意外すぎる結末に思わずのけぞる!
ビターなあと味が残る絶望映画5選!
思ってもみないダークなラストに、鑑賞後に呆然としてしまう衝撃作を5本セレクト。“ネタバレ”解説付きなので、結末を知りたくない人は読まないようにしてください!
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
製作年/2000年 監督/ラース・フォン・トリアー 出演/ビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴ
過酷な現実と反比例して、どこまでも華麗にのびやかに!
カンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた傑作ミュージカル・ドラマ。鬼才トリアーと歌姫ビョークが、いわゆるハリウッド的な華美さを排してリアリズムに徹した唯一無二の作品だ。チェコからアメリカへやってきた移民のセルマは、遺伝性の重篤な目の病を患っている。徐々に視力は失われ、近い将来、最愛の息子も同じ病を発症するであろう。「せめてこの子だけでも治ってほしい」。そう切望し、高額の手術費用をコツコツ貯めるのだが、ある日、隣人のビルは自分の借金返済のためにその金を盗む。そして二人が揉み合った末、セルマはビルを殺してしまい、死刑が求刑されることにーーー。
【ここからネタバレ!】
本作では、視力を失いゆくセルマがささやかな音のリズムに意識を委ねることで、突如、心が沸き立つようなミュージカルがはじまる。だが現実はあまりに過酷で、死刑台までの107歩、彼女は崩れ落ちそうになりながらも優雅にステップを踏み、伸びやかな声で歌い上げる。トリアーとビョークが幾度も激しく衝突しあいながら辿り着いたフィナーレは、悲しみとやるせなさが渦巻き、嗚咽しそうなほど観る者の胸を締め付けてやまない。
『ミスト』
製作年/2007年 監督/フランク・ダラボン 出演/トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン
この深い絶望の霧に、果てはあるのか!?
ホラーの巨匠スティーヴン・キングによる中編小説を『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』、さらには「ウォーキング・デッド」のクリエイターとして知られるダラボン監督が映画化。予想もしない日常は、ある朝、突然はじまった。あたりには霧が立ち込めて一寸先も見通せない。そんな中、スーパーマーケットで足止めされた買い物客たちは、霧から伸びる不気味な触手を目撃し、脱出を試みた者も次々と命を落とす。やがてモンスターが次々と襲いくる様に人々はパニックを起こしはじめ……。
【ここからネタバレ!】
恐怖に怯える群衆の中で狂信的な言動が生まれたり、それによって殺人が起こるのを目の当たりにし、幼い息子を抱えた主人公デイヴィッドは仲間と共にスーパーを出る。しかし外にも果てしなく霧がはびこり、同じような絶望が広がっていた。拳銃には4発の銃弾。彼らは5人。「パパ、約束して。僕をあのモンスターに殺させないで」との言葉を守り、デイヴィッドは息子を含む仲間たちの命を断つ。が、その直後、軍の救援部隊が横切り、霧も徐々に晴れていくーーー原作にはない映画独自の救いなき”幕切れ”にキングも大絶賛を寄せたとか。
『セブン』
製作年/1995年 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン
映画史上、類を見ない衝撃の結末に刮目せよ!
初監督作『エイリアン3』(92)で不完全な結果を残したフィンチャー監督が「絶対に妥協しない」と心に誓って挑んだ、90年代最恐のサスペンス・スリラー。引退を間近に控えたベテラン刑事サマセットと新米刑事ミルズが直面するのは、キリスト教の7つの大罪と関連する連続殺人事件だ。暴食、強欲、怠惰、色欲、傲慢……犯行の手口はどれも吐き気を催すほどの残忍さで、謎はますます深まるばかり。だがある日、突如として「私が犯人だ」と名乗る人物が血塗れの格好で警察署に現れる。
【ここからネタバレ!】
終盤ではこれまでの雨がピタリとやみ、今度は雲ひとつない晴天がやってくる。無名時代のケビン・スペイシー演じる犯人は、二人を荒野へと案内し、そこに行けばすべてがわかるという。約束の時間、宅配業者が運んできたのは小脇に抱えられるほどの箱。その中身を観客に見せることなく、ミルズの妻の死をめぐる映画史上あまりに恐ろしい結末が突きつけられる。結果、嫉妬に次ぐ最後の大罪、憤怒がミルズ自身の手によって犯人に下され、7つの連続殺人は犯人の思うがままに全うされ、幕を下ろすのである。
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』
製作年/2017年 監督/ヨルゴス・ランティモス 出演/コリン・ファレル、ニコール・キッドマン
ギリシア悲劇さながらの、不条理で残酷な家族の運命とは?
ギリシア出身の鬼才が放つ、奇妙で理不尽で、ゾッとする恐怖すら覚える怪作だ。物語は心臓外科医のスティーヴンと少年マーティンとの交流から幕を開ける。親子でもないのに、頻繁に顔を合わせる二人。やがてスティーヴンは彼を自宅へ招き、妻や子供らにも紹介するのだが、しかし異変はここから。ある日、末っ子ボブの足が動かなくなり、娘キムも同じ症状に見舞われる。苦悩するスティーヴンにマーティンは「彼らはやがて目から血を流して死ぬ」と言い放ち・・・
【ここからネタバレ!】
実は、スティーヴンにはかつて飲酒して手術の執刀を行い、マーティンの父を死なせた過去があった。マーティンは「バランス」という言葉を口にする。すなわち、父が死んだのと同じく、あなたも家族の一人を殺して埋め合わせをせよ、と言うのである。さもなくば家族みんなが死に至るとーーー。神への生贄をめぐるギリシア悲劇がベースとなっている本作。あらゆる謎がつまびらかにされぬばかりか、最後の「決断」も頭を抱えるほど陰鬱さたっぷりだが、得体の知れぬ緊張感も相まって結末までじっと見入ってしまう作品である。
『隣人は静かに笑う』
製作年/1998年 監督/マーク・ぺリントン 出演/ジェフ・ブリッジズ、ティム・ロビンス
すべてが繋がる瞬間、「あっ!」と声を上げずにいられない!
“隣人”という伝統的なモチーフを巧妙に生かし、現代的なサスペンスを紡ぎ上げた秀作だ。主人公のマイケルは“テロリズム”について研究する大学教授。2年前にFBI職員の妻を亡くしたものの、今では新たな恋人に支えられ、一人息子と共に傷心を回復させつつあった。そんなある日、怪我をした少年を助けたのが縁で、引っ越してきたばかりの隣人家族との付き合いが始まる。温厚な夫オリバー、笑顔の絶えない妻シェリルをはじめ、まるで絵に描いたような善良な家族に見えたのだがーーー。
【ここからネタバレ!】
調べてみると、隣人オリバーの素顔が爆弾犯らしいことが判明する。しかしマイケルが調査を進める中、恋人は不可解な死を遂げ、さらに息子も人質に。やがて息子を乗せた車を見かけた彼は、猛スピードで追いかけ、乗り込んだのはFBIのオフィスビル。その瞬間、マイケルのクルマに仕掛けられた爆弾が炸裂し、あたりは瓦礫と化す。すべてオリバーが仕掛けた罠だったのだ。メディアでは「妻の死を恨んだマイケルの犯行」と片付けられ……。後味はサイアクだが、脚本の切れ味と驚きの濃さは最高だ。
photo by AFLO