
10代から第一線で活躍し、20年以上、その地位をキープする。そして経験を積んだ先に、俳優としてハードルの高いチャレンジをこなす……。アマンダ・セイフライドのキャリアは、ハリウッドスターの中でも理想的と言えるだろう。そんなアマンダにとっても、最新作『アン・リー/はじまりの物語』は、大きなターニングポイントとなったのは間違いない。演じたのは“教祖”なのだから! 18世紀のイギリスに生まれ、キリストの生まれ変わりとの啓示を受けたアン・リーが、アメリカに渡ってユートピアを作る物語。彼女が教祖となったシェーカー教は、独自のライフスタイルやインテリアが現代も“シェーカー家具”として親しまれている。アメリカの歴史でも重要人物とされるアンを、アマンダはどんな思いで演じたのか。全米公開前の昨年末、インタビューを行った。
──まず出演を決める際の基本的なスタンスから聞かせてください。9歳と5歳の子供たちとの時間など、実生活との兼ね合いも関係するのですか?
「ケース・バイ・ケースですね。たしかに子供たちと一緒に過ごしていると、オファーされた仕事に対し、彼らとの時間を犠牲にするだけの価値があるか、何週間も悩むことがあります。以前のように『この役を演じたら楽しそう!』という気軽な動機で引き受けることは止めました。しっかりとした理由に、心が動かされるようになったんです。もちろん、たまには決め手がなくても断れない仕事はありますが……(笑)。ただし一度引き受けると決めたら、その仕事を楽しむようにしていますよ」
──では今回のアン・リーは、どんな理由で引き受けたのですか?
「モナ(監督のモナ・ファストヴォールド)から直接、依頼を受けて、『ここまで常識を超えた役は、一生に一度、オファーされるかどうかわからない』と確信できたんです。迷いは一切、ありませんでしたね。次の瞬間には『どうすればうまく演じられるか』と考え始めました。つまり明白な理由で即決したということです」
──「どう演じるか」という点で、撮影までの役作りやリハーサルについて聞かせてください。
「まず取り組んだのは、(英国の)マンチェスターのアクセントを身につけること。完璧に自然に感じられるまで、繰り返し練習するしかありませんでした。その後、音楽やダンスに向き合ったのです」

──たしかに本作はダンスシーンがポイントです。アン・リーが教祖となるシェーカー教は、祈りの際に歌って踊りますからね。ミュージカル映画と言ってもいい。あなたは過去に『マンマ・ミーア!』、『レ・ミゼラブル』でミュージカルを経験しています。
「あの2作での経験は今回も生きたと思います。ミュージカルの場合、他のジャンルと比べてルールを守る必要度が高いので、経験は武器になる。『マンマ・ミーア!』ではダンスが少なく、歌のリハーサルが中心でした。『レ・ミゼラブル』では歌に加えて、振付を覚えるプロセスもありました。両方に共通していたのは“生”で歌うこと。そうすることで演技も地に足が着いた表現になるんです。ミュージカル映画では、6週間とか長いリハーサル期間が設けられるのも、ありがたい」
──ただ本作のミュージカル表現は、『マンマ・ミーア!』や『レ・ミゼラブル』と異なりますよね。
「シェーカー教徒にとって、音楽は肉体の一部ですからね。彼らは恍惚状態で歌い、踊る。それが祈り方なんです。ですから私も、従来のミュージカル作品とは異なるアプローチを心がけました。アン・リーは、多くの悲しみを乗り越えた末に、祈りを通して自然に歌い始めるので、その心の軌跡を歌とダンスに乗せたわけです。歌詞とリズムが少しだけズレたりするのも、彼女の声を探求した結果、そうなった。魂からの歌声を出すことは、とても“音楽的”であり、それこそ私が愛するスタイルでした」
──では演技面のアプローチで難しかった点は?
「セリフや振付、歌詞を覚えることはもちろん大変でしたが、それ以上に難しかったのは、アン・リーの心理面ですね。自分では完全に理解できないほどの悲しみや、共感したくない経験もあり、こうした役は難易度が高いんです。その悲しみを尊重し、そこに命を吹き込むというアプローチに苦労しました。でも、これは俳優としての特権で、だからこそ挑む価値があるんです」
──そんなアン・リーの悲しみや経験が、映画を観る人にどのように突き刺さるでしょうか。
「シェーカー教徒の活動の根源に、アン・リーが子供を失った悲しみがあるんです。そこが映画を観る人の心を震わせるのではないかしら。その不条理さに、監督のモナが誠実に向き合ったから、他のどんな映画とも違う世界観が完成したのでしょう」
──たしかに過去に観たことのないタイプの映画になっています。
「ミュージカル映画として名作とされるのは、『雨に唄えば』や『サウンド・オブ・ミュージック』のようなクラシックなものばかり。現代では、そのような映画を作るのは、ほぼ不可能です。『アン・リー』は過去の傑作に匹敵する力を持ちながら、その語り口が斬新というところが素晴らしいのでは?」
──最近のインタビューで、かつてインポスター症候群(周囲から認められても、自分を過小評価する)だったが、今は違うと語っていました。本作のような役をこなし、自信もついたのでしょうか。
「俳優の場合、何かに敏感になったり、自分の仕事に疑問を思ったりすることは日常的です。一方で、仕事に対して何かを強く望むなら、余計なことを考えず、自分のエゴなんかを脇に置いて、前向きに取り組んだ方がいいのも事実。だって時間の無駄になりますから。こうやって映画で取材を受けられているのは、自分の才能が認められているからだし、何を求められているかも認識できてる。演じ終えた解放感も味わえます。そんな風に考えられるようになりましたね」
『アン・リー/はじまりの物語』
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
6月5日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国公開
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.





























































