『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』の撮影風景
『アバター』の第1作以降の13年で、ハリウッドのエンターテインメント界の覇権を獲ったのはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)だが、しかしコロナ禍以降、ディズニープラスでの配信メインになってから、2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(これが全世界の歴代興収No.2)に至る盛り上がりのような派手な動きは見られなくなった。もっとも劇場興収の数字で人気のパワーを計るのも、CD売り上げやテレビ視聴率と同じく、だんだん時代遅れな尺度になっていくのかもしれない。
だが一方、サブスクリプションの動画配信サービス業界も大手の競合がひしめき合い、早くも最初の曲がり角に来ているようだ。新規コンテンツにしろ「こんなに誰も観切れねえよ!」というほど過剰供給のきらいもあるが、そんな2022年配信ドラマシリーズの中で、とりわけ映画ファンが狂喜した傑作がパラマウント+配信の『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』(全10話/日本ではU-NEXTで配信中)だ。これは映画史上に燦然と輝く、フランシス・フォード・コッポラ監督の1972年の名作『ゴッドファーザー』の誕生前夜を描いた映画業界の内幕もの。やはりまたある種の“現実”の映画化なのだが、映画ファンが好む“現実”に特化したエピソードとして、“映画ネタ”の映画/ドラマがやたら増えてきたのも最近の傾向である。
『ベルファスト』
ネットフリックス『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
“映画ネタ”の増加と共に、もうひとつ目立つのが著名な映画監督の自伝(的)映画。ケネス・ブラナーの『ベルファスト』やポール・トーマス・アンダーソンの『リコリス・ピザ』、さらにネットフリックスで2022年12月16日から独占配信されているアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『バルド、偽りの記録と一握りの真実』など――。そのカテゴリーに属する(あるいは準ずる)大物のタイトルが相次ぐが、ついにはあのスティーヴン・スピルバーグ監督も自伝ネタの最新作『フェイブルマンズ』(2023年3月3日公開予定)を撮ってしまった(ちなみに80歳のハリソン・フォードが主演することで話題の『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023年6月30日公開予定)は、スピルバーグは製作のみで、監督はジェームズ・マンゴールドが担当)。
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の撮影風景
なんだか、みんな“総まとめ”に入っちゃってるの!?というムード。2022年の映画期トピックで言うと、9月13日、フランス(ただしスイス在住)の鬼才映画監督、ジャン=リュック・ゴダールが自殺幇助という形で91歳の生涯を閉じた件も極めて重要。世界の名だたる映画人たちが、揃いも揃って自らのキャリアに“ケリをつける”態度になっているのが、映画ファンとして不安でもあり。
しかし、とりあえず2023年は、トム・クルーズ先生の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』がやってくる(2023年7月14日公開予定)。そして『PART TWO』も2024年に控えているのだ。先述の『アバター』シリーズも5部作が予定されている。こういったベテランの頑張りに、未知のフレッシュな若手や新人がいかに乱入してくるか。映画界の輝かしい未来に引き続き期待しよう!(前編はこちら)
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