双子の息子たちと地元バイロン・ベイでくつろぐクリス
『アベンジャーズ』のマイティ・ソー、『タイラー・レイク -命の奪還-』の無敵の傭兵、そして最新作『マッドマックス:フュリオサ』では世界の覇権を争うディメンタス将軍と、アクション大作での活躍が途切れないクリス・ヘムズワース。身長は188cm。トップアスリートのような肉体によって、俳優の本業以外でも注目される存在となった。
鍛え上げた胸筋が目立つようなTシャツの着こなしは、自身のアピールポイントを意識している証拠。公式の場でもスーツのインナーをTシャツにしたり、シャツでもボタンを開けたノーネクタイというスタイルを好む。クリスは、ワイルド系男子にとってファッションリーダーの地位も確立した。
『マイティ・ソー』1作目から3年後となる2014年には、ピープル誌の“最もセクシーな男性”に選出。ちなみにクリスの前年にこの栄誉に与ったのはミュージシャンのアダム・レヴィーンで、翌年は元サッカー選手のデヴィッド・ベッカムだった。2015年には時計ブランド、〈タグ・ホイヤー〉のアンバサダーに就任。2017年にはファッションブランド、〈ヒューゴ・ボス〉の男性用フレグランス“Boss Bottled”の広告モデルを務めた。また祖国のオーストラリアでは、フットボール・リーグのキャンペーンの顔となってCMなどに出演。オーストラリア政府観光局からグローバル大使に任命されたりしている。そして本業の栄誉として、2019年、ハリウッドの“ウォーク・オブ・フェーム”にその名が刻まれた。
2019年の長い休暇ではサーフィンに興じる姿がしばしば目撃された
これまでもオーストラリア出身のハリウッドスターは、メル・ギブソン、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ナオミ・ワッツ、ヒュー・ジャックマン、ケイト・ブランシェット、マーゴット・ロビーなど数多く誕生しているが、クリス・ヘムズワースもそのトップの一人となった。オーストラリアの映画の歴史を振り返ると、クリスには意外なトリビアもある。1986年、世界的に大ヒットしたオーストラリア映画『クロコダイル・ダンディー』。その主人公のモデルとなったロッド・アンセルは、クリスの叔母の夫である。牧畜を営み、猟師でもあったアンセルは、オーストラリア北部の僻地で行方不明となり、56日間、わずかな食料で生き延びたことがニュースになった。そんなアンセルのサバイバルが、『クロコダイル・ダンディー』のインスピレーションになったのだ(アンセルは1999年に死去)。
2018年には、その『クロコダイル・ダンディー』の新作コメディ『ダンディー:ザ・サン・オブ・ア・レジェンド・リターンズ・ホーム(伝説の男の息子が故郷に変える)』が製作されることになり、そこにクリスも出演。オリジナル版の主役のポール・ホーガンのほか、クリスの弟のリアム・ヘムズワース、ヒュー・ジャックマン、マーゴット・ロビー、ラッセル・クロウというオーストラリア出身のオールスターキャストが実現したものの、予告編が作られただけで、その後、本編が公開されず……という、まさかの“幻の一作”となった。
バイロン・ベイにあるクリスの自宅
いずれにしても、クリス・ヘムズワースの母国オーストラリアへの愛情は深いようで、自宅をロサンゼルスからオーストラリアの自然豊かな港町、バイロン・ベイに移したのも、その母国愛の表れだろう。この引っ越しが、パパラッチを避けるという家族のためであったように、クリスには強い家族愛を示すエピソードも多い。2019年には子供たちとの時間を作るために、長い休暇をとると宣言。それまで全速力で駆け抜けてきた俳優業をセーブする方向に舵を切った。子供たちの学校で給食の手伝いをするなど、大スターとは思えない“ほっこり”な行動もたびたび報じられる。また、ソー役でブレイクする直前、ようやく出演が決まった『キャビン』では、そのギャラで父親の家のローンを完済。亡くなったいとこの息子を引き取り、バイロン・ベイの自宅で一緒に生活するなど、家族や親戚に限りない愛情を注ぐのがクリスのポリシーのようだ。
2022年には、そんなクリスにショッキングなニュースが流れる。最先端の科学的研究に基づき、健康で長生きするというミッションに彼が実験台として挑む、ナショナルジオグラフィックのドキュメンタリーシリーズ『リミットレス with クリス・ヘムズワース』で、アルツハイマー発症のリスクが高い遺伝子をもつという検査結果が出てしまった。実際にクリスの父親には初期の症状があり、祖父も生前に発症していたという。『マッドマックス:フュリオサ』など進行中のプロジェクトが落ち着いたら、俳優業を休むことになる……という悲報にファンは衝撃。しかしその後、長めの休暇は検査に関係なくすでに決まっていたことで、引退にまで独り歩きしてしまった噂は本人が否定した。ファンはこれからもクリスの活躍を観続けられそうだ。
2024年5月23日、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムに名を刻み、ハリウッド殿堂入りを果たした。式典にはロバート・ダウニー・Jr.も出席し、スピーチを行った
そして次回作は、あのハルク・ホーガンの伝記映画。プロレス界のレジェンドであるホーガンが、自分を演じる俳優としてクリスを指名した。監督は『ジョーカー』のトッド・フィリップスなので、早くも名作の予感が漂う。プロレスラーとしてのトレーニングや肉体改造はもちろん、演技の面でも新境地になりそうで。クリスは賞レースにも絡むのではないか。そのほか、声を務めた3DCGアニメーションの『トランスフォーマー/ONE』が2024年内に日本で公開される(全米は9月)。
マイティ・ソーという当たり役が一段落し、クリス・ヘムズワースの俳優人生は新たなステージに突入した。現在は愛する家族との時間を重視し、出演作を絞っているだけに、選んだ役には彼の“自信”が溢れているはず。やがて子供たちが成長した時に、俳優クリス・ヘムズワースは、さらに別次元へと変貌していくに違いない。(終わり)
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