ”。ターゲットとなる男に接近し、自慢の肉体と話術で巧みに誘惑。ここぞという瞬間に、相手から重要機密を聞き出し、あるいは“処罰”することもある。瞬発的な肉体アクションで魅せる一本だ。主演はジェニファー・ローレンス。長身でスレンダーなボディと、オスカー女優らしい持ち前の演技力を駆使し、観ているこちらも幻惑する。
ケガによってバレエの道をあきらめたロシアの少女、ドミニカは、重病の母を助けるという取引で、政府の極秘スパイ養成所へ送られる。そこで優秀な成績を残した彼女は、ロシア情報庁の下で、アメリカ人の二重スパイを探す任務を託され、CIA工作員と接触。しかしそこから予期せぬ運命が待ち受けていた……。手元にある道具を瞬時に武器に変えるなど、有能で冷徹なスパイとしての行動は、スーパーヒーロー映画とはまったく違う生々しさ。リアリティ満点の美女アクションを実感できるはずだ。
『バウンド』
製作年/1996年 監督・脚本/リリー・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー 出演/ジェニファー・ティリー、ジーナ・ガーション、ジョー・パントリアーノ
セクシーでバイオレンスな美女アクション!
異色中の異色といえる美女アクション映画が、この『バウンド』。5年の刑期を終えたコーキーが、マフィアの情婦ヴァイオレットと出会い、2人の女性が結託して大金を盗み出すストーリーが展開していく。頭脳派で機転も利くコーキー。“女性”であることを武器に、したたかな行動もとるヴァイオレット。アクション自体の見せ場はそれほど多くないのだが、彼女たちの計画は一瞬、一瞬がハラハラの連続。アクション映画を観ている感覚を味わえる。銃を手にしたこともなかった女性が、いざという場面でどうするか。必死な思いがみなぎる動きに思わず納得してしまうのだ。
最大の見どころは、コーキーとヴァイオレットに女性同士の愛が育まれること。監督はウォシャウスキー兄弟で、出世作となった『マトリックス』の前に、この作品を完成させ、世界に才能を知らしめた。ウォシャウスキー兄弟はその後、2人とも性別を変更し、“姉妹”となった。そんな監督の歴史も、女性同士の愛を貫いた『バウンド』と重ねると、さらに作品のテーマが強烈に伝わってくるかも。バイオレンス、そしてセクシーな面でノックアウトされ、時代を経ても古びない一作だ。
『トゥームレイダー』
製作年/2001年 監督/サイモン・ウェスト 共演/ジョン・ヴォイト、イアン・グレン、ダニエル・クレイグ
二丁拳銃がよく似合う!
世界中でヒットした人気ゲームを映画化。類まれな才能を持つ美しきトレジャーハンターのララ・クラフトは、ある日20年前に失踪した父の隠し部屋で謎の時計を発見する。さっそくララは時計の謎を調べはじめるが、ある組織の奇襲を受けて時計を奪われてしまう。実はその時計には、時空を支配できる秘宝のありかが隠されていた……。
冒頭のロボットとの闘いや、屋敷でロープを使ったアクションと本題に入る前からアクションがふんだんに展開する。二丁拳銃を使ってバンバン敵を倒す姿は、誰がみても惚れるほど魅力的。アンジーほど銃火器を構えたポーズがさまになる女優はいないはず。それでいて、ナイスバディなので、美しさも保たれているのだから、恐れ入る。
『キル・ビル』
製作年/2003年 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 出演/ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、ダリル・ハンナ
気持ちを高めるなら、コレ!
妊娠をきっかけに裏社会から足を洗った史上最強の殺し屋ザ・ブライド(ユマ・サーマン)は幸せな結婚式を待ち望む中、ボスだったビル(デビッド・キャラダイン)たちの襲撃を受ける。
結婚相手も身ごもっていた子供も殺され、自らも重傷を負った彼女は4年後、昏睡状態から目覚め、ビルへの復讐を開始することに……。
鬼才クエンティン・タランティーノが映画への愛を炸裂させながら、悲劇に見舞われたヒロインの壮絶な復讐劇を描写。その壮大さから『Vo.1』『Vo.2』の2作構成となり、リベンジ映画といえばコレ! といえるほどの人気を誇り続けている。
黄色のトラックスーツに身を包んだザ・ブライドが、あるときは日本刀で、またあるときはナイフでターゲットを1人1人仕留めていく展開が痛快。梶芽衣子の歌う“怨み節”が、エンディングでインパクトを放っているのもそそる。
『ライリー・ノース 復讐の女神』
製作年/2018年 監督/ピエール・モレル 出演/ジェニファー・ガーナー、ジョン・オーティス、ジョン・ギャラガー・Jr.
復讐には辛抱強さも必要!
平凡ながらも幸せに暮らす主婦ライリー・ノース。ある日、街で麻薬組織の襲撃に遭って夫と娘の命を奪われたライリーは、深い悲しみのどん底に。しかも、容疑者たちが無罪放免となったことで、彼女は絶望と共に姿を消す。それから5年、復讐のために舞い戻ってきたライリーは、警察やメディアを巻き込んだ一大決戦を仕掛けることに……。
『96時間』のピエール・モレルが監督を務め、『エイリアス』のジェニファー・ガーナーが主人公を熱演。ささやかな幸せを奪われた人間が復讐の鬼と化すという点では、女性版『狼の死刑宣告』ともいえるところ。
人知れず過酷なトレーニングを積み、強靭な肉体と精神で目的を果たしていくライリーの決意にスカッとさせられる。復讐達成に向けて計画的にじわじわと動く辛抱強さと、走り出したら誰も止められない大胆さのバランスも参考になる!?
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