Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2025.04.05


『ユージュアル・サスペクツ』が映画界に残したものとは?【前編】ツメアト映画〜エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.33

 

  

 


犯罪ミステリー映画というジャンルの現在において、叙述トリックの点で最も深いツメアト(影響力)を残した1本を挙げるなら、これを置いて他にないだろう。1995年のアメリカ映画『ユージュアル・サスペクツ』である。今年は公開30周年!

監督は当時29歳、新鋭時代のブライアン・シンガー(1965年生まれ)。本作はインディ映画の『パブリック・アクセス』(1993年/サンダンス映画祭グランプリ受賞)に続く長編第2作で、600万ドルという比較的低予算で撮られたもの。のちに『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)の監督を撮影途中で降板するも、クレジットには単独で刻まれるという際どい揉め事を起こしたりもするシンガーだが、その遥か以前の瑞々しい野心に満ちた頃の傑作である。そして脚本は『パブリック・アクセス』にも参加していたクリストファー・マッカリー(1968年生まれ)。こちらは当時26歳。最近は監督として『ミッション:インポッシブル』シリーズを続けて手掛けており(2015年の『ローグ・ネイション』以降)、トム・クルーズの舎弟みたいな雰囲気すら漂っているが、もともとは新世代の冴えた脚本家として登場した才人なのである。

とりわけ『ユージュアル・サスペクツ』の卓越はマッカリーのオリジナル脚本に負うところが多く、第68回アカデミー賞では見事に脚本賞を獲得。また同じ1995年、わずか一カ月違いで全米公開された『セブン』(監督/デヴィッド・フィンチャー)でも人を喰った異常な怪演を鮮烈に見せつけたケヴィン・スペイシーが助演男優賞を受賞した。そして2008年、アメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)が行ったアメリカ映画ジャンル別の史上ベストテン企画では、ミステリー部門の第10位にランクイン。2013年、全米脚本家組合(WGA)が発表したオールタイムベスト企画『101の最高の脚本』(101 Greatest Screenplays)では第35位に選出された。
 

  

 


いまでは完全にニュークラシックとして認定されている『ユージュアル・サスペクツ』だが、ただしリアルタイムでは必ずしも絶賛一色というわけではなかった。特にアンチ派として良く知られているのが、全米で最も著名かつ権威的な映画評論家のロジャー・エバート(1942年生~2013年没)だ。ピューリッツァー賞も受賞している大先生だが、彼はシカゴ・サンタイムズ紙のレビュー(1995年8月18日付)で4つ星満点中1.5つ星という激辛の点数をつけ、「あらすじがわからなくなってきた時、その日は映画を見すぎたからかもしれないと思った」「驚きは喜びではない」「私は操作ではなく、モチベーションに驚かされることを好む」などと戸惑いを率直に述べながら評した。確かに『ユージュアル・サスペクツ』はその斬新さゆえに、当時ポカ~ンとなった識者や観客も多かったのかもしれない。

ではこの映画の“新しさ”とは如何なるものだったか? まず代名詞のように語られるのは、物語すべてがひっくり返る衝撃のラスト――すなわち“どんでん返し”である。だが本質的には、そのどんでん返しを華麗に実現させる話法として、“信頼できない語り手”(Unreliable Narrator)と呼ばれる叙述トリックを完璧に使いこなしたことのほうが大きい。つまり映画の中の語り部、ストーリーテラーを担う劇中人物が、実は平気で嘘ばっかりしゃべるクソ野郎でした!ということが最後に判明する衝撃の作劇設計が取られている。
 

 


そもそも“信頼できない語り手”という用語はアメリカの文芸評論家、ウェイン・C・ブース(1921年生~2005年没)の1961年の著書『フィクションの修辞学』(水声社刊/訳:米本弘一、渡辺克昭、服部典之)で初めて使われたもの。その際は小説においての論旨だったが、むしろ映画、あるいは映像のほうが“信頼できない語り手”の仕掛けに向いているのではないか? ということを、『ユージュアル・サスペクツ』は回想形式を駆使して他のどの映画よりも鮮やかに示したと言える。

つまり我々は、具体的に差し出される映像というのはつい“事実の可視化”のように思いがちである。しかし例えば、誰かが話した内容をそのまま映像化したもの(証言の可視化)であれば、それは事実とは限らない。でもヴィジュアルで展開すると目に入った情報として受け取っちゃうんだよなあ……というのが『ユージュアル・サスペクツ』の詐術のポイントである。
後編に続く
 
  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
Photo by AFLO
〈FPM ミラノ〉があらゆるシーンに物語を作る。優雅な旅の傍らには美しく堅牢なトロリーを。
SPONSORED
2025.05.30

〈FPM ミラノ〉があらゆるシーンに物語を作る。
優雅な旅の傍らには美しく堅牢なトロリーを。

周囲とはひと味違ったラグジュアリーなトロリーを探している人に朗報。ミラノ発のラゲッジ&トラベルアクセサリーブランド〈FPM ミラノ〉がついに日本に本格上陸し、早くも大ブレイクの兆しだ。クラフトマンシップを感じる美しいデザインは、我々の旅に…

TAGS:   Urban Safari Fashion
〈レクサス〉で過ごすラグジュアリーな日常。走行性と居住性を兼ね備えた「LM」と「RZ」、ふたつのクルマ。
SPONSORED
2025.05.30

〈レクサス〉で過ごすラグジュアリーな日常。
走行性と居住性を兼ね備えた「LM」と「RZ」、ふたつのクルマ。

ファッションをひとつのブランドでコーディネートするのは、いまやごく普通のこと。であれば、複数台所有するクルマをひとつのブランドで統一するというのも、ライフスタイルを豊かにするのに役立ってくれそうだ。忙しい毎日を過ごすビジネスマンであれば、…

都会とターフを〈ヤーマン&ストゥービ〉で自在に往来。フェアウェイに向かう手元に機械式時計という大人の愉悦。
SPONSORED
2025.05.30

都会とターフを〈ヤーマン&ストゥービ〉で自在に往来。
フェアウェイに向かう手元に機械式時計という大人の愉悦。

機械式ゴルフウォッチという新しいカテゴリーを切り開いた、〈ヤーマン&ストゥービ〉。ゴルフにおける勝利の記憶を“記録”として刻み、タウンユースにおいてはクロノグラフにひけをとらない、世界特許を持つ機械式カウンター時計なので、都会とターフの両…

TAGS:   Urban Safari Watches
上品リッチなスニーカー〈デバイス 1〉から新作登場。オールブラックのスニーカーならオン・オフ問わずスタイリッシュに。
SPONSORED
2025.05.30

上品リッチなスニーカー〈デバイス 1〉から新作登場。
オールブラックのスニーカーならオン・オフ問わずスタイリッシュに。

“Affordable Chic -上質を着こなす日常-”をメインコンセプトに掲げる〈アウール〉からスピンアウトし、一昨年デビューしたスニーカーブランド〈デバイス 1〉。軽量かつ上品な佇まいは、ビジネスシーンはもちろんプライベートでも大い…

TAGS:   Urban Safari Fashion
まるでNYの街角に迷い込んだかのような一夜!〈ブローバ〉創業150周年を祝う記念イベントをシネスイッチ銀座で開催!
SPONSORED
2025.05.29

まるでNYの街角に迷い込んだかのような一夜!
〈ブローバ〉創業150周年を祝う記念イベントをシネスイッチ銀座で開催!

TAGS:   Watches
〈オニツカタイガー〉の“アルティ RS”シリーズでコンフォートな日々を!あらゆるシーンをシームレスに繋ぐラグスポシューズ“ティグトレイル”が誕生!
SPONSORED
2025.05.28

〈オニツカタイガー〉の“アルティ RS”シリーズでコンフォートな日々を!
あらゆるシーンをシームレスに繋ぐラグスポシューズ“ティグトレイル”が誕生!

TAGS:   Fashion
俳優・志尊 淳が〈グッチ〉の新作を着こなす!アイコニックなウエアを優雅に!
SPONSORED
2025.05.23

俳優・志尊 淳が〈グッチ〉の新作を着こなす!
アイコニックなウエアを優雅に!

イタリアを代表するラグジュアリーブランド、〈グッチ〉から夏の終わりを彩る新作コレクションが到着。クラシックながら、爽やかなムードが漂うプレフォールコレクションは、個性的にしてお洒落心をくすぐる、見どころ満載のラインナップ。そして今回、そん…

TAGS:   Fashion グッチ
〈サンローラン〉の個性的な1枚をまとう!夏旅で着たいセンシュアルなシャツ!
SPONSORED
2025.05.23

〈サンローラン〉の個性的な1枚をまとう!
夏旅で着たいセンシュアルなシャツ!

夏の大人の着こなしに、洗練された上質なシャツは欠かせない。そんなシャツを得意とするのが、フランスのラグジュアリーメゾン〈サンローラン〉。なかでも今シーズン目立つのが、夏のリゾートで映えるエレガントで個性的なアイテム。こんなシャツを身にまと…

俳優・磯村勇斗と〈ベル&ロス〉の最新作!手元に馴染む小ぶりBR-05!
SPONSORED
2025.05.23

俳優・磯村勇斗と〈ベル&ロス〉の最新作!
手元に馴染む小ぶりBR-05!

〈ベル&ロス〉のアーバンコレクション“BR-05”に、小ぶりな36㎜モデルが仲間入りを果たした。エレガントさと精悍さに加え、軽快さという新たな魅力をまとったラグスポウォッチ。その特筆すべき魅力を、俳優の磯村勇斗がいずれも輝きを放つふたつの…

TAGS:   Watches
大人の休日に似合う〈エルケクス〉のこだわりアイテム!夏のアメカジはカレッジスタイルで!
SPONSORED
2025.05.23

大人の休日に似合う〈エルケクス〉のこだわりアイテム!
夏のアメカジはカレッジスタイルで!

夏のアメカジはプリントTやポロシャツが頼り。昔から定番のアイテムだけど、仕様や素材にこだわってカレッジテイストを体現した〈エルケクス〉なら、どこか懐かしくも新鮮。さらに差をつけたいときは、重ね着テクが有効。これで学生とはひと味違う、“カレ…

TAGS:   Fashion
〈デンハム〉白澤社長が着こなす新作デニム!夏に着たい爽快テックデニムのセットアップ!
SPONSORED
2025.05.23

〈デンハム〉白澤社長が着こなす新作デニム!
夏に着たい爽快テックデニムのセットアップ!

夏にデニムは暑くてちょっと……と、敬遠してしまうひとも多いのでは!? そこで紹介したいのが、〈デンハム〉の“エアーテックデニム”。世界的デニム生地メーカー“カイハラデニム”開発のメッシュデニム生地を使用した、通気性抜群のデニムだ。「どんな…

TAGS:   Fashion Denim
着こなしを引き締める〈トム フォード アイウエア〉の新作!艶のあるサングラスが夏スタイルに効く!
SPONSORED
2025.05.23

着こなしを引き締める〈トム フォード アイウエア〉の新作!
艶のあるサングラスが夏スタイルに効く!

ミニマルな着こなしになりがちな夏こそ、小物は大事。特に顔まわりを演出するサングラスには妥協したくないはず。そこで、押さえたいのが〈トム フォード アイウエア〉の新作だ。計算しつくされた繊細でエレガントなフォルムが目元に色気を宿し、夏のシン…

TAGS:   Fashion
「それ、どこで買ったの?」と驚かれる!?この夏、人と差をつけるなら、〈ロンハーマン〉だけの特別なTシャツ!
SPONSORED
2025.05.19

「それ、どこで買ったの?」と驚かれる!?
この夏、人と差をつけるなら、〈ロンハーマン〉だけの特別なTシャツ!

日差しが強くなってきて、いよいよ待ちに待った夏が少しずつ肌で感じられるようになってきた。ということは、俄然欲しくなってくるのがTシャツだ。夏がやってきたら、恐らく毎日のように着ることになるアイテムといっても過言ではない。であれば、大人だっ…

TAGS:   Fashion
【期間限定】堅牢ラゲッジをお望みの人へ!〈エフピーエム ミラノ〉の リミテッドコンセプトストア開催!
SPONSORED
2025.05.14

【期間限定】堅牢ラゲッジをお望みの人へ!
〈エフピーエム ミラノ〉の リミテッドコンセプトストア開催!

まだ知らない人は、これを機会に触れたほうがいい。というのは〈エフピーエム ミラノ〉が、高級ラゲッジとして注目を浴びているから。日本に本格上陸したのがまさに今年。そして、タイミングがいいことに、伊勢丹新宿店をはじめ日本各地で期間限定のリミテ…

TAGS:   Fashion Stay&Travel

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ