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CULTURE カルチャー

2024.06.01

『マッドマックス:フュリオサ』で暴君役を好演!
クリス・ヘムズワースのこれまでを振り返る(1)


Chris Hemsworth[クリス・ヘムズワース]

現在(2024年)のハリウッドで、最もアクション映画のヒーローが似合うスターは誰か? そんな質問に対し、回答の上位にランクされるのは、この人、クリス・ヘムズワースだろう。マーベルのソー役などで有名だが、最新作『マッドマックス:フュリオサ』でも、荒廃した世界の支配を巡り、改造バイクで絶叫する暴君のディメンタス将軍を、豪快に演じている。これ以上のハマリ役もいないほど、圧倒的なインパクトを放っているのだ。オーストラリア生まれのクリスにとって、“マッドマックス”の世界の一員になれたのは、ひとつの夢の実現に違いない。

クリス・ヘムズワースは現在、ちょうど40歳。1983年、オーストラリアのメルボルンに生まれた。男ばかりの3人兄弟の真ん中、次男である。2002年、19歳の時にオーストラリアのテレビシリーズ『グィネヴィア・ジョーンズ』で俳優デビュー。アーサー王伝説をヒントに、現代の高校生に生まれ変わったグィネヴィア姫が主人公のこのドラマで、クリスはアーサー王役を演じた。同シリーズは2シーズンで終わったが、2004年に人気シリーズ『ホーム・アンド・アウェイ』に水泳選手の役で出演。かつてナオミ・ワッツやヒース・レジャーを輩出し、スターへの登竜門と言われるこの作品に2007年まで出演したクリスは、同時期にはダンスコンテスト番組『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』でも勝ち抜くなど、オーストラリアで話題の若手スターになった彼が、ハリウッドに進出するのに時間はかからなかった。
 

  

 

2005年に行われた『ウェディング・クラッシャーズ』のプレミア試写にイザベラ・ルーカスとともに参加

ハリウッドでの活躍を本気で目指したクリスが、オーストラリアからバックパックひとつで渡米したという、嘘のような逸話も残っているが、早くも成功の足がかりをつかむ。2009年、クリスはJ・J・エイブラムス監督の『スター・トレック』で、主人公カークの父親、ジョージ役に抜擢されたのだ。20代のクリスが父親役ということは、カークの生まれる前などの回想シーンで登場。つまり出番はそれほど多くなかった。しかし自堕落な行動もとる宇宙艦隊候補生の若きカークに対し、かつて多くの人命を救うために殉職した宇宙艦隊少佐のジョージは英雄的存在。息子の未来を後押しする重要な役まわりであり、それをクリスはカリスマ感たっぷりに演じ切った。俳優としての実力は未知数ながら、映画を観た多くの人がクリス・ヘムズワースの潜在的才能を認めたのは確かである。
 

  

 

2011年、カリフォルニア州のニューポートビーチへ妻エルサ・パタキーと波乗りに向かうクリス

当時、日本では“草食男子”という言葉が話題になっていた。2009年の新語・流行語大賞のトップテンに選出されるなど、草食系がもてはやさらた状況で、見た目が明らかに“肉食系”クリス・ヘムズワースは、むしろ新鮮な魅力としてアピールした。プライベートでは、『ホーム・アンド・アウェイ』で共演したイザベル・ルーカスと3年間交際した後、同じマネージメント事務所に所属する7歳上のスペイン人女優、エルサ・パタキーと意気投合。1年弱の交際期間を経て、『スター・トレック』直後の2010年に結婚する。恋愛に対して肉食系の積極さを発揮しつつ、愛する相手を見つけてからは“ファミリー・マン”として落ち着き、現在も幸せな家庭生活を送っている。2人の間には2012年に第一子、2014年に双子の男児が誕生。2015年には静かな環境を求めてオーストラリアのバイロン・ベイに自宅をかまえた。
 

  

 

『マイティ・ソー』(2011年)

『スター・トレック』で世界的な注目が集まったクリスだが、じつはその後のキャリアは少し行き詰まる。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のガンッビット役や『G.I.ジョー』の主人公デューク役などのオーディションを受けるも、ことごとく落ちる時期が続いたのだ。ようやくホラー映画『キャビン』に出演が決まり、満を持して挑んだのが『マイティ・ソー』のオーディションだった。北欧伝説の英雄で、神話的なヒーローでもあるソーのキャラクターは、オーストラリアでのデビュー作のアーサー王も思い出させる。クリスは“運命”も感じたはずだが、残念ながら早い段階で落ちてしまう。そして皮肉なことに、ソー役のオーディションの最終に残り、ほぼ役を確定させたのが、リアム・ヘムズワース。つまりクリスの弟だった。ヘムズワースの三兄弟は長男のルークを筆頭に、全員が俳優。三男のリアムは2010年にニコラス・スパークス原作の映画『ラスト・ソング』で、マイリー・サイラスの相手役を務めるなど、キャリアが上り調子だった(同作の共演でリアムとマイリーは婚約)。しかし最後の最後に逆転劇が起こる。リアムがソー役には若過ぎるという理由で、キャスティングは白紙に戻ってしまう。改めて行われたオーディションに、クリスはリアムからアドバイスも受けて再度チャレンジ。弟の無念も晴らすべく怒りの感情がたぎったことが功を奏したかどうかは別にして、リアムの兄ということでイメージが近かったこともあり、見事にソー役を射止めた。そしてここから、クリス・ヘムズワースの快進撃がはじまるのである。

クリス・ヘムズワースのこれまでを振り返る(2)に続く

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文=斉藤博昭  text:Hiroaki Saito
Photo by AFLO
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