【見逃し映画】壮絶すぎるバイオレンスアクション!
ネットフリックス『シャドー・オブ・ナイト』は、どうヤバい?
劇場用映画に引けを取らないクオリティにより、ネットフリックスのオリジナル作品はドラマを中心にして高い評価を得ているが、アクションも例外ではない。インドネシアで製作された『シャドー・オブ・ナイト』は配信開始以来、世界中のアクション・ファンをも唸らせているクライム・ストーリー。『ザ・レイド』のキャストが再結集し、血で血を洗う壮絶なバイオレンスを叩きつける。アジアン・アクションの底力を見せ付ける、この注目作をクローズアップする。
イトウ(ジョー・タスリム)は、銃を手にするものの、基本は素手で戦う。精肉屋での死闘は、アクション映画史に残るほど壮絶!
主人公のイトウは、巨大犯罪組織トライアッドの殺し屋軍団“6つの大海”の幹部を務める男。ある日、麻薬を横流しした村人たちを虐殺する任務を受けた彼は、村の幼い少女に手をかけることができず、組織の戦闘員たちを皆殺しにして彼女を助けてしまう。トライアッドがこれを見逃すはずもなく、追われる身となったイトウはレイナとともに逃亡し、信頼できる昔の悪仲間ファティに助けを求める。
送り込まれてくる刺客は、ナイフを自在に操る金髪美女に、ショートボブのワイヤー使い美女とキャラクターもユニーク!
トライアッドはカジノを仕切る幹部アリアンに、“6つの大海”を任せることをチラつかせて、イトウの抹殺を命じた。イトウやファティのかつての仲間であるアリアンは、このミッションに複雑な思いを抱く。一方、トライアッドの包囲網はイトウをジワジワと追い込み、刺客が次々と出現。痛手を負いつつ何度も死線を乗り超えたイトウは意を決して敵地へと乗り込み、アリアンと対峙することになる。
ナイフでの死闘が本作の醍醐味。思わず顔を背けたくなるほどのバイオレンスなので、ご注意を!
殺し屋と少女の逃避行は『レオン』にも通じるエッセンスだが、その旅路は壮絶。欧米のアクション映画であれば、子供キャラの前で主人公が射殺や撲殺で自衛するような場面はほとんどない。その点、本作は容赦がなく、血しぶきは上がるわ、死体はゴロゴロ転がるわのトラウマレベルで、この娘の将来が他人事ながら心配になってくる!? ともかく、それだけギリギリの世界に彼らは放り込まれているのであり、緊張感も並々ならぬものがある。
容赦がないといえば、バイオレンスもとにかく強烈。銃火器を使った戦いの場面もあるが、多くのキャラクターが蛮刀や大型ナイフを持っており、これによって文字どおりの死闘が繰り広げられる。切られ、刺され、貫かれる。血のりはもちろん、指や腕が切り落とされ、はらわたまではみ出る凄まじさ。骨が折れる音も生々しく、痛みがビリビリと伝わってくる。映画館で上映されたなら、間違いなくR付の指定になるだろう。残酷ではあるが、これこそが戦いのリアリティなのだ。
イコ・ウワイスのキレのある格闘アクションも、見どころのひとつ
しかし、何よりの見どころはバイオレンスを生む下地となった本格派の格闘アクションだ。東南アジアに伝わる武術“シラット”は『ザ・レイド』でも大々的に取り入れられていたが、本作ではジョー・タスリムとイコ・ウワイスという、同作のアクション俳優が再共演。後者は近年、『スカイライン/奪還』などのハリウッド映画にも出演しており、活躍が目覚ましいのは映画ファンにはご存知のとおり。このふたりがシラットの素養を活かして、スピード感あふれる立ち回りを披露する。とりわけ両雄が激突し、ボロボロになるまで戦い続けるクライマックスは目が離せない。また、女性の殺し屋同士のバトルもあるが、こちらもシラットが活かされ、思わず目を見張ってしまう。
イトウを助ける謎の美女。彼女も女刺客2人を相手に、激しい戦いを繰り広げる
監督のティモ・ジャヤントは『ヘッド・ショット』でもウワイスと組み、鮮烈なバイオレンスを刻んだ俊英。本作ではハードボイルドな世界観に徹しつつ、殺し屋たちの明日をも知れぬ運命を見据えた硬派なドラマを紡ぎ出す。タスリムが演じた孤高の主人公イトウや、ウワイス扮する野心家アリアンはもちろん、友情に厚くて頼もしいファティ、謎めいた女暗殺者、レズビアンである凶暴な女殺し屋コンビなど、魅力的なキャラクターも忘れ難い。裏社会を描いた映画は数知れず存在するが、これは人間の獣性をむき出しにした、壮絶としか言いようがない弱肉強食ワールド。これを見ずしてアクション映画を語るなかれ!
『シャドー・オブ・ナイト』
監督・脚本/ティモ・ジャヤント 出演/ジョー・タスリム、イコ・ウワイス 配信/ネットフリックス
2018年/インドネシア/視聴時間120分
ネットフリックスで配信中
Eriekn Juragan/Netflix